アプリを併用した就労アセスメントの専門性向上のための研修の開発についての研究

文献情報

文献番号
202317031A
報告書区分
総括
研究課題名
アプリを併用した就労アセスメントの専門性向上のための研修の開発についての研究
課題番号
23GC1009
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
丸谷 美紀(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 江口 尚(産業医科大学産業生態科学研究所)
  • 臼井 千恵(順天堂大学医学部精神医学教室)
  • 川口 孝泰(医療創生大学国際看護学部)
  • 高井 ゆかり(群馬県立県民健康科学 看護学部)
  • 川尻 洋美(田所 洋美)(群馬大学医学部附属病院 患者支援センター)
  • 松繁 卓哉(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
  • 湯川 慶子(国立保健医療科学院 政策技術評価研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
12,496,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、まず、熟練者の就労アセスメントスキルを解明し、それらを反映した〈研修カリキュラムとシラバス〉と〈視覚教材〉を制作する。さらに、障害者本人の状態の波と支援環境を突合させて経過をモニタリングし、就労の阻害要因や促進要因を可視化するための〈就労アセスメントアプリ〉を制作する。これら2つの目的を関連させながら研究を行い[就労アセスメント研修]パッケージを最終成果物として開発することである。
 令和5年度は、アセスメントに関する研修ニーズ、及び熟練者の就労アセスメントスキルを解明し、さらに〈就労アセスメントアプリ〉を基本設計することを目的とした。
研究方法
次の7つの方法で進めた。
1.研修実態と希望に関する研究:就労アセスメントを実施する支援者に、研究受講経験、人材育成上の課題、希望する研修等について聞き取り調査した。
2.支援者のスキル抽出:熟練者の就労アセスメントスキルを解明するために、実務経験5年以上、かつ「障害者本人の状態の波と支援環境を調整し、本人の能力を後押しする適切な就労の選択支援」ができている支援者に、アセスメントで重視している事柄等について、聞き取り調査した。
3. 障害者への聞き取り調査:就労支援を受けて就労している障害者に、有益であった/就労に役に立ったと感じている支援の内容について詳しくたずねた。
4.質問紙調査
 支援者への聞き取り調査から就労アセスメントスキルの質問項目を作成し、全国の就労移行支援事業所、障害者就業・生活支援センター、地域障害者職業センターに質問紙調査を行った。
5. 文献からの〈就労アセスメントアプリ〉入力項目整理:既存のアセスメントツール、及び就労支援に関する文献から、モニタリングして可視化が必要な項目を選択し、分類整理した。
6. 〈就労アセスメントアプリ〉入力項目候補の妥当性確認:就労アセスメントを実施する支援者、及び障害者に〈就労アセスメントアプリ〉入力項目について聞き取り調査した。
7.海外視察: PacRim Conferenceに参加し、さらにハワイ大学で情報収集を行った。
(倫理面への配慮)国立保健医療科学院倫理審査委員会の承認を得た(承認番号NIPH-IBRA♯23002 NIPH-IBRA♯23005  NIPH-IBRA♯23013)。
結果と考察
1.研修 実態と希望に関する研究
 アセスメント全体プロセス、本人の状況や支援を可視化する方法、地域や社会情勢を考慮した就労支援、支援者の内省する力を高める研修等の希望が得られた。
2.支援者のスキル抽出
[ミクロ:本人・家族][メゾ:支援者自身・就労先][マクロ:地域・自治体]のレベル毎のスキル、各レベルのかみ合わせを見立てるスキル、見立ての手段のスキル、の3種のスキルが得られた。これらは、本人の自分らしく責任を持つ感覚「本来感」を中核としていると考える。
3. 障害者への聞き取り調査
 「個々の特性の理解に基づいた支援」「就労へ向けての自信につながる実習」「就職活動に直結したトレーニング」「共感」が抽出された。
4.質問紙調査
「障害者就業・生活支援センターへの所属」、経験10年以上、精神障害者の経験が「地域のリソース有効活用」と有意に関連した。
5.文献からの〈就労アセスメントアプリ〉入力項目整理
 「就労に関係する生活行動」「就労生活に影響する心身の症状」「就労生活や症状に影響し得る家庭環境・就労環境」に分類された。
6. 〈就労アセスメントアプリ〉入力項目候補の妥当性確認
「自分のため」と感じられること、その人なりの評価基準を決める等の意見が得られた。本アプリの入力項目の構造は、バイオ・サイコ・ソーシャル・モデルの考え方と合致し、また本アプリの目的から〈就労生活モニタリングアプリ〉という名称が妥当と考える。
7.海外視察
 Conferenceでは本研究の成果の一部について妥当性が確認された。また、様々なセクターで、障害者が支援を受け活躍できる環境を促進する方法や、障害者に対する公平な機会を確保すること、雇用主のエンゲージメントについて情報を得た。さらにハワイ大学では、障害を持つ学生のセルフアドボケート、自己決定に焦点を当てたプログラムを聞き取った。
結論
今後は、〈研修カリキュラムとシラバス〉と〈視覚教材〉制作に向けて、模擬事例を用いたアセスメント演習(内省を含む)、アプリの活用方法、福祉分野の地域診断に着目した研修設計を検討する。また、障害者本人の状態の波と支援環境を突合させて経過をモニタリングし、就労の阻害要因や促進要因を可視化するための〈就労アセスメントアプリ(就労生活モニタリングアプリ)〉を試用し精錬していく。

公開日・更新日

公開日
2024-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202317031Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
12,496,000円
(2)補助金確定額
12,496,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,885,664円
人件費・謝金 967,701円
旅費 1,835,393円
その他 7,807,397円
間接経費 0円
合計 12,496,155円

備考

備考
能登地震等の影響を受け、質問紙調査の回収率に低迷が見られ、回収期間を延長し、督促はがき送付を再委託したため。

公開日・更新日

公開日
2024-05-30
更新日
-