精神科医療機関における行動制限最小化の普及に資する研究

文献情報

文献番号
202317036A
報告書区分
総括
研究課題名
精神科医療機関における行動制限最小化の普及に資する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23GC1014
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
杉山 直也(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所地域精神保健・法制度研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 吉川 隆博(東海大学 医学部看護学科)
  • 三宅 美智(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
6,155,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、わが国における行動制限の現状をふまえ、先行研究における成果を援用しつつ、実効的な行動制限最小化活動を普及させることによって本質的な行動制限最小化の実現に資することである。
研究方法
研究組織全体の方針として、当事者を含む多分野の専門家・職種で合議体制を構築してこれを有識者検討の場とし、毎月テーマを決め、全体的な議論とともに各分担研究についても協議・検討した。病院間相互ピアレビュー手順および方法論の開発では、先行研究をもとに領域エキスパートの合議によってピアレビュー項目を検討し、今後の予備的な試行に向けて参加協力医療機関を募った。取り組み事例調査では、分担研究者の所属する臨床研究審査委員会にて承認を得たうえ、「代替法」「患者参加型隔離・拘束パス」「組織風土」をテーマに対象を選定し、半構造化面接によるグループインタビュー形式で調査を実施した。普及・啓発のための資材開発では、国際標準的な最小化策の基礎理論となるトラウマインフォームド・ケア(以下「TIC」)とリカバリーに関する基本的な知識を研究組織内で共有し、資材の開発に着手するとともに、教材プラットフォームの構築を検討した。
結果と考察
研究会議は予定通り開催された。病院間相互ピアレビューの項目リストが確定され、今後の予備的試行に向け参加2医療機関を確保した。取り組み事例調査では、「代替法」「患者参加型隔離・拘束パス」「組織風土」について、方策の意義や活用方法、患者側の反応及び効果、看護スタッフの不安・負担軽減に関する情報収集ができた。普及・啓発のための資材開発では、TICとリカバリーについて、具体的な動画資材の開発、プラットフォーム構築のための中間成果物を得た。
本研究が取り組むピアレビュー手順の開発、取り組み事例から得られる知見の共有、標準的な教育資材の開発とプラットフォーム化によって、本質的な行動制限最小化活動が浸透普及されるならば、わが国の医療現場における治療文化や風土に変革をもたらし、当事者の権利擁護に配慮すると同時に、良質で非制限的な精神科医療の促進が期待される。国際的に成果を上げてきた最小化活動は、業界コンセンサスと学術的価値を有すが、これまで本邦で馴染みのないもので、しかしながら先行研究の積み上げにより、現在は目的を達成するために合理的な環境が整ったと考えられ、本分担研究での取組により具体的成果に近づけることにつながった。いずれも進捗は順調で、今後現場での実用性に耐える成果に仕上げていく必要がある。
結論
本研究で最終的に得られる成果は、国をはじめ関係機関等での議論や要請に応じることのみならず、当事者の苦痛軽減はもちろんのこと、医療関係者のジレンマや葛藤を減じ、心理負担を軽減することにも通じ、医療の質向上に大きく寄与することが考えられる。

公開日・更新日

公開日
2024-09-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-09-17
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202317036Z