強度行動障害の客観的なアセスメントパッケージの実用化に向けた研究

文献情報

文献番号
202317027A
報告書区分
総括
研究課題名
強度行動障害の客観的なアセスメントパッケージの実用化に向けた研究
課題番号
23GC1005
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
井上 雅彦(鳥取大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 福崎 俊貴(鳥取大学大学院 医学系研究科臨床心理学講座)
  • 日詰 正文(独立行政法人 国立重度知的障害者総合施設のぞみの園 総務企画局研究部)
  • 高橋 和俊(社会福祉法人侑愛会)
  • 稲田 尚子(帝京大学文学部心理学部)
  • 會田 千重(国立病院機構 肥前精神医療センター 統括診療部)
  • 下山 真衣(信州大学 教育学部)
  • 倉光 晃子(西南学院大学 人間科学部)
  • 松田 壮一郎(筑波大学 人間系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
7,461,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、強度行動障害に関するスクリーニング手法の確立(研究1)として行動関連項目の信頼性・妥当性検証を行い、支援計画の立案のための現場で活用できる機能的アセスメント手法の開発(研究2)、支援効果の評価手法の確立(研究3)として複数名の記録を統合活用できる行動記録アプリ(Observation 3)の開発(1~2年目)により総合的・実用的観点から、強度行動障害の状態像を客観的に評価するアセスメントパッケージの開発を目的とする。
研究方法
強度行動障害に関するスクリーニング手法の確立(研究1)強度行動障害に対する福祉的支援の条件となる障害支援区分認定の行動関連項目について、スクリーニング手法の検証のため「行動関連項目」の信頼性(評定者間信頼性、再検査信頼性、内的整合性)と妥当性(BPI-S、ABC-J、強度行動障害判定基準表)を検証した。
支援計画の立案のための現場で活用できる機能的アセスメント手法の開発(研究2) 機能的アセスメントの全体概念を整理するとともに機能査定面接の日本語版を翻訳した。また日本語版FASTを開発し、信頼性(評定者間・再テスト)と妥当性(行動観察法)を検証した。機能分析法については医療機関でTBFAを実施し、その応用可能性について参加者(医師を含む20名)にアンケート調査を実施した。
支援効果の評価手法の確立(研究3)
行動観察アプリケーションについて、β版とマニュアル動画を作成・公開し、専門家によりレビューを行った。レビューはメンタルヘルスアプリユーザービリティ質問票(The mHealth App Usability Questionnaire; MAUQ, Zhou et
al., 2019)に基づき,21項目の質問項目を日本語訳した上で改変し,各項目について,7件法での回答を求めた。加えて,自由記述により,Observationsのユーザビリティについての回答も求めた。
結果と考察
研究1では行動関連項目とBPI-S、ABC-Ⅱ、強度行動障害判定基準表のスピアマンの順位相関係数を算出した結果、BPI-Sの頻度の合計得点は強い正の相関が認められ、ABC-Ⅱの興奮性、社会的ひきこもり、常同行動、多動/不服従、強度行動障害判定基準表の合計得点で中程度の正の相関が認められた。また信頼性に関する指標は全体的に良好な結果を示した。一方で、収束的妥当性については各変数において相関関係にばらつきが認められた。
研究2では、機能的アセスメントの全体概念を整理するとともに機能査定面接の日本語版日本版を翻訳した。また質問紙法として日本語版FASTを開発し、信頼性(評定者間・再テスト)と妥当性(行動観察法)を検証し、高い信頼性と妥当性を得た。機能分析法については医療機関でTBFAを実施し、参加者(医師を含む20名)にアンケート調査を実施した。FAの実施は医療スタッフの行動障害の理解を深め、意欲を高めるという結果が得られたが、医療でのスーパービジョンのシステムを整えていく必要性が示唆された。
研究3についてはユーザビリティ検証のアプリの有用性に関する質問項目については,ポジティブな反応が得られたが、使用しやすさに関する質問項目、及びインタフェースと満足度に関する質問項目に関してはネガティブな反応を含んでいた。自由記述欄のコメントからは,より簡便なデータ共有機能についての要望が認められた。
結論
行動関連項目については高い評定者間一致率が得られたが
、各項目でみると値が安定しやすい項目と評価者によって価が異なりやすい項目が混在していることが示された。日本語版FAST、Observationsなどの評価ツールも開発され、信頼性や妥当性の検証が行われ実用性に足る結果が得られた。

公開日・更新日

公開日
2024-08-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-08-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202317027Z