文献情報
文献番号
200935003A
報告書区分
総括
研究課題名
精神科領域における臨床研究推進のための基盤作りに関する研究
課題番号
H19-こころ・一般-003
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
山田 光彦(国立精神・神経センター精神保健研究所 老人精神保健部)
研究分担者(所属機関)
- 尾崎 紀夫(名古屋大学大学院 医学系研究科)
- 渡辺 範雄(名古屋市立大学大学院 医学研究科)
- 川嵜 弘詔(九州大学大学院 医学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
17,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
うつ病や統合失調症等の精神科疾患は国民の「こころの健康」を脅かす大きな問題となっている。また、その有病率は予想外に高く、効果的な対応により大きな利益を社会に与えることができる。そこで本研究では、精神科医療の質の向上を目指し、本領域における臨床研究推進のための基盤作りに関する研究を行うことを目的に研究を進めた。
研究方法
(1)わが国の精神科領域における臨床研究推進のための課題や今後予想される障害について、うつ病のグルタミン酸仮説を例に検討を行った。(2)「妊産婦のマタニティ・ブルーズとうつ病の発症頻度推定を目的とした質問紙法を用いた前向きコホート研究」をモデルとして実施し、実施上の課題を明らかにした。(3)「部分寛解うつ病患者の不眠に対する短期睡眠行動療法:評価者盲検無作為割り付け対照試験」をモデルとして実施し、無作為化比較研究上の課題を明らかにした。(4)さらに、平成21年度は国際共同治験にわが国が参加するための実施基盤について、福岡を中心とする国際共同治験ネットワークの可能性を中心に韓国の専門家らとともに検討した。
結果と考察
臨床研究として実現可能性が高いグルタミン酸調節薬の抗うつ効果についての研究デザインを立案する上で、科学的正当性を持って計画するための参照するべき必須の基盤的データを得ることができた。2009年10月末までに550名の妊婦を登録した。妊娠中から産後までうつ状態が持続している者(7%)、妊娠期にうつ状態が見られたがその後症状が軽減する者(11%)、産後のみうつ状態を呈する者(10%)、全くうつ状態を呈することのない者(72%)がみられた。マタニティ・ブルーズを呈したものが産後うつ状態となるRRは4.36であった。さらに、うつ病不眠に対する短期睡眠行動療法は不眠ばかりでなくうつも著明に改善させる(NNT=2)ことが明らかになった。一方、国際共同治験にわが国が参加するための実施基盤についての検討を終了した。
結論
精神科領域における臨床研究推進するための問題点を整理し、研究者ネットワークを形成するとともに、臨床研究推進のための具体的提案を行うことができた。さらに、精神科領域における国際共同試験をアジア地域にて推進するために必要な研究基盤についての課題が明らかとなった。
公開日・更新日
公開日
2010-06-15
更新日
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