食餌性脂質を中心とした生理活性脂質による粘膜免疫制御ならびにアレルギー疾患との関連解明

文献情報

文献番号
200934045A
報告書区分
総括
研究課題名
食餌性脂質を中心とした生理活性脂質による粘膜免疫制御ならびにアレルギー疾患との関連解明
課題番号
H20-免疫・若手-025
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
國澤 純(東京大学 医科学研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
患者のQOLやその治療に伴う医療費の問題等から新規予防・治療法の開発が待望されているアレルギー疾患は、最近の研究から遺伝的な背景だけではなく、食事環境などを始めとする生活環境の変化が発症に関わっていることが示唆されている。本研究においては、我々がこれまで行ってきたスフィンゴシン1リン酸と呼ばれる生理活性脂質を介した腸管免疫制御機構に関する研究を発展させ、脂質による粘膜免疫制御とアレルギー疾患との関連を解明することを目的に研究を展開している。本研究計画の2年度にあたる本年度は、食餌性脂肪酸に焦点を当て、食餌性脂質と腸管免疫、食物アレルギーについて研究を遂行した。
研究方法
食用油の脂肪酸組成に関する情報をもとにユニークな脂肪酸組成を示す食用油を選択し、重量比で4%含む特殊飼料を作製し、マウスを2ヶ月間飼育した際の糞便中IgAをELISA法で測定した。また同マウスにニワトリ卵白アルブミンをモデルアレルゲンとする食物アレルギーモデルを適用し、その発症率を比較した。
結果と考察
糞便中IgA産生を指標にした解析から、脂肪酸組成の食用油のうち特にパーム油がIgAの産生増強を約2倍に増加させることが判明した。パーム油にはパルミチン酸が特徴的に多く含有されていることから、大豆油にパーム油と同量のパルミチン酸を加えた飼料を用いて飼育したマウスの糞便中IgAを測定したところ、パーム油を用いた場合と同様、糞便中IgAの産生増強が確認された。さらにこれらのマウスに食物アレルギーモデルを適応し、その発症状態を検討した結果、IgAの産生増強と同様、大豆油にパルミチン酸を加えた油で飼育した群やパーム油を含む飼料で飼育した群で食物アレルギー性下痢の増悪化が観察された。
結論
本結果は、日常的に摂取している食用油の脂肪酸組成の違いにより腸管免疫反応やアレルギー反応が異なることを示すと共に、腸管免疫の活性化を誘導する責任脂肪酸の一つがパルミチン酸であることを見いだした。今後その作用メカニズムを明らかにすることで、食とアレルギー疾患との関連について、食餌性脂質と腸管免疫という新機軸からの情報提供が可能になると期待される。

公開日・更新日

公開日
2010-05-19
更新日
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