精神医療の質的実態把握と最適化に関する総合研究

文献情報

文献番号
200935008A
報告書区分
総括
研究課題名
精神医療の質的実態把握と最適化に関する総合研究
課題番号
H19-こころ・一般-008
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
伊豫 雅臣(千葉大学大学院医学研究院 精神医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 松原 三郎(医療法人財団松原愛育会松原病院)
  • 佐々木 一(爽風会佐々木病院)
  • 三辺 義雄(金沢大学大学院医学系研究科)
  • 羽間 京子(千葉大学社会精神保健教育研究センター)
  • 岩崎 弥生(千葉大学看護学部)
  • 小宮山 徳太郎(医療法人栗山会飯田病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
22,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、精神障害者の入院精神医療から地域精神医療への転換に関するモデルプラン策定を目的としている。なお、本研究は平成19年度に開始され、今年度が最終年度である。
研究方法
精神科病院における医療実態の把握(松原班)、特定機能病院及び精神科急性期病棟における統合失調症患者の早期退院に関する実証的研究(三邉班)、精神科看護の効果の実証に関する研究(岩崎班)、入院精神医療から地域精神医療への転換に関する研究(小宮山班)、地域精神保健福祉サービスの拡充に関する研究(羽間班)、精神医療の提供実態に関する国際比較研究(佐々木班)を行うことにより目的を達成することとした。
結果と考察
回復期における高い退院率は入院4ヶ月から1年未満の患者に最も退院支援が行われていることによるということが示された。また、退院準備度評価尺度(DRI)や退院準備状況アセスメントの有用性が実証され、クリニカルパスが退院促進に有効であることが示された。退院に向けての支援は多職種による医療から日常生活、住居、金銭、福祉資源利用など様々なことが必要で患者自身もそれを望んでいた。また、入院から地域への切れ目のないケアが重要であることが改めて明らかとなり。これらを総合的にプログラム化した「地域移行促進プログラム」が作成され、少数例であるが実施され、その有用性が示唆された。さらに退院後1-2週間には短期集中支援が重要であるとともに精神科救急医療の重要性が指摘された。若年者では就労に関する支援を患者自身も期待しており、就労支援の拡大が求められる。グループホームやケアホーム等の住居施設・住居定員は増加してきているが更なる増加の必要性が指摘された。わが国と精神医療福祉状況と類似したベルギーでは病床ごとの機能分化を行い、それが有効に機能していることが報告された。さらに精神科病棟からナーシングホームに転換したものでは、病床の患者一人一回限りの使用とされ、自然と病床が消失していくことも紹介された。
結論
退院促進には、退院準備度評価尺度(DRI)や退院準備状況アセスメントにより患者の退院準備度を評価し、クリニカルパスや地域移行促進プログラムを用いることが有効であり、また入院から地域への切れ目のないケアが重要であるとともに、退院後も多角的な支援が必要であることが示された。住居施設・住居定員は増加してきているが更なる増加の必要であることも指摘された。

公開日・更新日

公開日
2010-06-15
更新日
-

文献情報

文献番号
200935008B
報告書区分
総合
研究課題名
精神医療の質的実態把握と最適化に関する総合研究
課題番号
H19-こころ・一般-008
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
伊豫 雅臣(千葉大学大学院医学研究院 精神医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 松原 三郎(医療法人財団松原愛育会松原病院)
  • 佐々木 一(爽風会佐々木病院)
  • 三辺 義雄(金沢大学大学院医学系研究科)
  • 羽間 京子(千葉大学社会精神保健教育研究センター)
  • 岩崎 弥生(千葉大学看護学部)
  • 小宮山 徳太郎(医療法人栗山会飯田病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、精神科病院や精神医療福祉資源の実態の把握、また諸外国の制度調査を通して、精神保健医療福祉の改革ビジョンを達成するための実効あるモデルプランを提言するものである。
研究方法
精神科病院における医療実態の把握(松原先生)、特定機能病院及び精神科急性期病棟における統合失調症患者の早期退院に関する実証的研究(三邉班)、精神科看護の効果の実証に関する研究(岩崎班)、入院精神医療から地域精神医療への転換に関する研究(小宮山班)、地域精神保健福祉サービスの拡充に関する研究(羽間班)、精神医療の提供実態に関する国際比較研究(佐々木班)を行うことにより目的を達成することとした。
結果と考察
新規入院患者の退院促進では回復期(入院4から12ヶ月)における急性期病棟並みの積極的な医療と退院支援が有効であり、また退院支援のクリニカルパスが有効である。長期入院患者の早期退院には、地域生活における医療から日常生活、住居、金銭、福祉資源利用など様々な視点からの支援が必要であり、そのためにはケアマネージメント方式による多職種連携と入院から地域への切れ目のない支援体制を構築することが重要である。このような多職種を合理的に機能させるには退院準備度評価尺度や退院準備状況アセスメントなどを用いた退院準備度に関する適切な評価と、総合的にプログラム化した「地域移行促進プログラム」を利用することが効果的と思われる。退院後の支援に関しては初期の1-2週間に多職種による退院後短期集中自立支援が重要であることと精神科救急医療の重要性が指摘された。また、患者特性や地域特性に応じた支援形態を作ることが指摘された。就労に関する支援も特に若年者では患者自身も期待しており就労支援の拡大が求められる。退院後の居住施設数とその定員数は増加してきているが、未だ不足していると言わざるを得ない。さらに退院促進や病床削減には病棟の機能分化よりも病床ごとの機能分化が有用であることも指摘された。また、精神科病棟からナーシングホームに転換していく中間型ナーシングホームも有用であることが示唆された。
結論
本研究成果をもとに、退院促進プランの推奨ポイントを示すとともに、精神障害者退院促進に関する提言を行った。

公開日・更新日

公開日
2010-06-15
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200935008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
長期入院となる重要な要素が重篤な精神病症状と手段的日常生活動作の顕著な低下であることから今後の精神医学研究の重要な標的が明らかとなった。また、精神科看護は一般科で用いられている看護必要度では評価できないが、本研究で行われた退院促進における看護ケア実態から精神科看護必要度が明らかとなった。
臨床的観点からの成果
早期退院、退院促進には患者個々の退院阻害因子を退院準備度尺度や退院準備状況アセスメントなどを用いて適切に評価して早期から対処していくことが有用であり、また、長期入院患者では手段的日常生活動作の低下が著明であることから多職種の支援チームによる個々にあった支援とともにケースマネージャーによる包括的な支援が重要であることが明らかとなった。これらは臨床的観点からの成果である。
ガイドライン等の開発
本研究成果をもとに、総合報告書において、退院促進プランの推奨ポイントを示すとともに、精神障害者退院促進に関する提言を行った。
その他行政的観点からの成果
わが国における救急・急性期精神医療の効果が検証できたこと、また多職種による退院促進支援チームや地域生活支援チームとケースマネージメントの重要性が指摘されたこと、依然長期入院患者の退院後の住居が大きく不足していること、さらに退院促進・地域支援は医療・福祉従事者の奉仕によることが多く、財政的支援が必須であること、ベルギーなどわが国と同様の精神医療状況であっても脱施設化に成功している国があることが明らかとなった。
その他のインパクト
第105回日本精神神経学会総会(2009年8月21-23日)にて「退院促進に関する精神医療の質的実態把握と最適化」と題した教育講演を施行した。

発表件数

原著論文(和文)
21件
原著論文(英文等)
8件
その他論文(和文)
8件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
9件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
伊豫雅臣他
退院促進に関する精神医療の質的実態把握と最適化.
精神神経学雑誌 , 111 (9) , 1165-1170  (2009)
原著論文2
松原三郎
精神病床利用状況調査からみたわが国の精神科医療の課題
日精協誌 , 27 (11) , 967-979  (2008)
原著論文3
岩﨑弥生,小宮浩美,石川かおり他
精神科入院患者の退院促進を指向した看護援助に関する調査
日本精神衛生学会第24回大会抄録集 , 26-27  (2008)
原著論文4
小宮浩美,岩﨑弥生,東本裕美他
精神障害者の退院支援における看護援助(その1)-事例調査を用いた援助の効果の検討
第29回日本看護科学学会学術集会講演集 , 503-  (2009)
原著論文5
岩﨑弥生,小宮浩美,東本裕美他
精神障害者の退院支援における看護援助(その2)-質問紙調査による退院援助の実施状況の把握
第29回日本看護科学学会学術集会講演集 , 503-  (2009)
原著論文6
岩﨑弥生,小宮浩美,石川かおり他
精神科入院患者の退院促進を指向した看護援助に関する調査
日本精神衛生学会誌こころの健康 , 24 (1) , 76-77  (2009)
原著論文7
畠 稔
急性期統合失調症入院患者の長期入院に関わる要因―退院準備度評価尺度(DRI)を用いた評価―
第40回日本看護学会論文集(精神看護) , 113-115  (2009)
原著論文8
Iwasaki.Y, Komiya.H, Higashimoto.H,etal
Strength-based discharge nursing for people with mental illness:
A questionnaire survey. Shanghai International Nursing Conference , 184-  (2009)
原著論文9
Komiya.H, Iwasaki.Y, Higashimoto.H,etal
Effects of strength-based discharge nursing support for long-stay patients with mental illness.
International Nursing Conference, , 362-  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-