精神療法の実施方法と有効性に関する研究

文献情報

文献番号
200935005A
報告書区分
総括
研究課題名
精神療法の実施方法と有効性に関する研究
課題番号
H19-こころ・一般-005
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
大野 裕(慶應義塾大学 保健管理センター)
研究分担者(所属機関)
  • 中川 彰子(川崎医科大学)
  • 古川 壽亮(名古屋市立大学)
  • 石井 朝子(社会福祉法人礼拝会ミカエル寮)
  • 仲本 晴男(沖縄県立総合精神保健センター)
  • 清水 栄司(千葉大学医学研究院)
  • 岡本 泰昌(広島大学医歯薬学総合研究科(医))
  • 水島 広子(水島広子こころの健康クリニック)
  • 中島 聡美(国立精神神経センター)
  • 池上 秀明(池上クリニック)
  • 元村 直靖(大阪教育大学学校危機メンタルサポートサンター)
  • 藤澤 大介(慶應義塾大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
13,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1うつ病、不安障害(パニック障害、社会不安障害、強迫性障害)、境界性パーソナリティ障害、摂食障害に対して認知療法・認知行動療法、対人関係療法をマニュアルに準拠して行い、わが国における実施可能性と有効性を検証する。
2 認知行動療法の研修プログラムとその有用性を検証する
3診療報酬上の概念で規定される通院精神療法の内容を整理し、その意義を検証する
研究方法
1 マニュアルをもとに、RCT又はオープントライアルを実施した。
2 認知行動療法の研修を行い効果を評価した。
3 通院精神療法の対象疾患とその意義について評価した。
結果と考察
1 大うつ病性障害に対する認知行動療法のシングルブラインド無作為対照比較試験を行い27例を登録し治療と評価を行った。
2 パニック障害(168人)、社会不安障害(141人)が名市大病院で集団認知行動療法を受け、治療完遂率がそれぞれ86%、83%、治療前後の症状減少率がそれぞれ平均49%、平均30%であった。効果は治療終結の12ヶ月後まで持続していた。
3 強迫性障害(8名)に対して、行動療法は薬物療法に比べて有意に速く大きな効果をもたらし改善が維持されやすかった。
4 複雑性悲嘆に対して、持続エクスポージャー療法が有効であることが示唆された。
5 不安障害を持つ小児(7-14才、8例)対して認知行動療法の効果が示唆された。
6 境界性パーソナリティ障害(22例)に対するDBTの有効性が示唆された。
7 摂食障害患者(14名)に対する対人関係療法の有効性が示唆された。
8 通院精神療法は精神科外来のほぼ全患者が算定対象であることが示された。その際に、患者は、傾聴、アドバイス、見守り、緊急対応を期待し、医師はコンサルテーション(29%)、サイコテラピー・カウンセリング(27%)、ガイダンス(13%)、ケースワーク(14%)、精神科特有の困難な局面の処理(17%) を提供していた。
9 日本語版認知療法認識尺度(CTAS)、認知療法尺度(CTS)を用いて認知行動療法の研修の結果を評価し、認知行動療法の基礎知識の習得に6時間以上の講義、実践能力の習得に2症例以上のスーパービジョンが必要であることが示された。
結論
精神療法の有用性を示す所見を得て、研修の方向性を示すことができた。通院精神療法に関しても、その実態と有用性を明らかにすることができた。

公開日・更新日

公開日
2010-06-15
更新日
-

文献情報

文献番号
200935005B
報告書区分
総合
研究課題名
精神療法の実施方法と有効性に関する研究
課題番号
H19-こころ・一般-005
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
大野 裕(慶應義塾大学 保健管理センター)
研究分担者(所属機関)
  • 中川彰子(川崎医科大学 医学部)
  • 古川壽亮(名古屋市立大学医学研究科)
  • 石井朝子(社会福祉法人礼拝会ミカエラ寮)
  • 仲本晴男(沖縄県立総合精神保健福祉センター)
  • 清水栄司(千葉大学医学研究院)
  • 岡本泰昌(広島大学医歯薬学総合研究科)
  • 水島広子(水島広子こころの健康クリニック)
  • 中島聡美(国立精神・神経医療研究センター)
  • 池上秀明(池上クリニック)
  • 元村直靖(大阪教育大学学校危機メンタルサポートセンター)
  • 藤澤大介(慶應義塾大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
(ア)うつ病、不安障害(パニック障害、社会不安障害、強迫性障害)、複雑性悲嘆、境界性パーソナリティ障害に認知療法・認知行動療法、摂食障害に対人関係療法をマニュアルに準拠して行い、わが国における実施可能性と有効性を検証する。
(イ)認知行動療法の研修プログラムとその有用性を検証する
(ウ)診療報酬上の概念で規定される通院精神療法の内容を整理し意義を検証する
研究方法
(ア)マニュアルに基づいて効果研究を実施した。
(イ)うつ病の薬物療法及び認知行動療法の経済効果について検証した。
(ウ)認知行動療法の効果に関する国内外の科学的根拠を検証した。
(エ)認知行動療法の研修を行い効果を評価した。
(オ)通院精神療法の意義について評価した。
結果と考察
(ア)主要な精神疾患に対する認知療法・認知行動療法等のマニュアルを作成した。
(イ)大うつ病性障害に対する認知行動療法のシングルブラインド無作為対照比較試験を行い27例を登録し治療と評価を行い、通常治療に認知行動療法を追加することが、治療効果の面でも医療経済的にも望ましいことが示された。
(ウ) パニック障害、社会不安障害、強迫性障害、複雑性悲嘆、境界性パーソナリティ障害に対する認知行動療法の効果が明らかになった。
(エ)小児でも認知行動療法の有効性が示唆された。
(オ)摂食障害に対する対人関係療法の有効性が示唆された。
(カ)認知行動療法の効果に関するわが国における研究の質は十分ではないが、文献レビューを通して、わが国においても認知行動療法が効果的である可能性が示唆された。
(キ)精神療法の研修では、①精神療法の非特異的な治療的因子の習得、②講義、上級治療者の治療への陪席、ビデオ・録音テープに基づくスーパービジョン、標準化された評価を用いた知識・技術・Case Formulationの評価、経験症例のポートフォリオとケースレポートの作成、③特定の精神療法に関するメタ解析の主要な結果、結果の強みと弱みについての学習、④集団療法の機会、が重要であることが明らかにされた。
(ク)通院精神療法には、全精神疾患に対する、地域における精神科かかりつけ医としてのマネジメント機能が期待されていることが明らかになった。
結論
認知療法・認知行動療法等の精神療法の有用性を示す所見を得て、研修の方向性を示すことができた。通院精神療法に関しても、その実態と有用性を明らかにすることができた。

公開日・更新日

公開日
2010-06-15
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200935005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
わが国で系統的研究の乏しい精神療法に関して、継続して治療効果に関する研究を続けたことの学術的意義は大きい。とくに、大うつ病性障害に対する認知療法・認知行動療法のシングルブラインド無作為対照比較試験を行って成果を上げたことは、精神療法はもちろんのこと、精神医学領域の類似の研究の基盤を提供するものである。また、精神療法に関して、治療効果のみならず、医療経済的側面からも検討を加えたことは大きな成果である。
臨床的観点からの成果
三大疾患として国民的に大きな注目を集めているうつ病性障害や不安障害、パーソナリティ障害などの精神疾患に対して、薬物療法とともに重要な治療的アプローチである認知療法・認知行動療法のマニュアルを作成したことは、質の高い精神療法の均てん化の基礎となる重要な成果である。また、そのマニュアルに沿って治療を行うことで効果が上がることを実証したことは、わが国における精神科診療の質を高める大きな成果である。
ガイドライン等の開発
うつ病性障害や不安障害、パーソナリティ障害などの精神疾患に対して効果に裏づけられた治療マニュアルを作成できた。内容は極めて具体的であり、その効果も実証されており、臨床で使用するのにじゅうぶんに耐えるものとなっている。また、こうしたマニュアルに基づいて行う研修についても具体的に検証できたことは大きな意味がある。
その他行政的観点からの成果
うつ病性障害の認知療法・認知行動療法のマニュアルが作成され、それに基づいて行った治療に効果が認められたこと、さらに具体的な研修案とその評価法を示すことができたことによって、平成22年の診療報酬改定で認知療法・認知行動療法が保険点数の対象となった。また、地域における精神科かかりつけ医機能を裏づける通院精神療法の意義が明らかにできたことも行政的には大きな意味がある。
その他のインパクト
薬物療法と同じく精神疾患治療の柱である精神療法の実施方法と効果、研修方法を明らかにできたことは、広く国民のこころの健康に資するものと考えられる。本研究で作成した認知療法・認知行動療法の患者用および治療者用マニュアルは、厚生労働省によって新たに作成されたホームページhttp://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/kokoro/index.html
に掲載された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
21件
その他論文(和文)
11件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
7件
学会発表(国際学会等)
7件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
成果を受けて、認知療法・認知行動療法が診療報酬に収載になった。
その他成果(普及・啓発活動)
1件
成果については、多くのマスコミが注目をして記事にした。普及のための事業費が精神神経医療研究センターについた。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-