文献情報
文献番号
202317023A
報告書区分
総括
研究課題名
難聴児の手話療育体制整備に関する研究
課題番号
23GC1001
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
今橋 久美子(藤田 久美子)(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所)
研究分担者(所属機関)
- 高嶋 由布子(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所 障害福祉研究部)
- 阿部 敬信(九州産業大学 人間科学部)
- 伊藤 理絵(常葉大学 保育学部)
- 前川 和美(関西学院大学 手話言語研究センター)
- 松﨑 丈(国立大学法人宮城教育大学 教育学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
9,813,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
聴覚障害児・者が用いる言語には、音声言語と手話言語があるが、いずれの習得にも介入時期が大きく影響することが知られている。これまで音声言語の習得については、早期から医学的な介入が行われており、現状では重複障害が無い場合、ほとんどの子どもが聴覚を活用した音声言語習得のための訓練を受けている。しかしながら、補聴のみでは、子ども同士のやりとりや集団生活における偶発的なできごとなどから、場に応じた適切なことばの使い方を学ぶ機会に乏しくなる。こうした状況を補完するには、手話が非常に有用であるが、手話言語の習得については介入や支援が殆ど行われていない。
このような音声言語の習得のみに一本化した早期介入については、(1)聴覚活用の限界や、障害の重複による言語発達遅滞、(2)親子の意思疎通の不全感、(3)長期的な語用論的発達や社会性認知の発達への影響などの問題が指摘されている。これらの問題を解決するために、音声と手話を相補的に活用できるような言語習得システムの構築が求められている。
そこで本研究は、聴覚障害児が、早期から手話言語を習得できる体制整備を目指し、それに必要な事項を明らかにすることを目的とし、初年度は、国内外における手話療育の担い手の現状及び育成、療育の実態把握、及び手話療育に必要な条件について整理を行った。
このような音声言語の習得のみに一本化した早期介入については、(1)聴覚活用の限界や、障害の重複による言語発達遅滞、(2)親子の意思疎通の不全感、(3)長期的な語用論的発達や社会性認知の発達への影響などの問題が指摘されている。これらの問題を解決するために、音声と手話を相補的に活用できるような言語習得システムの構築が求められている。
そこで本研究は、聴覚障害児が、早期から手話言語を習得できる体制整備を目指し、それに必要な事項を明らかにすることを目的とし、初年度は、国内外における手話療育の担い手の現状及び育成、療育の実態把握、及び手話療育に必要な条件について整理を行った。
研究方法
1. 国内及び海外の調査を行う。
2. 知見を整理し、養育者と支援者(保育園、言語聴覚士、耳鼻咽喉科医、ろう学校教諭等)に、WEBサイトや動画を用いて、乳幼児の発達全体を踏まえた手話とコミュニケーション発達についての情報を提供する。
3. 支援者への研修プログラムを試行するとともに地域交流の機会を設ける。
4. 将来的に、児童発達支援事業等の枠組みを用いて、難聴児の手話でのコミュニケーションを促進する支援を提供できるよう、あり方を提言する。
2. 知見を整理し、養育者と支援者(保育園、言語聴覚士、耳鼻咽喉科医、ろう学校教諭等)に、WEBサイトや動画を用いて、乳幼児の発達全体を踏まえた手話とコミュニケーション発達についての情報を提供する。
3. 支援者への研修プログラムを試行するとともに地域交流の機会を設ける。
4. 将来的に、児童発達支援事業等の枠組みを用いて、難聴児の手話でのコミュニケーションを促進する支援を提供できるよう、あり方を提言する。
結果と考察
国連障害者の権利条約第24条「教育」には、「(e)学問的及び社会的な発達(academic and social development)を最大にする環境において、完全な包容という目標に合致する効果的で個別化された支援措置がとられること」とあり、近年、実生活でのやりとりをベースにしたアクティブラーニングが着目されてきている。こうした状況の中、今後は手段を最大限に活用しながら、自分で考え、発信し、他者の意見を聞く力と、「社会性」や「コミュニケーション能力」が育まれるよう、周囲とのやりとりを充実させる取り組みが求められる。また、保護者の選択に関わる問題点も掘り下げ、難聴児本人が成長・発達の中で自然に選択して使い分けていけるような制度設計が必要と考える。
本研究の結果、手話療育体制の構築に向けて、次の3者を対象とした研修が有用と考える。
1) 当事者(ろう・難聴児)
2) 親・家族(聞こえる親、難聴(手話を余り使わない)の親、手話を使うろう者の親)
3) 支援者(耳鼻咽喉科医、産婦人科医、言語聴覚士、保健師、児童発達支援員、聴覚特別支援学校教職員、地域の保育園職員・幼稚園教職員)
また、それぞれへの早期からの支援としては、次の3点が考えられる。
1) ろう・難聴児に手話で指導する
児童発達支援事業所等、特別支援学校で実践例があり、児童発達支援事業で、デフメンターを導入することも有用と考える。
また、手話指導にあたる教員自身の手話習得方法についても、別途調査が必要である。
2) 親・家族に手話を教える
ろう学校において、ボランティアやPTA主催で行っている実践例があるが、マンパワーや双方の時間・移動を考慮して、今後、オンライン指導・教材開発・テレビ活用等を導入することも有用と考える。同時に、子どもへの関わり方についても学ぶ機会の提供が必要である。
3) 支援者に手話の重要性を伝える
オンラインで学べる教材の活用が有用と考える。
本研究の結果、手話療育体制の構築に向けて、次の3者を対象とした研修が有用と考える。
1) 当事者(ろう・難聴児)
2) 親・家族(聞こえる親、難聴(手話を余り使わない)の親、手話を使うろう者の親)
3) 支援者(耳鼻咽喉科医、産婦人科医、言語聴覚士、保健師、児童発達支援員、聴覚特別支援学校教職員、地域の保育園職員・幼稚園教職員)
また、それぞれへの早期からの支援としては、次の3点が考えられる。
1) ろう・難聴児に手話で指導する
児童発達支援事業所等、特別支援学校で実践例があり、児童発達支援事業で、デフメンターを導入することも有用と考える。
また、手話指導にあたる教員自身の手話習得方法についても、別途調査が必要である。
2) 親・家族に手話を教える
ろう学校において、ボランティアやPTA主催で行っている実践例があるが、マンパワーや双方の時間・移動を考慮して、今後、オンライン指導・教材開発・テレビ活用等を導入することも有用と考える。同時に、子どもへの関わり方についても学ぶ機会の提供が必要である。
3) 支援者に手話の重要性を伝える
オンラインで学べる教材の活用が有用と考える。
結論
初年度の結果を踏まえ、次年度は、引き続き国内外の情報収集を行うとともに、手話療育の情報提供ツール作成に着手する。
公開日・更新日
公開日
2024-06-12
更新日
-