ヒト・アルツハイマー病に対するDNAワクチン療法の確立を目指して

文献情報

文献番号
200935016A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒト・アルツハイマー病に対するDNAワクチン療法の確立を目指して
課題番号
H19-こころ・一般-017
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
松本 陽((財)東京都医学研究機構 東京都神経科学総合研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 大倉良夫((財)東京都医学研究機構 東京都神経科学総合研究所 )
  • 蕨陽子(柴崎陽子)((財)東京都医学研究機構 東京都神経科学総合研究所 )
  • 神山邦子((財)東京都医学研究機構 東京都神経科学総合研究所 )
  • 加藤信介(鳥取大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
25,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は有効で安全性の高いアルツハイマー病治療薬を開発することにある。さらに、長期間投与する必要性があるので安価であることが望まれる。我々は非ウイルス型AベータDNAワクチンが、これらの条件を満たして最適であると考え、研究を開始した。平成18年、非ウイルス型AベータDNAワクチンがアルツハイマー病モデルマウスにおけるAベータ沈着を著明に削減し、脳炎などの副作用を示さないことを報告した。さらに、安全でAベータ削減効果の高いDNAワクチンの開発し、臨床試験を開始することを目指している。
研究方法
プラスミドベクターにAベータ1-42を組み込み、Aベータペプチドが細胞外に分泌されるワクチンを開発した。AベータDNAワクチンをアルツハイマー病のモデルマウスに3-8ヶ月間投与し脳アミロイドの沈着の変化を検討した。ワクチンは、最初の6回まで週1回、7回目以後は2週間に1度の間隔で100 ugづつ筋注した。治療効果の判定は以下のように行った。治療群、対照群の大脳に矢状断を加え固定後、パラフィン切片を作製した。抗Aベータ抗体を用いたえ免疫染色を行い、大脳皮質と海馬においてAベータ沈着を画像解析により定量化した。
結果と考察
新規開発ワクチン、YM3711は既存ワクチンに比し、Aベータ産生能は5-6倍、細胞外放出能は3-4倍上昇していた。YM3711投与により誘導される抗Aベータ抗体価は既存ワクチンより有意に高く、また抗体誘導の弱いモデルマウスでも野生型マウスと同程度の力価を示した。Aベータ亜種であるAベータ3(pE)-42やアミロイド原性脳内蛋白であるABri、ADanに対する抗体価でもYM3711投与群が有意に高値を示した。
結論
YM3711ワクチンはAベータ亜種やアミロイド原性脳蛋白など神経毒性を示す物質に幅広く対応することを目的として設計されたが、充分その作用を有しており、非臨床・臨床試験に耐えうると判断した。

公開日・更新日

公開日
2010-06-15
更新日
-

文献情報

文献番号
200935016B
報告書区分
総合
研究課題名
ヒト・アルツハイマー病に対するDNAワクチン療法の確立を目指して
課題番号
H19-こころ・一般-017
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
松本 陽((財)東京都医学研究機構 東京都神経科学総合研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 大倉良夫((財)東京都医学研究機構 東京都神経科学総合研究所 )
  • 蕨陽子(柴崎陽子)((財)東京都医学研究機構 東京都神経科学総合研究所 )
  • 神山邦子((財)東京都医学研究機構 東京都神経科学総合研究所 )
  • 加藤信介(鳥取大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は有効で安全性の高いアルツハイマー病治療薬を開発することにある。さらに、長期間投与する必要性があるので安価であることが望まれる。我々は非ウイルス型AベータDNAワクチンが、これらの条件を満たして最適であると考え、研究を開始した。平成18年、非ウイルス型AベータDNAワクチンがアルツハイマー病モデルマウスにおけるAベータ沈着を著明に削減し、脳炎などの副作用を示さないことを報告した。さらに、安全でAベータ削減効果の高いDNAワクチンの開発し、臨床試験を開始することを目指している。
研究方法
プラスミドベクターにAベータ1-42を組み込み、Aベータペプチドが細胞外に分泌されるワクチンを開発した。AベータDNAワクチンをアルツハイマー病のモデルマウスに3-8ヶ月間投与し脳アミロイドの沈着の変化を検討した。ワクチンは、最初の6回まで週1回、7回目以後は2週間に1度の間隔で100 ugづつ筋注した。治療効果の判定は以下のように行った。治療群、対照群の大脳に矢状断を加え固定後、パラフィン切片を作製した。抗Aベータ抗体を用いたえ免疫染色を行い、大脳皮質と海馬においてAベータ沈着を画像解析により定量化した。
結果と考察
新規開発ワクチン、YM3711は既存ワクチンに比し、Aベータ産生能は5-6倍、細胞外放出能は3-4倍上昇していた。YM3711投与により誘導される抗Aベータ抗体価は既存ワクチンより有意に高く、また抗体誘導の弱いモデルマウスでも野生型マウスと同程度の力価を示した。Aベータ亜種であるAベータ3(pE)-42やアミロイド原性脳内蛋白であるABri、ADanに対する抗体価でもYM3711投与群が有意に高値を示した。
結論
YM3711ワクチンはAベータ亜種やアミロイド原性脳蛋白など神経毒性を示す物質に幅広く対応することを目的として設計されたが、充分その作用を有しており、非臨床・臨床試験に耐えうると判断した。

公開日・更新日

公開日
2010-06-15
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200935016C

成果

専門的・学術的観点からの成果
アルツハイマー病は認知障害を主症状として発症し、我が国では120万人以上の患者が存在すると推定されている。人口の高齢化に伴い、患者数が急増することは確実である。治療法の開発は医学的、社会的に極めて重要である。我々は有効で、安全性の高いDNAワクチンを開発した。モデルマウスに投与すると、既にAβ沈着が認められた12ヶ月齢から開始した治療的投与群においてもAβ沈着が減少していた。また、老齢サルにおいても、DNAワクチン投与群でAβの減少を観察している。
臨床的観点からの成果
新型DNAワクチンは平成22年3月に優先権出願、PCT出願を完了した。上記の所見に基づいて前(非)臨床試験を開始した。まず、米国のDNAワクチン製造に特化した製薬会社に依頼して、GMP (good manufacturing practice) 環境下に新型DNAワクチンの作製を開始した。これを用いて平成23年度中に前臨床試験を終了し、平成24年度末までに小規模第一相臨床試験を完了させる予定である。
ガイドライン等の開発
特になし。
その他行政的観点からの成果
DNAワクチンを薬剤として開発中である。
その他のインパクト
平成21年度
メディカルトリビューン紙、アルツハイマー病に対するDNAワクチン開発、掲載日未定

平成20年度
NHK教育テレビ、サイエンスZERO「アルツハイマー病研究最前線」、複数回放送、11/30
日本経済新聞、アルツハイマー病に挑む、掲載有り、12/22

平成19年度
週間「アエラ」、免疫力でアルツを退治、掲載有り、9/11

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
3件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
3件
学会発表(国内学会)
11件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件
都民講座。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Tokita Y, Kaji K, Lu J, Okura et al.
Assessment of non-viral Aβ DNA vaccines on Aβ reduction and safety in rhesus monkeys
J Alz Dis 印刷中  (2010)
原著論文2
Okura, Y., Kohyama K., Park, I et al.
Non-viral DNA vaccination augments microglial phagocytosis of Aβ deposits as a major Aβ clearance pathway in an Alzheimer disease model mice
J Neuropathol Exp Neurol , 67 , 1063-1071  (2008)
原著論文3
Okura, Y., Miyakoshi, A., Kohyama, K. et al.
Non-viral A beta DNA vaccine therapy against Alzheimer’s disease: Long term-effects and safety
Proc Natl Acad Sci USA , 103 , 9619-9624  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-