児童・思春期精神医療における多職種連携の推進マニュアル作成に関する研究

文献情報

文献番号
202317035A
報告書区分
総括
研究課題名
児童・思春期精神医療における多職種連携の推進マニュアル作成に関する研究
課題番号
23GC1013
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
宇佐美 政英(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター国府台病院 児童精神科 / 子どものこころ総合診療センター)
研究分担者(所属機関)
  • 原田 謙(長野県立 こころの医療センター駒ヶ根)
  • 奥野 正景(医療法人サヂカム会 三国丘病院 精神科)
  • 大重 耕三(地方独立行政法人 岡山県精神科医療センター)
  • 田崎 琴瑛(板垣 琴瑛)(国立国際医療研究センター国府台病院 心理指導室)
  • 山本 啓太(国立国際医療研究センター国府台病院 ソーシャルワーク室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
3,847,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
児童・思春期精神医療における多職種連携の実態を明らかにし、その質の向上と効率化を図ることを目的とする。
研究方法
奥野班: 児童精神科診療所におけるコメディカル(精神保健福祉士、公認心理師など)の配置状況を調査し、医師の負担軽減と多職種連携の効率化を目指す。
大重班: 児童精神科専門病棟を持つ医療機関における初診待機期間の実態を調査し、多職種がどのように関与しているかを把握する。
原田班: 児童・思春期精神科入院治療における多職種の診療実態を明らかにし、専門性を活かした効率的な連携システムの構築を目指す。
山本班: 多職種による児童・思春期精神科入院治療の有効性を評価し、効果的な治療アプローチを推進することを目的としている。
板垣班: 児童・思春期精神医療における多職種連携推進マニュアル(ドラフト版)を作成し、各職種の役割と連携手順を明確にする。
結果と考察
研究結果
奥野班: 調査対象の5つの診療所では、常勤および非常勤のコメディカルの配置が進んでおり、初診予約やインテークの段階から多職種が関与している。各機関では、児童および保護者への対応、連携機関との調整が行われており、特に精神保健福祉士や公認心理師が重要な役割を果たしている。結果として、医師の負担が軽減され、多職種連携の効率が向上している。
大重班: アンケート調査の結果、児童精神科専門外来を持つすべての施設で初診待機期間が存在し、3か月以内と回答した施設が16施設、3か月以上の施設が7施設であった。待機期間の長期化が明らかになり、特に緊急対応を要する場合の調整や工夫が求められている。各施設では、初診予約の窓口を地域連携室に設置し、医師や病棟職員が対応していることが多い。緊急対応時の優先度の判断基準としては、自傷・自殺が14施設、精神病症状が12施設と多くの施設がこれらの基準を用いていた。また、初診待機期間の短縮策として、他職種の活用や一般精神科医の協力が進められていた。
原田班: アンケート調査の結果、各職種の業務が重複しており、特に医師の業務が過重であることが判明した。回答者のうち、看護師98名、医師49名、心理職48名、精神保健福祉士37名、作業療法士20名が多職種連携の実態を報告した。 各職種は連携して診療を行っているものの、業務分担が不明確であるため、効率的な連携が阻害されていることが明らかになった。特に、タスクシフトが必要であり、各職種が専門性を発揮できる体制の構築が求められた。
山本班: 患者およびその家族からのフィードバックを基に、多職種による治療の効果や満足度に関する評価調査を開始した。
板垣班: アンケート調査と文献レビューの結果、児童・思春期精神医療における多職種連携推進マニュアル(ドラフト版)の作成が進められた。具体的な連携手順や各職種の役割が明確に定義され、実践的な連携モデルが提案された。 マニュアルには、初診から退院までの連携手順、トリアージの方法、初診予約の効率化、多職種による治療・支援の方法が具体的に示されており、定期的なカンファレンスの開催や地域連携の強化が推奨された。また、連携の質を向上させるための具体的な手法も提示された。

考察
各班の研究結果を総合すると、児童・思春期精神医療における多職種連携の重要性が再確認された。
コメディカルの配置が医師の負担軽減に寄与し、初診予約やインテークの効率化が図られていることが確認された。多職種連携の具体的な手法が明確になり、今後の診療所運営において重要な指針となることが期待される。
初診待機期間の長期化が深刻な課題であり、緊急対応の体制強化や他職種の活用が必要であることが示された。多職種連携による待機期間の短縮策が具体的に提案され、実施されることが望まれる。
各職種の業務が重複している現状が明らかになり、効率的な連携システムの構築が求められている。タスクシフトが必要であり、各職種が専門性を発揮できる体制が重要である。
患者およびその家族からのフィードバックを基に、治療の透明性と信頼関係の向上が治療効果に直結することが確認され、今後の治療プログラムの質の向上が期待される。
児童・思春期精神医療における多職種連携推進マニュアル(ドラフト版)の作成が進められた。
結論
令和5年度の研究を通じて、児童・思春期精神医療における多職種連携の現状と課題が明確になった。各班の研究結果は、今後の多職種連携の効率化と質の向上に向けた重要な指針となるものであり、具体的な改善策が提案された。特に、「児童・思春期精神医療における多職種連携推進マニュアル(ドラフト版)」は、今後の多職種連携の実践において重要な役割を果たすことが期待される。

公開日・更新日

公開日
2024-08-13
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202317035Z