文献情報
文献番号
202317033A
報告書区分
総括
研究課題名
第8期障害福祉計画の精神障害にも対応した地域包括ケアシステム構築に係る成果目標の見直しに資する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23GC1011
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
黒田 直明(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所地域精神保健・法制度研究部)
研究分担者(所属機関)
- 岡田 隆志(福井県立大学 看護福祉学部)
- 森山 葉子(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
6,154,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
「にも包括」構築のために自治体が障害福祉計画で取り組むべき事項と成果を整理し、市町村が収集可能なデータや実施可能な調査にもとづいた評価指標案を提案することである。今年度は、(1)障害福祉計画の「にも包括」構築の分野における成果目標と活動指標の設定実態と課題の把握、(2)精神障害を持った人々の生活支援のあり方や支援サービスの評価に関する国際動向の把握、(3)当該分野のアウトカム評価に実装しうる評価尺度を検証する臨床研究、(4)市区町村の地域特性と「にも包括」構築推進の関連を探索する地域相関研究を実施した。
研究方法
(1)3つの調査を行った。a. 第6期計画の指標の設定状況等を予備的に調査した。「地域包括ケアシステムの構築に関する事例集」の中から人口規模を考慮して20自治体を選定した。b. 全市区町村に対してアンケートを配布し、第7期障害福祉計画について「成果目標の設定内容」「活動指標の設定内容」「策定時の他部局との連携状況」「計画策定・指標設定等で困ること」「実態把握調査の内容」を調査した。c.自治体職員に第7期障害福祉計画の「にも包括」において定める予定の成果目標と活動指標の項目や困難点のインタビューを行った。
(2)精神障害福祉サービスのアウトカム評価の方法や評価指標に関する国内外の情報をPubmed、Google Scholar、Google等の検索エンジンを用いて探索的に検索した。日本における高齢者の介護サービスのアウトカム評価の政策議論の流れも踏まえながら、今後の精神障害福祉サービス評価について望まれる方向性について考察した。
(3)英国で公的な福祉サービスのアウトカム評価に実装されているAdult Social Care Outcomes Toolkit(ASCOT SCT4)日本語版の精神障害当事者における信頼性と妥当性を検証した。精神科デイケア、精神科外来、障害福祉事業所を利用している精神障害当事者397名を対象に、ASCOT SCT4日本語版を妥当性の確立した自記式QOL評価尺度や施設職員による客観的評価尺度と同時に実施し、尺度特性を分析した。
(4)2020年に行われた市区町村全国調査、および公開データを用いた。市区町村(n=1,005)の医療・福祉サービス資源の豊富さに関する変数や、機関同士の連携のしやすさを間接的に示す変数について、市区町村の困難感との関連を順序ロジスティック回帰モデルで分析した。
(2)精神障害福祉サービスのアウトカム評価の方法や評価指標に関する国内外の情報をPubmed、Google Scholar、Google等の検索エンジンを用いて探索的に検索した。日本における高齢者の介護サービスのアウトカム評価の政策議論の流れも踏まえながら、今後の精神障害福祉サービス評価について望まれる方向性について考察した。
(3)英国で公的な福祉サービスのアウトカム評価に実装されているAdult Social Care Outcomes Toolkit(ASCOT SCT4)日本語版の精神障害当事者における信頼性と妥当性を検証した。精神科デイケア、精神科外来、障害福祉事業所を利用している精神障害当事者397名を対象に、ASCOT SCT4日本語版を妥当性の確立した自記式QOL評価尺度や施設職員による客観的評価尺度と同時に実施し、尺度特性を分析した。
(4)2020年に行われた市区町村全国調査、および公開データを用いた。市区町村(n=1,005)の医療・福祉サービス資源の豊富さに関する変数や、機関同士の連携のしやすさを間接的に示す変数について、市区町村の困難感との関連を順序ロジスティック回帰モデルで分析した。
結果と考察
(1)結果から「市町村にとって成果目標が縁遠い」「市町村等で取り組む活動が十分に指標化されていない」「計画の策定過程における情報・助言の不足」を課題として整理した。
(2)国際潮流として患者やサービス利用者による主観的指標が重視されていた。英国では福祉的ケアを医療サービス分け、サービス利用者とケアラー家族の主観的評価を行う仕組みが構築されていた。「精神障害の有無や程度にかかわらず、誰もが安心して自分らしく暮らすことができる」ことを理念とする「にも包括」の実現のためには、入院期間を短縮していくことに加えて、地域生活の質を評価する仕組みの構築が必要だと考えられた
(3)Adult Social Care Outcomes Toolkit(ASCOT SCT4)日本語版は、精神障害当事者においても、十分な因子妥当性、基準関連妥当性、構成概念妥当性、内的一貫性、再検査信頼性を有することがわかった
(4)市区町村設置の保健所があること、および、にも包括の協議の場を年6回以上開催していることが、市区町村職員が精神保健福祉相談を行う際に直面する困難感が低いことに関連していた。
(2)国際潮流として患者やサービス利用者による主観的指標が重視されていた。英国では福祉的ケアを医療サービス分け、サービス利用者とケアラー家族の主観的評価を行う仕組みが構築されていた。「精神障害の有無や程度にかかわらず、誰もが安心して自分らしく暮らすことができる」ことを理念とする「にも包括」の実現のためには、入院期間を短縮していくことに加えて、地域生活の質を評価する仕組みの構築が必要だと考えられた
(3)Adult Social Care Outcomes Toolkit(ASCOT SCT4)日本語版は、精神障害当事者においても、十分な因子妥当性、基準関連妥当性、構成概念妥当性、内的一貫性、再検査信頼性を有することがわかった
(4)市区町村設置の保健所があること、および、にも包括の協議の場を年6回以上開催していることが、市区町村職員が精神保健福祉相談を行う際に直面する困難感が低いことに関連していた。
結論
実態調査から「市町村にとって成果目標が縁遠い」「市町村等で取り組む活動が十分に指標化されていない」「計画の策定過程における情報・助言の不足」ことが課題抽出された。市区町村職員が精神保健福祉相談を行う際に直面する困難感を中間アウトカムと見立てて自治体の基礎特性や「にも包括」構築に関連する自治体の体制の関連を分析したところ、市区町村設置の保健所がある自治体、「にも包括」の協議の場を年6回以上開催している自治体で困難感が低いという現場感覚と近い結果が得られた。
自治体の現場課題への解決と同時に精神保健医療福祉サービスの目指すべき理想からの逆算する視点も必要である。「にも包括」構築分野に限らず、当事者自身による生活の質をアウトカムとして評価できる体制を支援していくことが望まれる。Adult Social Care Outcomes Toolkitの日本語版が精神障害の当事者においても十分な妥当性と信頼性を有することを示すことができた。
自治体の現場課題への解決と同時に精神保健医療福祉サービスの目指すべき理想からの逆算する視点も必要である。「にも包括」構築分野に限らず、当事者自身による生活の質をアウトカムとして評価できる体制を支援していくことが望まれる。Adult Social Care Outcomes Toolkitの日本語版が精神障害の当事者においても十分な妥当性と信頼性を有することを示すことができた。
公開日・更新日
公開日
2024-08-02
更新日
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