療育手帳の交付判定及び知的障害に関する専門的な支援等に資する知的能力・適応行動の評価手法の開発のための研究

文献情報

文献番号
202317016A
報告書区分
総括
研究課題名
療育手帳の交付判定及び知的障害に関する専門的な支援等に資する知的能力・適応行動の評価手法の開発のための研究
課題番号
22GC1014
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
辻井 正次(学校法人梅村学園 中京大学 現代社会学部)
研究分担者(所属機関)
  • 中村 和彦(弘前大学大学院医学研究科 神経精神医学講座)
  • 岡田 俊( 奈良県立医科大学 精神医学講座)
  • 本田 秀夫(信州大学 学術研究院医学系)
  • 上野 修一(国立大学法人 愛媛大学 大学院医学系研究科 精神神経科学)
  • 内山 登紀夫(福島学院大学)
  • 大塚 晃(上智大学 総合人間科学部)
  • 日詰 正文(独立行政法人 国立重度知的障害者総合施設のぞみの園 総務企画局研究部)
  • 小林 真理子(山梨英和大学 人間文化学部)
  • 伊藤 大幸(お茶の水女子大学 生活科学部)
  • 浜田 恵(名古屋学芸大学ヒューマンケア学部)
  • 明翫 光宜(中京大学心理学部)
  • 高柳 伸哉(愛知東邦大学 人間健康学部)
  • 山根 隆宏(国立大学法人神戸大学 人間発達環境学研究科)
  • 村山 恭朗(金沢大学 人間社会研究域 人間科学系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
13,084,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は療育手帳の判定・交付基準の全国統一化を図るため、国際的な診断基準に準拠する療育手帳の判定・判定基準を開発・提案することを目的とする。本年度は、①昨年度調査をもとに項目の追加・修正を施したABIT-CV(Adaptive Behavior and Intelligence Test – Clinical Version)の正式版を作成し、標準化(標準得点のノルムの設定)および信頼性・妥当性の検証を行うこと(伊藤・村山・浜田・高柳・山根・明翫)、②療育手帳制度の判定方法及び認定基準等運用の統一に向けて、療育手帳制度の制度政策的な位置づけ、療育手帳の判定や認定基準等運用の統一の主要な課題、統一時に受けられなくなる可能性のある対象や支援の内容等について福祉サービスの観点から明らかにすること(大塚・小林・日詰)、③特別児童扶養手当との関連や療育手帳判定時に必要な成育歴情報、療育手帳の再判定期間を取り上げ、医学的な観点や先行研究のレビーを行うこと(内山・上野・中村・岡田・本田)、④開発・標準化するABIT-CVの社会実装を促進するため、療育手帳の判定・交付を行う機関の職員を対象とするABIT-CVの説明会を開催し、当該説明会に関するアンケートを精査すること(村山・小林・高柳)を目的とした。
研究方法
①については一般児者および知的発達症児者を対象に調査を実施し、他は文献調査を行った。
結果と考察
① 項目分析の結果、新規追加項目も含めて、大部分の項目が有効に機能していることが確認された。適応行動尺度と知的機能検査のいずれの尺度・課題についても、内的整合性の観点から十分な水準の信頼性が確認された。ウェクスラー式知能検査およびVineland-IIを外在基準とする併存的妥当性の検証により、ABIT-CVは十分な収束的・弁別的妥当性を有することが確認された。トドラー、幼児、成人という3つの年齢群ごとに判別分析を行い、いずれの尺度・課題も知的障害の診断の有無と相関することが示され、パッケージ全体としても十分な正準相関が確認された。また、定型発達群の平均-2標準偏差をカットオフとして、いずれの年齢群でも高い精度で知的障害の有無を判別しうることが示された。トドラーおよび幼児において、知的機能検査で発話を必要としない視覚系課題のみを用いた場合でも、知的障害の判別精度はおおむね保たれることが確認された。
② 療育手帳制度の判定方法及び認定基準等の統一による影響は、障害者総合支援法や児童福祉法などの福祉サービス、障害基礎年金や特別児童扶養手当などの年金・手当、雇用・就労支援や特別支援教育に影響を与えることが示唆された。療育手帳制度運用の統一は、従来曖昧であった「知的障害の範囲・枠組み」を明確にすることであり、現行において手帳を取得できている者ができなくなる可能性、その結果としての手帳に紐付いたサービスが利用できなくなる可能性が明らかとなった。療育手帳制度運用の統一においては、生ずる可能性のある課題について、その対応をあらかじめ検討しておく必要があること。対応の一つとして精神障害者保健福祉手帳制度を利用しやすくする必要性が示唆された。
③ 療育手帳や特別児童扶養手当の認定手続きについては、少なくとも診断書作成や心理検査に関する部分は一元化し、本人、家族、主治医の負担の軽減と行政の業務の効率化を図ることが望ましい。療育手帳判定で把握すべき成育歴の情報に関しては、養育状況などの生育環境、精神症状や学業成績などの子どもの状態、妊娠中の母胎の健康状態、染色体異常等の本人に係る医学的状態に関する情報の把握が必要と考えられた。療育手帳の再判定に関して、海外における知能や適応行動の安定性や変化に関するレビューから、年齢によって適切な再判定期間が異なるとともに、知的障害のある者でも後天的な機能低下が起こりうることから、申請制による再判定の機会を設けることも必要であることが示された。
④ 説明会後のアンケートの結果、参加者の9割以上が説明会の内容を「わかりやすかった」と評価すると共に、提示した情報量を「適当」と評価した。ABIT-CVの社会実装(療育手帳の判定にABIT-CVを利用する)に向けた質問の回答から、ABIT-CVの実施に関する継続的な研修が必要であると共に、その研修の一部として、より実践的な研修が含まれることが望ましいことが示唆された。
結論
療育手帳の判定交付の基準と統一に向けて、次年度は最終年度にあたるため継続して研究調査を行う必要がある。

公開日・更新日

公開日
2024-05-24
更新日
-

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公開日・更新日

公開日
2024-05-23
更新日
-

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文献番号
202317016Z