夜型社会における子どもの睡眠リズムによる心身発達の前方視的研究と介入法に関する研究

文献情報

文献番号
200935014A
報告書区分
総括
研究課題名
夜型社会における子どもの睡眠リズムによる心身発達の前方視的研究と介入法に関する研究
課題番号
H19-こころ・一般-015
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
新小田 春美(九州大学大学院医学研究院 保健学部門)
研究分担者(所属機関)
  • 浅見 恵梨子(千里金蘭大学 看護学部)
  • 加藤 則子(国立保健医療科学院)
  • 西岡 和男(大牟田保健所)
  • 内村 直尚(久留米大学 医学部)
  • 樗木 晶子(九州大学大学院医学研究院 保健学部門 )
  • 末次 美子(九州大学大学院医学研究院 保健学部門 )
  • 松本 一弥(広島文教女子大学 人間科学部)
  • 加来 恒壽(九州大学大学院医学研究院 保健学部門 )
  • 神山 潤(社団法人地域医療振興協会 東京北社会保険病院)
  • 大久保一郎(筑波大学大学院人間総合科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
3,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
夜型社会における乳幼児の睡眠生活習慣と心身の発達影響を明らかにするとともに、睡眠・覚醒リズムの正常化(是正)への支援に向けた介入法の構築を目指す。
研究方法
福岡市、奈良T市の保健福祉センターで実施された乳幼児健診(1歳半、3歳児)でエントリーしたチャイスコップ(ChiSCoP:Child Sleep Cohort Project、年2回3年間調査)会員372名について、10日間「睡眠日誌」と「睡眠・生活リズム調査」、日本語版CBCL2/3歳用 (CBCL:Child Behaviour Checklist)を用い睡眠習慣による情緒・行動を観測した。就寝タイプを遅寝(22時以降)、早寝(21時前)2群についてCBCLの上位尺度である内向尺度(依存分離、不安神経、引きこもり)、外向尺度(反抗、攻撃,注意集中)、総得点の境界域以上の要因について、ロジスティック回帰分析によるオッズ比(OR)を求めた。臨床評価として、ADHD患児に薬物療法と睡眠・生活リズムの治療的介入効果をアクチグラフと脳波によって評価した。地域行政での施策的な発展の意義や方向づけを考える手がかりに、乳児家庭訪問(大牟田市)350組の睡眠実態調査とともに、地域啓発に取り組んだ。一部の地域では認知行動的教育教材「早起き元気さんのシール帳」を用いた効果も観測した。
結果と考察
CBCL解析対象4回目調査時点の275名(継続率81%)の、就床タイプの推移は改善群69.1%、未改善群35.5%であった。遅寝群の昼寝時間帯は早寝群より後退し、遅寝・早寝群とも2歳時で、昼寝1回に限局し睡眠・覚醒リズムの成長が確認された。情緒・行動評価として、内向尺度との有意な関連は認められなかったが、外向尺度で、「22時以降の外出]、「60分以上の昼寝総時間に有意な(P<0.05)影響が認められた。遅寝によるCBCL境界域以上の高得点となるリスク要因について、内向尺度に影響するリスクはなく、外向尺度で境界域以上の高得点リスクが存在し、「夜の外出あり」調整OR= 20.8、「食習慣への努力なし」 4.68、「生活リズム意識づけ」3.87で有意であった。治療的介入は、ADHDの通院児のActigraphと睡眠日誌より夜間の「睡眠・覚醒リズムの後退」や「睡眠の質の低下」を認め、薬物療法とともに睡眠に対する介入により異常行動に影響を与える可能性が示唆された。
結論
子どもの遅寝は、特にCBCLの「外向尺度」への影響を認め、今後も心身発達影響について就学以降に至る継続観察の必要性が示唆された。発達早期からの親子で取り組む遅寝改善「眠育」の地域活動の動機づけとなった。

公開日・更新日

公開日
2010-06-15
更新日
-

文献情報

文献番号
200935014B
報告書区分
総合
研究課題名
夜型社会における子どもの睡眠リズムによる心身発達の前方視的研究と介入法に関する研究
課題番号
H19-こころ・一般-015
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
新小田 春美(九州大学大学院医学研究院 保健学部門)
研究分担者(所属機関)
  • 浅見恵梨子(千里金蘭大学 看護学部)
  • 加藤 則子(国立保健医療科学院)
  • 西岡 和男(大牟田保健所)
  • 内村 直尚(久留米大学医学部)
  • 樗木 晶子(九州大学大学院医学研究院 保健学部門 )
  • 末次 美子(九州大学大学院医学研究院 保健学部門 )
  • 松本 一弥(広島文教女子大学人間科学部)
  • 加来 恒壽(九州大学大学院医学研究院 保健学部門 )
  • 神山 潤(東京ベイ・浦安市川医療センター)
  • 大久保 一郎(筑波大学大学院人間総合科学研究科)
  • 早川 和生(大阪大学大学院)
  • 南部 由美子(福岡市東保健所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
夜型社会における乳幼児の睡眠生活習慣と心身の発達・異常行動への影響を明らかにするとともに、睡眠・覚醒リズムの正常化(是正)への支援に向けた介入法の構築を目指す。
研究方法
福岡市、天理市の保健福祉センターで実施された乳幼児健診(1歳半、3歳児)でエントリーしたチャイスコップ(ChiSCoP:Child Sleep Cohort Project、年2回3年間コホート調査)会員343名について、10日間「睡眠日誌」と「睡眠・生活リズム調査」、日本語版CBCL2/3歳用 (CBCL:Child Behaviour Checklist)を用い睡眠による情緒・行動を観測した。就寝タイプを遅寝(22時以降)、普通(21時台)、早寝(21時前)で分類し、遅寝、早寝群のCBCLの上位尺度である内向尺度(依存分離、不安神経、引きこもり)、外向尺度(反抗、攻撃,注意集中)、総得点の境界域以上(T得点63点以上)の要因について、ロジスティック回帰分析によるオッズ比(OR)を求めた。臨床評価として、ADHD患児に薬物療法と睡眠・生活リズムの治療的介入効果をアクチグラフと脳波によって評価した。地域行政での施策的な発展の意義や方向づけを考える手がかりに、乳児家庭訪問(大牟田市)350組を実施した。認知行動的教育教材「早起き元気さんのシール帳」を作成し、その効果を観測した。
結果と考察
CBCL解析対象4回目調査時点の275名(継続率81%)の、就床タイプの推移は改善群69.1%、未改善群35.5%であった。遅寝群の昼寝時間帯は早寝群より後退し、遅寝・早寝群とも2歳時で、昼寝1回に限局し睡眠・覚醒リズムの成長が確認された。情緒・行動評価として、内向尺度との有意な関連は認められなかったが、外向尺度で、「22時以降の外出]、「60分以上の昼寝総時間に有意な(P<0.05)影響が認められた。遅寝によるCBCL境界域以上の高得点となるリスク要因について、内向尺度に影響するリスクはなく、外向尺度で境界域以上の高得点リスクが存在し、「夜の外出あり」調整OR= 20.8、「食習慣への努力なし」4.68、「生活リズム意識づけ」3.87で有意であった。治療的介入は、ADHDの通院児のActigraphと睡眠日誌より夜間の「睡眠・覚醒リズムの後退」や「睡眠の質の低下」を認め、薬物療法とともに睡眠に対する介入により異常行動に影響を与える可能性が示唆された。
結論
子どもの遅寝は、特にCBCLの「外向尺度」への影響を認め、今後も心身発達影響について就学以降に至る継続観察の必要性や発達早期からの親子で取り組む遅寝改善「眠育」の活動意義が示された。

公開日・更新日

公開日
2010-06-15
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200935014C

成果

専門的・学術的観点からの成果
CBCL(Child Behaviour Checklist)2/3歳用を用い,遅寝の情緒・行動への影響をコホートし、ロジスティック回帰分析によるオッズ比(OR)を求めた。CBCLの上位尺度である内向尺度(依存分離、不安神経、引きこもり)、外向尺度(反抗、攻撃,注意集中)、総得点について、境界域(T値63点)以上をもたらす睡眠・生活習慣をみると、外向尺度で境界域以上の高得点リスクは、「夜の外出あり」調整OR= 20.8、「食習慣への努力なし」4.68、「生活リズム意識づけ」3.87であった。
臨床的観点からの成果
ADHDの臨床評価として、ADHD患児に薬物療法と睡眠・生活リズムの治療的介入効果をアクチグラフと脳波によって評価した。通院児のActigraphと睡眠日誌より夜間の「睡眠・覚醒リズムの後退」や「睡眠の質の低下」を認め、薬物療法とともに睡眠に対する介入により異常行動に影響を与える可能性が示唆された。
ガイドライン等の開発
発達早期からの睡眠生活リズム確保が、乳幼児の心と脳の発達を促す「眠育」活動の推進を地域行政での施策的な取り組みとして考える手がかりに、市民向け睡眠生活習慣の「ちらし」をF市と
O市で作成し、乳児家庭訪問指導時に配布し啓発活動を進めた。認知行動的教育教材「早起き元気さんのシール帳」(リーフレット)は親子で取り組む眠育のガイドラインとなりうることを期待する。
その他行政的観点からの成果
子どもの生活リズムの改善を目ざし「眠育シンポジウム」をChISCoPの主催、福岡県、県看護協会、福岡市保育協会、福岡母性衛生学会の後援をうけ、医療職、教育、保育などの専門職に向けた井戸端会議や母親向け講演会を実施し、地域啓発への足がかりとした。
  認知行動的アプローチ教材「早起き元気さんのシール帳」を作成し、子ども向けの教材効果を検討中である。この取り組みは全国版の子育て広報誌に掲載されるなど、親子の遅寝改善にむけた「眠育」キャンペーンと、地域定着を考える教育介入法の構築の足がかりとした。

その他のインパクト
「眠育」をキャッチフレーズとして、0市における350組の健康乳児家庭訪問(生後平均36日目付近の訪問)を実施し、母乳栄養児は混合栄養児、人工乳児よりも有意に早寝であり、遅起き傾向で睡眠は確保されていた。母乳栄養による育児は、自然な生活リズムの形成につながるのではないかとの結果を得、睡眠の重要性が確認された。さらに、睡眠調査そのものが、子どもに対する睡眠環境配慮への認識を産むこととなり、継続の効果が期待される。

発表件数

原著論文(和文)
3件
新小田春美①福岡医誌99(12):246-261 ,神山潤 脳と発達40.277-283 2008
原著論文(英文等)
6件
Kohyama J.①Nova Science Publishers.②Curr Neuropharmacol (in press)
その他論文(和文)
13件
ChiSCoP活動;happy Angel育児広報誌(東日本版、西日本版、全国版)研修会取材記事掲載, 神山潤:脳と発達, 内村直尚;Pharma medica など
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
11件
新小田春美他、日本健康教育学会、日本睡眠学会、福岡母性衛生学会、日本応用心理学会、日本助産学会、日本母性衛生学会、日本健康支援学会にて発表
学会発表(国際学会等)
2件
Kohyama J.10th Asian & Oceanian Congress of Child Neurology. Asian Pacific Congress of Pediatrics.
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
7件
医療、保育、教育、心理関係のコメデイカルを対象とした「眠育」シンポジウムや一般向け講演会を東京、福岡で開催。活動が全国版の育児広報誌に掲載、地方版新聞掲載、O市で家庭訪問時の睡眠実態調査と啓発活動。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kohyama J
Melatonin, sleep and insomnia
Nova Science Publishers  (2009)
原著論文2
Kohyama J
Neurochemical and neuropharmacological aspects of circadian disruptions:an introduction to asynchronization
Curr Neuropharmacol  (2009)
原著論文3
新小田春美、松本一弥、浅見恵梨子、末次美子他
乳幼児の発達年齢および親子の睡眠習慣からみた遅寝の実態とその影響要因の分析
福岡医学雑誌 , 99 (12) , 246-261  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-