医療観察法における退院後支援に資する研究

文献情報

文献番号
202317037A
報告書区分
総括
研究課題名
医療観察法における退院後支援に資する研究
課題番号
23GC1015
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
平林 直次(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 病院 司法精神診療部)
研究分担者(所属機関)
  • 竹田 康二(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター病院 司法精神診療部)
  • 久保 彩子(上間 彩子)(国立病院機構琉球病院 精神科)
  • 柏木 宏子(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター病院 司法精神診療部)
  • 村杉 謙次(独立行政法人国立病院機構 小諸高原病院 精神科)
  • 壁屋 康洋(独立行政法人国立病院機構 榊原病院)
  • 賀古 勇輝(北海道大学病院 附属司法精神医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
11,539,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、通院処遇に関する実現可能なモニタリングシステムの提案、通院処遇の現状や課題の把握とその解決策の提示、入院対象者の類型化に基づくクリティカルパスの提示や指定入院医療機関の医療の均てん化、医療観察法医療に関する人材養成の促進である。
研究方法
下記6つの分担研究班から通院処遇、入院処遇、人材育成の3つのグループを組織した。研究代表者は、各分担研究班の役割の明確化、連携強化を目的として研究班会議を開催し研究を進めた。なお、2年間の研究期間を予定しており、本年度はその初年度である。
1) 通院処遇
a 通院処遇モニタリングシステムの構築に関する研究(竹田班)
b 通院処遇の実態把握と課題に関する調査とその解決策の検討(久保班)
c 指定通院医療機関の医療および関連機関との連携に関する研究 ―複雑事例―(柏木班)
2) 入院処遇
d 入院対象者の類型化に基づくクリティカルパスの開発と退院促進(村杉班)
e 指定入院医療機関の医療や処遇の均てん化に関する研究(壁屋班)
3) 医療観察法医療にかかる人材育成
f 医療観察法に必要な人材育成に関する研究(賀古班)
結果と考察
1)通院処遇
通院処遇モニタリングシステムについては、正確性、実行性、費用対効果を考慮しインターネット回線を利用したElectronic Data Capture (以下、EDC)システムによるデータ入力とクラウドサーバーによるデータ保存・管理を行う方針を定め開発を進めた。データ収集項目(案)を選定しEDCシステムの画面開発を終えた(竹田班)。最終年度には開発を終え、試験運用の予定である。
全国697の指定通院医療機関に対する実態調査では、支援に困難さを感じる理由や支援の実際を明らかにすることを目的とし、Webアンケ―トを実施した。施設調査では169機関、個別調査154事例の回答を得た。その結果、急性増悪や他害・問題行動そのものや、それらの未然防止に医療機関は困難さを感じている実態が明らかとなった。入院複雑事例に比較すると、通院複雑事例では「信頼関係構築」と「情報共有」が通院特有の課題として顕在化しやすいことが示された(久保班)。
都市部または郡部から通院医療の経験が豊富な指定通院医療機関を抽出して、複雑事例43例について通院処遇の実態や課題、それに対する支援について聞き取り調査を行った。指定入院医療機関と指定通院医療機関との相補的連携、通院医療機関同士の転院、生活障害に対する支援、警察との連携など、新たな試みや好実践例が抽出された(柏木班)。
2) 入院処遇
入院処遇対象者2,993例を対象として、「入院処遇日数」「処遇終了率」に影響を与える施設要因や医療者要因を抽出した。また「通院処遇移行までの入院処遇日数」と「処遇終了率」から、指定入院医療機関の機能評価および分類を進めた(壁屋班)。
臨床的有用性を考慮し精神科診断6つをとりあげ、クリティカルパス案を作成した。指定入院医療機関のアンケート調査ではクリティカルパスを使用している施設は半数程度に留まり、クリティカルパスの意義を明確にした自由度の高いクリティカルパスを作成し、臨床使用率の向上を目指す必要性が示された(村杉班)。
3) 医療観察法医療にかかる人材育成
アンケート調査の依頼文書を調査対象施設へ郵送し、Webアンケートを実施した。計1,777施設に依頼し、321施設から回答が得られ、指定入院医療機関の医療従事者352名から回答が得られた。医療観察法医療に関する教育や研修の不足が指摘され、時間や人員の制約を克服するために、オンライン・オンデマンド研修や全施設共通の導入研修、系統的な教育システムの構築が必要と考えられた(賀古班)。
結論
1) インターネット回線を利用したElectronic Data Captureシステムによるデータ入力とクラウドサーバーによるデータ保存・管理を行う通院処遇モニタリングシステムの構築が必要である。
2) 複雑で多様なニーズを持つ事例の地域支援は関係機関による自発的な手厚い医療の提供によって支えられており、現行の診療報酬制度の対象とされない医療行為であっても、その実効性を検討して評価する必要がある。
3) 指定入院医療機関では施設間の格差が生じており、その解消のためには対象者の診断や特性に見合った自由度の高いクリティカルパスの開発とその普及が不可欠である。
4) 医療観察法医療に関する教育や研修の不足が指摘され、時間や人員の制約を克服するために、オンライン・オンデマンド研修や全施設共通の導入研修、系統的な教育システムの構築が必要と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2024-06-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-06-17
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202317037Z