重症筋無力症の病態解明と診断法および治療法の開発

文献情報

文献番号
200935017A
報告書区分
総括
研究課題名
重症筋無力症の病態解明と診断法および治療法の開発
課題番号
H19-こころ・一般-018
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
重本 和宏(地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
17,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高齢社会を背景に重症筋無力症(MG)の患者数が18年前の2.5倍(推定15,100人)に増加している. 当該研究は、難治性のMuSK抗体陽性MGと原因不明MGの発症メカニズム解明、診断法と治療法の開発を行い,医療技術の向上と特定疾患の医療費削減を目標としている. 患者を対象とした研究は倫理的に制約されるため、疾患モデル動物を使い、その病態メカニズムを明らかにして、新しい診断法と治療法の開発に使い医療へ貢献することを目的としている. そこで当該年度では、補体欠損マウスに対してMuSK-MGを高頻度に発症させて、治療法の開発を行った.
研究方法
(1)補体欠損マウスに、精製したリコンビナント蛋白を、補体欠損マウス一匹あたり20 μgをアジュバントと一緒に2週間おきに免疫して、体重変化を経時的に記録することで発症経過をモニターした. 対照群としてPBSとアジュバントを同様に免系して実験を行った. 動物実験計画は実験施設(東京都健康長寿医療センター研究所)で承認された方法に従って行った. (2)正常群と発症したマウスの、筋力測定、筋電図変化、筋組織のHE染色、神経筋シナプスを免疫染色して蛍光顕微鏡および共焦点顕微鏡で観察し、さらに走査型電子顕微鏡と透過型電子顕微鏡でも試料を作成して観察した. (3)発症したマウスの抗MuSK抗体の機能解析を行った. (4) アセチルコリンエステラーゼ阻害薬(AChE阻害薬)に対する過敏性とその機序を解析した. (5)ジアミノピリジン(DAP)を投与して有効性を検討した.
結果と考察
MuSK抗体MGはAChR抗体MGに比べ重症例が多く症状も特徴的であるが、MuSK MG患者の病態を反映する疾患マウスの創出を行うことに成功した. MuSK抗体MGが、補体が関与なしに発症するかどうか謎であったが、 補体欠損マウスを使ってMuSK抗体MGを100%の確率でMuSK蛋白を免疫して1ヶ月で発症させることができる. 発症のメカニズムおよびAChE阻害薬に対する過敏性のメカニズムを明らかにした.さらにDAPが治療薬として有効である可能性を示した.
結論
MuSK MG患者の病態を再現する疾患モデルマウスを創出するに成功した. 病態メカニズムに基づく治療法の開発を遂行することができた.

公開日・更新日

公開日
2010-06-15
更新日
-

文献情報

文献番号
200935017B
報告書区分
総合
研究課題名
重症筋無力症の病態解明と診断法および治療法の開発
課題番号
H19-こころ・一般-018
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
重本 和宏(地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 太田 光熈(神戸薬科大学 病態生化学 )
  • 小西 哲郎(独立行政法人 国立病院機構宇多野病院 神経内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
(1)独自に開発したMuSK抗体測定法を使い,我が国のMuSK-MG患者の臨床病態像を検討する.(2)新しい疾患動物モデルを開発してMuSK抗体-MGの病態を明らかにする.(3)疾患動物モデルを使い治療法の開発を行う.(4)MuSKおよびAChR抗体が検出できないMGの新しい診断法の開発.
研究方法
(1) SNMG患者59例に対してMuSK抗体の測定を行った. (2)補体欠損マウスに、精製したリコンビナント蛋白を、補体欠損マウスにアジュバントと一緒に2週間おきに免疫して、筋力、神経筋シナプスの病理学的解析、MuSK抗体の機能解析を行った. (3)アセチルコリンエステラーゼ阻害薬(AChE阻害薬)に対する過敏性とその機序を解析した. ジアミノピリジン(DAP)を投与して有効性を検討した.(4)通常の臨床検査法では検出できないが、細胞膜のAChR凝集には反応する抗AChR抗体を鋭敏な蛍光抗体染色で検出できるように、全てのAChRサブユニットと足場蛋白であるrapsyn発現する細胞株を作成した. MuSKを発現する細胞株の確立を行った.自己抗体が存在するかどうか解析するためにLRP4の分泌蛋白を作成した.
結果と考察
(1) 独自に開発したMuSK抗体測定法を用いて我が国の現状を明らかにすることができた.(2)MuSK MG患者を忠実に反映するマウス疾患モデルの作成に成功しそれを使って発症メカニズムを明らかにした. (3) AChE阻害薬に対する過敏性のメカニズムを明らかにし、DAPが治療薬として有効である可能性を示した.(4)これまで検出できなかったAChR, MuSK抗体とLrp4抗体の測定するアッセイ系を確立した.
結論
MuSK MGの臨床像と解決目標(問題点)を明らかにした.MuSK抗体MG患者の病態を忠実に示す疾患動物モデルの開発して発症メカニズムの解明、治療薬の開発を進めることに成功した. また原因不明のMGに対する新しい診断法を開発した.

公開日・更新日

公開日
2010-06-15
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200935017C

成果

専門的・学術的観点からの成果
欧米やアジアのデーターとの比較研究に必要な、我が国のMuSK-MG患者の臨床像を明らかにした.100%の頻度でMuSK-MGを発症させることができる画期的な疾患モデル動物の開発を達成した.どうして100%で発症させることができるのか、この機序を明らかにすることで疾患の原因解明が期待される. MuSK-MGにおけるAChE阻害剤の過敏性のメカニズムを明らかにし有効な薬剤を発見した.
臨床的観点からの成果
MuSK抗体重症筋無力症は筋萎縮に至る重症例が多く従来の治療法に対して難治性である等の臨床像を明らかにした.調査結果を論文と学会、医学専門雑誌を通して臨床現場へ提供し成果を普及させ我が国の医療技術の向上に貢献している.またMuSK抗体測定法を開発して国内外の病院から依頼を受け迅速に結果を医療現場へ無償で提供している.原因不明であった重症筋無力症患者の確定・除外診断や治療効果判定に使われ国民医療の水準向上に対して貢献している.
ガイドライン等の開発
従来のMGの治療薬であるAChE阻害剤が抗MuSK抗体MGではむしろ悪化するケースがあることを、患者研究と基礎研究から明らかにした. 学会と専門誌で、治療方針に対する提言を行っている.
その他行政的観点からの成果
MuSK抗体測定法を開発して大学病院などから依頼を受け迅速に結果を医療現場へ無償で提供している.これまで原因不明であった重症筋無力症患者の確定・除外診断や治療効果判定に使われ国民医療の水準向上に対して貢献している. 
その他のインパクト
わが国のMuSK抗体重症筋無力症に関する臨床研究の成果は、国際的な比較指標データーとして専門誌で引用されている.

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
5件
その他論文(和文)
9件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
7件
一件は招待講演 (第48回日本神経学会総会のシンポジウム)
学会発表(国際学会等)
5件
3件は招待講演(シンポジウム)
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件
第98回老年学公開講座 平成20年9月5日 東京都北区 きたとぴあ さくらホール 参加者1520人 第102回老年学公開講座 平成21年1月23日東京都調布市グリーンホール 参加者752人

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Shigemoto K
Myasthenia gravis induced by autoantibodies against MuSK.
Acta Myologica , 26 , 185-191  (2007)
原著論文2
Shigemoto, K., Kubo, S., Chen, J. et al.
Myasthenia Myasthenia gravis experimentally induced with muscle-specific kinase.
Annals of New York Academy of Science , 1132 , 93-98  (2008)
原著論文3
Shigemoto, K. Kubo,S. Mori.S. et al.
Muscle weakness and neuromuscular junctions in aging and disease.
Geriatrics & Gerontology International , 10 (1) , 1-11  (2020)

公開日・更新日

公開日
2013-05-30
更新日
-