思春期のひきこもりをもたらす精神科疾患の実態把握と精神医学的治療・援助システムの構築に関する研究

文献情報

文献番号
200935010A
報告書区分
総括
研究課題名
思春期のひきこもりをもたらす精神科疾患の実態把握と精神医学的治療・援助システムの構築に関する研究
課題番号
H19-こころ・一般-010
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
齊藤 万比古(国立国際医療センター国府台病院 第二病棟部)
研究分担者(所属機関)
  • 中島豊爾(岡山県精神科医療センター)
  • 伊藤順一郎(国立精神・神経センター精神保健研究所)
  • 皆川邦直(法政大学現代福祉学部)
  • 弘中正美(明治大学文学部・明治大学心理臨床センター)
  • 近藤直司(山梨県精神保健福祉センター)
  • 水田一郎(神戸女学院大学)
  • 奥村雄介(府中刑務所)
  • 清田晃生(大分大学医学部脳・神経機能統御講座)
  • 渡部京太(国立国際医療センター国府台病院)
  • 原田豊(鳥取県精神保健福祉センター)
  • 斎藤環(爽風会佐々木病院)
  • 堀口逸子(順天堂大学医学部公衆衛生学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
10,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は10代を中心とする「思春期ひきこもり」の実態把握とそれに基づく包括的・総合的支援の指針を作製することを目的として実施された。
研究方法
思春期ひきこもりの実態把握と治療援助システムの開発ならびに標準化に関する諸分担研究の成果と、すでに実施した各種支援機関の活動状況に関する全国調査の結果を組み込んだ「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン(案)」の作成に21年度は班をあげて取り組んだ。
結果と考察
(1)21年度の研究成果の第一は「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」を完成させたことである。ひきこもりの支援対象者の大半は精神障害のいずれかを持つものであり、支援システムには精神医療あるいは精神保健の観点を必ず組み込んで行かねばならないことなどの実践的な指針を明らかにした。
(2)分担研究の成果の主なものは以下のとおりである。第一は、全国5精神保健福祉センターのひきこもり相談における精神科医が当事者との評価面接を通じて、事例の大半に広汎性発達障害、不安障害、パーソナリティ障害、気分障害、統合失調症などの診断が可能であることを見出した。第二に、ひきこもり状態が遷延し、かつ通院できない子どもに対して児童精神科医、心理士、精神保健福祉士、看護師等で構成された数人のチームによるアウトリーチ型支援を実施し、本人の活動範囲や他者との接触頻度、家族の精神的健康度等における改善を大半の事例で得ることができた。第三に、大学でのひきこもり支援の実情の調査から、先進的な試みを実施中の大学における支援システムの全体像を得ることができた。第四に急性期精神科治療の現場にも若い年齢層を中心にひきこもりを示している子どもや青年が受診することを明らかにした。第五に、ひきこもりの就労支援に県を挙げて取り組んだ鳥取県の試みが検証され、地域での機関間連携が就労支援に必須であることを明らかにした。その他の成果については省略する。
結論
ひきこもりは子どもから成人までの広い年代で生じるメンタルヘルス上の問題であり、児童思春期の不登校段階からひきこもりを視野に入れた、教育、福祉、精神保健、医療、就労支援など多岐にわたる総合的支援を必要とする重要な社会的課題でもある。本研究が成果として得たひきこもり支援の具体的なあり方を示すガイドラインは、各地での支援活動の設置と展開を促す強力な推進力となることが期待されている。

公開日・更新日

公開日
2010-06-15
更新日
-

文献情報

文献番号
200935010B
報告書区分
総合
研究課題名
思春期のひきこもりをもたらす精神科疾患の実態把握と精神医学的治療・援助システムの構築に関する研究
課題番号
H19-こころ・一般-010
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
齊藤 万比古(国立国際医療センター国府台病院 第二病棟部)
研究分担者(所属機関)
  • 中島豊爾(岡山県精神科医療センター)
  • 伊藤順一郎(国立精神・神経センター精神保健研究所)
  • 皆川邦直(法政大学現代福祉学部)
  • 弘中正美(明治大学文学部・明治大学心理臨床センター)
  • 近藤直司(山梨県精神保健福祉センター・山梨県中央児童相談所)
  • 水田一郎(神戸女学院大学人間科学部)
  • 奥村雄介(府中刑務所)
  • 清田晃生(大分大学医学部脳・神経機能統御講座)
  • 渡部京太(国立国際医療センター児童精神科)
  • 原田豊(鳥取県精神保健福祉センター)
  • 斎藤環(爽風会佐々木病院)
  • 堀口逸子(順天堂大学医学部公衆衛生学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は10代を中心とする「思春期ひきこもり」の実態把握とそれに基づく包括的・総合的支援の指針を作製することを目的として実施された。
研究方法
思春期ひきこもりの実態把握と治療援助システムの開発ならびに標準化に関する諸分担研究を3年間にわたって実施するとともに、初年度には各種支援機関の活動状況に関する全国調査、2年度目には「ドラフト版ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」の作成に研究班をあげて取り組み、最終年度にガイドライン公表版の製作に取り組んだ。
結果と考察
(1)本研究の第一の成果は「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」で、ひきこもりの支援の基盤は地域の連携ネットワークにあること、支援システムには精神医療あるいは精神保健の観点を必ず組み込んで行かねばならないこと、当事者の全体像を評価するために多軸評価法が有効であることなどを示した実践的指針となった。
(2)各分担研究の成果の主なものを挙げると、精神科医による当事者との評価面接を通じて、事例の大半が精神障害の診断可能であること、特に広汎性発達障害、不安障害、パーソナリティ障害が目立ち、統合失調症も混じっていることを明らかにしたこと、ひきこもり状態が遷延し、かつ通院できない子どもに対して児童精神科医、心理士、精神保健福祉士、看護師等で構成された数人のチームによるアウトリーチ型支援を実施し、良好な成果を上げたこと、大学生の不登校も多く存在し、大学もそれに対する対応が必要であること、高校生の不登校には義務教育での不登校経験者が多いこと、急性期精神科治療の現場でも若い年齢層を中心にひきこもりを示している子どもや青年が受診していること、就労支援にも地域ネットワークが有益であることを明らかにしたことなどである。その他にも多くの貴重な結果を得て、これらをガイドラインに組み込んだ。
結論
ひきこもりは子どもから成人までの広い年代で生じるメンタルヘルス上の問題であり、児童思春期の不登校段階からひきこもりを視野に入れた教育、福祉、精神保健、医療などの諸機関の支援や就労支援など多岐にわたる総合的支援を一貫して提供しなければならない重要な社会的課題でもある。本研究が成果として得たひきこもり支援の具体的なあり方を示すガイドラインは、各地での支援活動の設置と展開を促す強力な推進力となることが期待されている。

公開日・更新日

公開日
2010-06-15
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200935010C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究班では、弘中分担研究者が中学生・高校生に見出される不登校・引きこもりの実態把握についての検討から高校生のひきこもりの実態とそのリスクファクターを明らかにし、奥村分担研究者は反社会的行動との関連から物理空間活動と情報空間活動の2パラメーターによるひきこもりの評価を行う新たな類型化に取り組み、近藤分担研究者は全国精神保健福祉センターの相談事例の精神医学的診断を集計し、大半が何らかの精神障害と診断されたなどの学術的にも価値ある成果を上げた。
臨床的観点からの成果
中島分担研究者による精神科急性期治療の現場でのひきこもり事例の比率が30歳未満の初診患者の18.6%にあたるとの報告、伊藤分担研究者による児童思春期ひきこもり事例のアウトリーチ型支援の実践報告、水田一郎分担研究者による大学生不登校者の学校を挙げての支援システムの有効性に関する報告、原田分担研究者による鳥取県における就労支援地域連携システムの有効性に関する報告、研究代表者による地域諸機関の連携活動「市川モデル」の実践報告など支援法に関する多数の成果が得られた。
ガイドライン等の開発
本研究班は「思春期ひきこもりに対する評価・支援に関するガイドライン」を作成した。本ガイドラインは発表前から強い関心を寄せられ、完成とともにひきこもり支援に関する新たな指針として厚生労働省よりプレス発表がなされた。現在国立国際医療研究センター国府台病院児童精神科のホームページに掲載され公開中である。(http://www.ncgmkohnodai.go.jp/pdf/jidouseishin/22ncgm_hikikomori.pdf)
その他行政的観点からの成果
本研究班が「思春期ひきこもりに対する評価・支援に関するガイドライン」を作成したことは厚生労働省により平成22年5月19日にプレス発表されており、今後専門支援機関の活動指針として活用されることが期待されている。また、平成22年2月13日開催の公開講座「ひきこもりを考える」の講師として研究代表者が指名されガイドラインについての発表の機会を与えられるなど、内閣府によるひきこもり支援でも注目されている。
その他のインパクト
「ひきこもり支援の新たな展開をめざして」と題した精神・神経科学振興財団との共催シンポジウムを平成21年度研究成果発表会(一般向け)として、平成22年2月19日、日経カンファレンスルームにて開催し、120名参加の予定が、大幅に超過する168名の参加者があった。またすでに雑誌「地域保健」2010年6月号で研究代表者のインタビュー記事と近藤分担研究者の論文が掲載されている。

発表件数

原著論文(和文)
8件
思春期青年期精神医学、精神科治療学、明治大学心理社会学研究等に掲載
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
100件
これらはいずれも本研究班の三年間の研究の成果と呼べる論文であるが、原著と異なりこの研究によることは明記されていない。
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
6件
日本思春期青年期精神医学会、日本精神神経学会、日本児童青年精神医学会などで把握できているだけで6件あり、実際にはさらに多い。
学会発表(国際学会等)
1件
International Congress of The European Society of Child and Adolescent Psychiatry, August, 2007
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」の作成と厚生労働省による指針としてのプレス発表
その他成果(普及・啓発活動)
2件
「ひきこもり支援の新たな展開をめざして」シンポジウム開催、「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライ」を国立国際医療センター国府台病院のホームページに掲載

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
竹村周子 太田智佐子 弘中正美他
中学生・高校生に見出される不登校・ひきこもりの実態把握に関する研究
明治大学心理社会学研究 ,  (4) , 49-59  (2009)
原著論文2
近藤直司
青年期ひきこもり問題の現状-最近の精神医学的知見ンと主な論点について
精神科 , 12 (6) , 453-457  (2008)
原著論文3
近藤直司
ひきこもり
精神科臨床サービス , 9 (4) , 507-511  (2009)
原著論文4
近藤直司 小林真理子 富士宮秀紫他
青年期における広汎性発達障害のひきこもりについて
精神科治療学 , 24 (10) , 1219-1224  (2009)
原著論文5
草野智洋 水田一郎
大学生のひきこもりに関する研究の現状と展望
思春期青年期精神医学 , 18 (1) , 39-52  (2008)
原著論文6
宇佐美政英,前田喜久江,齊藤万比古他
国府台病院児童精神科による不登校・ひきこもり事例に対する地域支援の現状
思春期青年期精神医学 , 19 (2) , 144-154  (2009)
原著論文7
水田一郎 石谷真一、安住伸子
大学における不登校・ひきこもりに対する支援の実態と今後の課題
学生相談研究 , 32 (1) , 23-35  (2011)
原著論文8
井出草平 水田一郎 谷口由利子
ひきこもり状態にある大学生の推定
Campus Health , 48 (2) , 186-191  (2011)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-