文献情報
文献番号
202317024A
報告書区分
総括
研究課題名
脳脊髄液減少症の疫学研究及び客観的診断法に資する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23GC1002
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
荒木 信夫(学校法人埼玉医科大学 医学部脳神経内科)
研究分担者(所属機関)
- 光藤 尚(埼玉医科大学 医学部 脳神経内科)
- 椎橋 実智男(埼玉医科大学 IRセンター)
- 松成 一朗(財団法人 先端医学薬学研究センター 臨床研究開発部)
- 山内 秀雄(埼玉医科大学 医学部小児科)
- 橋本 洋一郎(済生会熊本病院 脳卒中センター)
- 三牧 正和(帝京大学 医学部小児科学講座)
- 村松 一洋(自治医科大学 医学部 小児科学)
- 橋本 康弘(福島県立医科大学 医学部脳神経外科学講座)
- 山中 岳(東京医科大学 小児科・思春期科学分野)
- 下村 英毅(兵庫医科大学 医学部小児科学教室)
- 大澤 威一郎(埼玉医科大学病院 放射線科)
- 高橋 浩一(国際医療福祉大学 臨床医学研究センター)
- 鹿戸 将史(山形大学 医学部)
- 齋藤 千景(埼玉大学 教育学部)
- 中川 紀充(明舞中央病院 脳神経外科)
- 三浦 真弘(大分大学 医学部)
- 山元 敏正(埼玉医科大学 医学部脳神経内科)
- 里 龍晴(長崎大学病院 小児科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
6,154,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
小児・思春期を中心とした脳脊髄液減少症の疫学と病態の特徴を明らかにし、学校で生じる脳脊髄液減少症の対処法と予防法の確立を目的とする。
研究方法
[小児における脳脊髄液漏出症の疫学調査]
特発性低髄液圧症は海外の疫学データでは有病率は5万人に1人とされること、そして、個別同意のアンケート形式の調査を希望しない被検者のデータをカウントできないことから十分な検討ができないことを踏まえ、養護教諭を対象として事例収集という形式で学校現場での脳脊髄液減少症の実態調査を行う。これまでのAMEDの研究においては、小児の脳脊髄液減少症患者の偏在が指摘されたことから、小児の脳脊髄液減少症患者が多く集まっている明舞中央病院や埼玉医科大学病院、尾道市立市民病院を含む医療圏と成人の脳脊髄液減少症患者の診療を行っている熊本市民病院や姫路赤十字病院を含む医療圏の小学校・中学校・高校の養護教諭を対象とした学校での脳脊髄液減少症の発生状況を明らかにするとともに医療機関への受診の状況を把握する。初年度においては文部科学省の所管する独立行政法人スポーツ振興センターが公表している災害共済給付事業のデータベースをもとに令和1年度~同4年度における、外傷により発症した脳脊髄液減少症の児童・生徒の実数の把握を行った。
[脳脊髄液減少症のバイオマーカーの確立]
自治医科大学(村松一洋)、埼玉医科大学(山内秀雄)、帝京大学(三牧正和)、東京医科大学(山中 岳・呉 宗憲)、兵庫医科大学(下村英毅)、長崎大学(里 龍晴)の各病院の小児科で神経疾患が疑われて髄液検査を含む精査をし、異常を認めたかった症例ならびに睡眠障害と診断された残余検体を用いて髄液中の脳型トランスフェリン値を測定する。これらのマーカーの小児の基準値を確立し、その診断の感度・特異度を決定する。従来、髄液漏出マーカーの変化があるにもかかわらず、頭痛を示さない症例が認められたので、その検討も併せて行う。
[小児の画像診断法の確立]
明舞中央病院(中川紀充)、尾道市立市民病院(土本正治・守山英二)他で後方視的に髄液漏出を認めた小児例のMRI画像を解析し、その画像所見の特徴を検討する(山形大学 鹿戸将史)。現時点で対象となるのは40例程度と推定される。
[小児の病態]
小児の脳脊髄液減少症の病態は成人のそれとは異なることが指摘されているが、その特徴を明らかにすべく硬膜下血腫の病態と仙骨を含む骨盤の成長に関して、山王病院(高橋浩一)の手術検体を用いて病理学的に検討(大分大学 三浦真弘)するとともに、頭部CTや脳MRIを用いた画像上の特徴を検討(埼玉医科大学 松成一朗・大澤威一郎)するとともに、文献的検討を行う。
特発性低髄液圧症は海外の疫学データでは有病率は5万人に1人とされること、そして、個別同意のアンケート形式の調査を希望しない被検者のデータをカウントできないことから十分な検討ができないことを踏まえ、養護教諭を対象として事例収集という形式で学校現場での脳脊髄液減少症の実態調査を行う。これまでのAMEDの研究においては、小児の脳脊髄液減少症患者の偏在が指摘されたことから、小児の脳脊髄液減少症患者が多く集まっている明舞中央病院や埼玉医科大学病院、尾道市立市民病院を含む医療圏と成人の脳脊髄液減少症患者の診療を行っている熊本市民病院や姫路赤十字病院を含む医療圏の小学校・中学校・高校の養護教諭を対象とした学校での脳脊髄液減少症の発生状況を明らかにするとともに医療機関への受診の状況を把握する。初年度においては文部科学省の所管する独立行政法人スポーツ振興センターが公表している災害共済給付事業のデータベースをもとに令和1年度~同4年度における、外傷により発症した脳脊髄液減少症の児童・生徒の実数の把握を行った。
[脳脊髄液減少症のバイオマーカーの確立]
自治医科大学(村松一洋)、埼玉医科大学(山内秀雄)、帝京大学(三牧正和)、東京医科大学(山中 岳・呉 宗憲)、兵庫医科大学(下村英毅)、長崎大学(里 龍晴)の各病院の小児科で神経疾患が疑われて髄液検査を含む精査をし、異常を認めたかった症例ならびに睡眠障害と診断された残余検体を用いて髄液中の脳型トランスフェリン値を測定する。これらのマーカーの小児の基準値を確立し、その診断の感度・特異度を決定する。従来、髄液漏出マーカーの変化があるにもかかわらず、頭痛を示さない症例が認められたので、その検討も併せて行う。
[小児の画像診断法の確立]
明舞中央病院(中川紀充)、尾道市立市民病院(土本正治・守山英二)他で後方視的に髄液漏出を認めた小児例のMRI画像を解析し、その画像所見の特徴を検討する(山形大学 鹿戸将史)。現時点で対象となるのは40例程度と推定される。
[小児の病態]
小児の脳脊髄液減少症の病態は成人のそれとは異なることが指摘されているが、その特徴を明らかにすべく硬膜下血腫の病態と仙骨を含む骨盤の成長に関して、山王病院(高橋浩一)の手術検体を用いて病理学的に検討(大分大学 三浦真弘)するとともに、頭部CTや脳MRIを用いた画像上の特徴を検討(埼玉医科大学 松成一朗・大澤威一郎)するとともに、文献的検討を行う。
結果と考察
[小児における脳脊髄液漏出症の疫学調査]
独立行政法人スポーツ振興センターが公表している災害共済給付事業のデータベースをもとに令和1年度~同4年度における、外傷により発症した脳脊髄液減少症の児童・生徒の実数は2件のみ、脳脊髄液減少症が否定できないものは3件であった。学校現場における脳脊髄液減少症の発症は少ないと考えられるが、データベースを基にした検討であり、調査には限界があることも考えられた。
[脳脊髄液減少症のバイオマーカーの確立]
埼玉医科大学にて中央一括審査として倫理審査を通過したが、分担施設の中には、改めて施設内で倫理審査の受審が必要な施設もあり、検体の収集には至らなかった。
[小児の画像診断法の確立]
鹿戸らにより髄液漏出所見としてのiFDSSに関する論文の投稿に至ったが、2024年3月の時点ではアクセプトに至らなかった。ブラッドパッチなどの治療介入前後での比較による評価を追加する必要があると考えられた。大澤らはLeakの検出能に関して、2D と3D MRミエログラフィーを比較した結果、3Dの方が、検出能が高いことを明らかにした。
[小児の病態]
高橋より提出された検体を分析した結果、小児においては、いわゆる特発性低髄液圧症候群と健常コントロール群とは異なる一群があることが示唆された。小児の画像診断法とも連携して病態と画像所見の検討を行う必要がある。
独立行政法人スポーツ振興センターが公表している災害共済給付事業のデータベースをもとに令和1年度~同4年度における、外傷により発症した脳脊髄液減少症の児童・生徒の実数は2件のみ、脳脊髄液減少症が否定できないものは3件であった。学校現場における脳脊髄液減少症の発症は少ないと考えられるが、データベースを基にした検討であり、調査には限界があることも考えられた。
[脳脊髄液減少症のバイオマーカーの確立]
埼玉医科大学にて中央一括審査として倫理審査を通過したが、分担施設の中には、改めて施設内で倫理審査の受審が必要な施設もあり、検体の収集には至らなかった。
[小児の画像診断法の確立]
鹿戸らにより髄液漏出所見としてのiFDSSに関する論文の投稿に至ったが、2024年3月の時点ではアクセプトに至らなかった。ブラッドパッチなどの治療介入前後での比較による評価を追加する必要があると考えられた。大澤らはLeakの検出能に関して、2D と3D MRミエログラフィーを比較した結果、3Dの方が、検出能が高いことを明らかにした。
[小児の病態]
高橋より提出された検体を分析した結果、小児においては、いわゆる特発性低髄液圧症候群と健常コントロール群とは異なる一群があることが示唆された。小児の画像診断法とも連携して病態と画像所見の検討を行う必要がある。
結論
【結論】
疫学調査に関しては、初年度でもあり、公開されたデータをもとに学校で発生した外傷性脳脊髄液減少症の頻度を明らかにしたが、海外における特発性脳脊髄液減少症の頻度と同様に少ないことが予想された。他方、成人の脳脊髄液減少と異なり、小児例では、健常コントロール群とも特発性低髄液圧症候群群とも異なる一群が存在する可能性があり、その新たな一群に関して、髄液中の脳型トランスフェリンをはじめとするバイオマーカーとMRIに代表される画像所見との関連を更に検討する必要がある。
疫学調査に関しては、初年度でもあり、公開されたデータをもとに学校で発生した外傷性脳脊髄液減少症の頻度を明らかにしたが、海外における特発性脳脊髄液減少症の頻度と同様に少ないことが予想された。他方、成人の脳脊髄液減少と異なり、小児例では、健常コントロール群とも特発性低髄液圧症候群群とも異なる一群が存在する可能性があり、その新たな一群に関して、髄液中の脳型トランスフェリンをはじめとするバイオマーカーとMRIに代表される画像所見との関連を更に検討する必要がある。
公開日・更新日
公開日
2025-07-03
更新日
-