文献情報
文献番号
202317032A
報告書区分
総括
研究課題名
就労定着支援の質の向上に向けたマニュアルの開発のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23GC1010
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
山口 明乙香(山口 明日香)(高松大学 発達科学部子ども発達学科)
研究分担者(所属機関)
- 八重田 淳(筑波大学 人間系)
- 島村 聡(沖縄大学人文学部福祉文化学科)
- 前原 和明(秋田大学大学院 教育学研究科)
- 若林 功(常磐大学 人間科学部)
- 野崎 智仁(国際医療福祉大学 保健医療学部作業療法学科)
- 縄岡 好晴(大妻女子大学人間関係学部)
- 藤川 真由(東北大学 病院てんかん科)
- 清野 絵(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所・障害福祉研究部)
- 池田 浩之(兵庫教育大学 人間発達教育専攻 臨床心理学コース)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
7,903,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、企業等における実態把握、就労系障害福祉サービス事業所、相談支援事業所等の就労定着支援に関わる事業所の現状把握と課題整理、発達障害、精神障害等の多様な障害特性別の支援ノウハウの精査、支援効果に関する情報を収集する。これらの結果を基に、支援期間の終了後の安定した就労生活を実現するために、地域の実情や本人の生活環境や生活面も含めた課題の違い、 企業のタイプの組み合わせに応じた質の高い就労定着支援の提供に資する支援マニュアルを作成し普及する。またこれらの支援を提供できる人材の専門性向上の機会としてオンラインセミナー等の実施を行う。
研究方法
本研究は、就労系障害福祉サービス事業所における質の高い就労定着支援の推進するための支援マニュアルの開発を目的とする。具体的には、「(1)研究Ⅰ:就労定着支援に関連する事業所の現状・課題把握」、「(Ⅱ)研究Ⅱ:当事者からみた就労定着支援の現状把握」、「(Ⅲ)研究Ⅲ:企業からみる現状・課題把握」、「(Ⅳ)研究Ⅳ:障害特性からの整理とポイント」「(Ⅴ)研究:就労定着支援の好事例の収集及び分析」「(Ⅵ)研究:(支援マニュアル作成とオンライン研修の実施】の6つの研究を計画し、令和5年度は、研究Ⅰから研究Ⅴを実施した。
結果と考察
就労定着支援事業所の全国の事業所設置状況は,都道府県によってばらつきがあり,都市部の地域ほど事業所開所率が多い現状が確認された。また地方部地域では,4カ所程度しか県下に定着支援事業所が開所されていない実態があった。また1事業所の利用者数についても,都道府県でばらつきがあり,企業就労後の就労定着支援事業の利用についても,地域間格差があることが伺えるデータが明らかになった。2024年1月30日にオンラインセミナー「障害のある人の質の高い就労生活を実現するための就労定着支援セミナー」を実施し,就労定着支援に関わる関係者1039名の参加があり,就労定着支援の現状及び課題に対する情報収集が可能になった。就労定着支援事業所の支援過程で生じやすい課題を整理した。セミナー参加者の認識する課題としては,「利用者への就業面の支援提供に関する課題(17.2%」」が最も多く,次いで「企業との連携に関する課題(15.8%)」,「利用者の生活面の支援提供に関する課題(12.3%)」という結果であった。またこれらの量的データに加え,就労定着支援事業所職員267名の自由記述の定性分析,全国の定着支援事業所6カ所のヒアリング調査の結果から就労定着支援サービス終了までの過程で生じやすい課題について体系的に整理できた。
結論
令和5年度の成果は、先行研究の整理から、就労定着支援の実態として、支援開始時と支援終了期間までの最長3年間の支援期間において、支援内容の明確な変動はないことが確認された。具体的な支援内容は就業面の支援と企業との連携、生活面の支援が主な支援内容として実施されていた。また支援実態では、就業面の支援の方が生活面の支援よりも重要視されている傾向にあることが確認された。令和5年経営実態調査の結果より、令和4年度決算における事業所収益差は9.2%であり事業所経営状況は、安定していることが確認された。就労定着支援事業所の好事例要素のキーワードとしては「安定就業、キャリアアップ、充実した就業生活、社会人としての成長」などが考えられることが明らかになった(FVP,2023)。障害種別毎の特性では、支援者のヒアリング調査結果からは、その特性別に留意しているポイントは異なる実態が明らかとなった。
障害特性別の就労定着支援の課題では,精神障害者の1年間の職場定着率は50%を下回っており,職場定着の課題が大きいことが明らかになっている(Nivr,2017)。就労定着支援の利用者の約60%は精神障害区分の利用者であり,その全体の約40%が30歳未満である実態がある。精神障害者の支援ポイントとしては,「柔軟な職務管理・雇用管理」,「慢性的不安感への理解と対応」,「精神障害の周囲の理解」,「自己理解と障害受容」といった点があげられた。
障害特性別の就労定着支援の課題では,精神障害者の1年間の職場定着率は50%を下回っており,職場定着の課題が大きいことが明らかになっている(Nivr,2017)。就労定着支援の利用者の約60%は精神障害区分の利用者であり,その全体の約40%が30歳未満である実態がある。精神障害者の支援ポイントとしては,「柔軟な職務管理・雇用管理」,「慢性的不安感への理解と対応」,「精神障害の周囲の理解」,「自己理解と障害受容」といった点があげられた。
公開日・更新日
公開日
2024-05-31
更新日
-