文献情報
文献番号
202317009A
報告書区分
総括
研究課題名
障害福祉サービス等における高次脳機能障害者の支援困難度の評価指標についての研究
課題番号
22GC1007
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
深津 玲子(国立障害者リハビリテーションセンター 病院)
研究分担者(所属機関)
- 今橋 久美子(藤田 久美子)(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所)
- 浦上 裕子(国立障害者リハビリテーションセンター病院 第一診療部 精神科(研究所併任))
- 立石 博章(国立障害者リハビリテーションセンター 高次脳機能障害情報・支援センター)
- 鈴木 智敦(名古屋市総合リハビリテーションセンター)
- 数井 裕光(高知大学 教育研究部医療学系臨床医学部門)
- 川上 寿一(滋賀県立リハビリテーションセンター)
- 小西川 梨紗(滋賀県高次脳機能障害支援センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
8,080,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
社会保障審議会障害者部会において、現行の障害支援区分認定調査だけでは、高次脳機能障害の支援困難度が反映されにくく、サービス利用基準に満たないことがある、との指摘があった。また日常生活上の支援に困難のある高次脳機能障害者であっても、重度障害者支援加算の要件を満たせない実態もある。高次脳機能障害の支援困難度が適正に評価されているかを検証し、特に支援上の困難となる社会的行動障害の支援困難度評価指標案を提案することを目的とする。
研究方法
1) 昨年度作成した支援困難度評価表(以後、評価表)を用いて、昨年度に引き続き、障害福祉サービス事業所にて、高次脳機能障害利用者1名に対し、利用者の状況をよく把握している専門職2名が、それぞれ利用記録等に基づき評価。脳外傷者の認知-行動障害尺度(TBI‐31)も実施。
2) 1)で収集した評価表のデータと現行の障害支援区分との関連を調査。評価表の信頼性として,評価者間の級内相関係数,妥当性としてTBI‐31との相関係数を算出。
3) 評価表分析結果をもとに、重度障害者支援加算の要件である強度行動障害の行動関連項目に準じて、高次脳機能障害の支援困難度評価指標案を作成。
2) 1)で収集した評価表のデータと現行の障害支援区分との関連を調査。評価表の信頼性として,評価者間の級内相関係数,妥当性としてTBI‐31との相関係数を算出。
3) 評価表分析結果をもとに、重度障害者支援加算の要件である強度行動障害の行動関連項目に準じて、高次脳機能障害の支援困難度評価指標案を作成。
結果と考察
1)昨年度集計分とあわせ、障害福祉サービス事業所13カ所にて利用者104名(平均年齢42.3±13.4歳,男性80名)に評価表およびTBI-31を実施。
2)①支援区分との関係;評価表4評価軸の各重みづけ得点を算出し、障害支援区分と比較。重みづけ得点とは,例えば,軽度1点×人数+中等度2点×人数+重度3点×人数の合計点である。「必要な支援の頻度」とは弱い相関(p<0.05)があったが,「重症度」「介護負担度」「介入による変化」とは相関が無かった。②信頼性; 2名の検査者間の級内相関係数は、必要な支援の頻度.842、重症度.760、介護負担度.834、介入による変化.845でありいずれの評価軸でも強い相関を認めた(有意確率0.000)。③妥当性:TBI-31との相関係数は,必要な支援の頻度.899、重症度.891、介護負担度.904、介入による変化.915でありいずれの評価軸でも強い相関を認めた(有意確率0.000)。
3)現行の障害支援区分とは「必要な支援の頻度」とは弱い相関(p<0.05)があったものの、「重症度」「介護負担度」「介入による変化」とは相関が無かったことから、重度あるいは介護負担度が高くとも障害支援区分が軽いケースが存在することが示唆された。障害支援区分認定調査だけでは、高次脳機能障害の支援困難度が反映されにくく、サービス利用基準に満たないことがある、という指摘を裏付けるものである。評価表の外的妥当性と信頼性は確認された。評価者間の一致率は「介入による変化」が最も高く,これは「重度」「軽度」といった度合いの表現よりも、変化「あり」「なし」といった表現の方がより客観的に判断しやすいためと推測される。これらの結果に基づき,現行の重度障害者加算の要件である強度行動障害の行動関連項目の仕様に準じて,評価表重みづけ得点上位12項目を「介入による変化」で評価する「高次脳機能障害の支援困難度評価指標案」を作成した。これを本研究対象者に適用したところ104名のうち60%が10点以上であり、同項目を「必要な支援の頻度」で評価した場合(15%)よりも高く、支援困難度を適切に評価するための指標の一つとして活用が可能と考える。
2)①支援区分との関係;評価表4評価軸の各重みづけ得点を算出し、障害支援区分と比較。重みづけ得点とは,例えば,軽度1点×人数+中等度2点×人数+重度3点×人数の合計点である。「必要な支援の頻度」とは弱い相関(p<0.05)があったが,「重症度」「介護負担度」「介入による変化」とは相関が無かった。②信頼性; 2名の検査者間の級内相関係数は、必要な支援の頻度.842、重症度.760、介護負担度.834、介入による変化.845でありいずれの評価軸でも強い相関を認めた(有意確率0.000)。③妥当性:TBI-31との相関係数は,必要な支援の頻度.899、重症度.891、介護負担度.904、介入による変化.915でありいずれの評価軸でも強い相関を認めた(有意確率0.000)。
3)現行の障害支援区分とは「必要な支援の頻度」とは弱い相関(p<0.05)があったものの、「重症度」「介護負担度」「介入による変化」とは相関が無かったことから、重度あるいは介護負担度が高くとも障害支援区分が軽いケースが存在することが示唆された。障害支援区分認定調査だけでは、高次脳機能障害の支援困難度が反映されにくく、サービス利用基準に満たないことがある、という指摘を裏付けるものである。評価表の外的妥当性と信頼性は確認された。評価者間の一致率は「介入による変化」が最も高く,これは「重度」「軽度」といった度合いの表現よりも、変化「あり」「なし」といった表現の方がより客観的に判断しやすいためと推測される。これらの結果に基づき,現行の重度障害者加算の要件である強度行動障害の行動関連項目の仕様に準じて,評価表重みづけ得点上位12項目を「介入による変化」で評価する「高次脳機能障害の支援困難度評価指標案」を作成した。これを本研究対象者に適用したところ104名のうち60%が10点以上であり、同項目を「必要な支援の頻度」で評価した場合(15%)よりも高く、支援困難度を適切に評価するための指標の一つとして活用が可能と考える。
結論
現行の障害支援区分認定調査の行動障害関連項目に項目と評価軸を追加した評価表を高次脳機能障害者104名に対して試用した。同評価表は信頼性と妥当性が確認された。現行の障害支援区分との関係については、現行の評価軸「必要な支援の頻度」とは弱い相関(p<0.05)があったものの、追加評価軸「重症度」「介護負担度」「介入による変化」とは相関が無く、重度あるいは介護負担度が高くとも障害支援区分が軽いケースが存在することが示唆された。高次脳機能障害で該当する上位12項目を「介入による変化」で評価する「高次脳機能障害の支援困難度評価指標案」を作成した。現行の重度障害者加算の要件を満たせず、共同生活援助等のサービスを利用できない高次脳機能障害者の支援困難度を適切に評価する指標として活用が可能と考える。
公開日・更新日
公開日
2024-05-31
更新日
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