神経・筋変性疾患における細胞移植システムの構築と自己細胞移植治療法の開発

文献情報

文献番号
200935015A
報告書区分
総括
研究課題名
神経・筋変性疾患における細胞移植システムの構築と自己細胞移植治療法の開発
課題番号
H19-こころ・一般-016
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
出沢 真理(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 林 拓也(独立行政法人理化学研究所 分子イメージング科学研究センター)
  • 田畑 泰彦(京都大学 再生医学研究所)
  • 今村 道博(国立精神・神経センター 神経研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
28,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では患者本人の細胞を用いる自己細胞移植治療を目指して、これらの誘導細胞の安全性を評価する。また、生体内での細胞の生着、分化促進、機能発揮、組織の機能修復を図るために、誘導細胞と同時に生体材料、液性因子、血管前駆細胞などの要素を盛り込んだ移植システムの築を検討し、神経・筋変性疾患への実用性の高い自己細胞移植方法の確立を目指す。
研究方法
(1)細胞移植治療を実現するための生体材料の検討
(2)骨髄間質細胞からの神経誘導と脳梗塞モデルでの分化度と有効性の相関
(3)パーキンソン病モデルサルでのドーパミン補充療法の有効性判定
(4)骨髄間質細胞からの骨格筋誘導

結果と考察
骨髄間葉系からの神経・筋分化誘導においては、一連の研究から、スペルミン化学導入したカチオン化プルランを遺伝子導入キャリアとして用いることによって、細胞毒性を抑えた骨髄間質細胞での有効な分化誘導を実現させることが可能となり、サルでの片側性パーキンソンモデル実験が実施可能になったことは大きな成果である。
細胞移植において重要な用件は、細胞の生着・生存・ホスト組織内での分化・血管新生による栄養供給体制の維持、など総合的な要素が必要とされる。細胞の生着にとって必須の足場に関してはtype 1 collagenが、また血管新生の促進には、FGF を含むgelatin徐放剤に効果のあることが脳梗塞損傷モデルで分かった。特に脳梗塞など、組織の損傷・欠落が大きい疾患においては、細胞だけを移植しても有効な再建にはつながらない。その意味で、本研究によって得られた成果は細胞と共に、これら因子を同時に投与することへの意義を明らかにしたと言える。
イヌの声帯を用いた移植実験は、今後も継続すべき課題として認識している。
結論
実用性の高い骨髄間質細胞から、神経・骨格筋を効率よく誘導する方法を見出した。かかる方法を有効な細胞移植治療系に発展させるために、細胞毒性の少ない誘導方法、血管新生を促進し移植細胞の足場を与えるマトリックスなどが有効であることが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2010-06-15
更新日
-

文献情報

文献番号
200935015B
報告書区分
総合
研究課題名
神経・筋変性疾患における細胞移植システムの構築と自己細胞移植治療法の開発
課題番号
H19-こころ・一般-016
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
出沢 真理(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 林 拓也(独立行政法人理化学研究所 分子イメージング科学研究センター)
  • 田畑 泰彦(京都大学 再生医学研究所)
  • 今村 道博(国立精神・神経センター 神経研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では患者本人の細胞を用いる自己細胞移植治療を目指して、これらの誘導細胞の安全性を評価する。また、生体内での細胞の生着、分化促進、機能発揮、組織の機能修復を図るために、誘導細胞と同時に生体材料、液性因子、血管前駆細胞などの要素を盛り込んだ移植システムの築を検討し、神経・筋変性疾患への実用性の高い自己細胞移植方法の確立を目指す。
研究方法
(1)細胞移植治療を実現するための生体材料の検討
(2)骨髄間質細胞からの神経前駆細胞、成熟神経細胞、ドーパミン神経誘導の評価
(3)神経変性モデルを用いた有効な細胞移植システムの検討
(4)パーキンソン病モデルサルでのドーパミン補充療法の有効性判定
(5)骨髄間質細胞からの骨格筋誘導
結果と考察
実用性の高い骨髄間質細胞から、神経・骨格筋を効率よく誘導する方法を見出した。かかる方法を有効な細胞移植治療系に発展させるために、細胞毒性の少ない誘導方法、血管新生を促進し移植細胞の生存・分化のための足場を与えるマトリックスなどが有効であることが示唆された。さらにサルのパーキンソンモデル実験において、本方法を用いた自己細胞移植システムの有効性・安全性が示唆された。
結論
安全性はヒトへの応用において重要な要点であるが、誘導細胞の核型検査やヌードマウスでの腫瘍化試験の結果、際立った危険性は無いと推察される。さらに犬での有効性・安全性の確認はヒトへの応用に向けて非常に大きな意義があると考えられ、今後の推進すべき課題として認識している。

公開日・更新日

公開日
2010-06-15
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200935015C

成果

専門的・学術的観点からの成果
ともすると失われた細胞の供給源をどの細胞にするか、という議論に終始している現在の再生医学研究においては、移植細胞をどのように生体に投与するか、有効な組織構築につながるシステムとはどのような要素を必要とするのか、という重要な課題に関して焦点が当てられて来ていない。その意味で本研究はまさにこれからの再生医学を先取りしたものであり、学術的意義はあると考えている。
臨床的観点からの成果
安全性はヒトへの応用において重要な要点であるが、誘導細胞の核型検査やヌードマウスでの腫瘍化試験の結果、際立った危険性は無いと推察される。さらに犬での有効性・安全性の確認はヒトへの応用に向けて非常に大きな意義があると考えられ、今後の推進すべき課題として認識している。
ガイドライン等の開発
(特になし)
その他行政的観点からの成果
再生医学、ことに細胞移植の分野ではES細胞や幹細胞におけるしのぎを削る競争が世界的な規模で繰り広げられているが、本件の骨髄間質細胞からの誘導系を産業レベルで確立することはこの分野における世界に先駆けた新規の医療技術の創出となり、高齢化に伴い増加している神経・筋肉変性疾患に対する根本的治療法開発の突破口になると思われる。
その他のインパクト
朝日新聞 平成22年2月9日夕刊「骨髄細胞使い脳梗塞治療」。
日経産業新聞 平成22年2月10日「幹細胞から神経細胞」。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
11件
その他論文(和文)
11件
その他論文(英文等)
7件
学会発表(国内学会)
21件
学会発表(国際学会等)
9件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Shohei Wakao, Takuya Hayashi, Masaaki Kitada, et al.
Long-term observation of auto-cell transplantation in non-human primate reveals safety and efficiency of bone marrow stromal cell-derived Schwann cells in peripheral nerve regeneration.
Exp. Neurol. , 223 (2) , 537-547  (2010)
原著論文2
Noguchi A, Matsumura S, Dezawa M, et al.
Isolation and characterization of patient-derived, toxic, high-mass amyloid beta-protein (Abeta) assembly from Alzheimer's disease brains.
J. Biol. Chem. , 284 (47) , 32895-32905  (2009)
原著論文3
Hayase M, Kitada M, Wakao S, et al.
Committed neural progenitor cells derived from genetically modified bone marrow stromal cells ameliorate deficits in a rat model of stroke.
J Cereb Blood Flow Metab. , 29 (8) , 1409-1420  (2009)
原著論文4
Nagane K, Kitada M, Wakao S, et al.
Practical induction system for dopamine-producing cells from bone marrow stromal cells by spermine-pullulan-mediated reverse transfection method.
Tissue Eng. , 15 (7) , 1655-1665  (2009)
原著論文5
Someya Y, Koda M, Dezawa M, et al.
Reduction of cystic cavity, promotion of axonal regeneration and sparing, and functional recovery with transplanted bone marrow stromal cell-derived Schwann cells after contusion injury to the adult rat spinal cord.
J Neurosurg Spine , 9 (6) , 600-610  (2008)
原著論文6
Shimizu S, Kitada M, Ishikawa H, et al.
Peripheral nerve regeneration by the in vitro differentiated-human bone marrow stromal cells with Schwann cell property.
Biochem Biophys Res Commun. , 359 , 915-920  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-