文献情報
文献番号
202317001A
報告書区分
総括
研究課題名
退院後の地域生活を見据えた切れ目ない診療モデルの普及と地域生活支援体制の構築に向けた研究
課題番号
21GC1011
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
伊豫 雅臣(国立大学法人千葉大学 大学院医学研究院)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
7,478,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は精神医療機関を対象とした調査を行い、「精神障害者にも対応した地域包括ケアシステムの構築」に資する精神医療機関の最適な人的配置や地域との連携の普及に向けた診療モデルの構築とそれを実現するための診療報酬への提案をすることである。そのために我々は、令和3年度に本邦の精神科救急入院料病棟(以下、精神科救急病棟)を有する全国の医療機関を対象に、各医療機関における多職種の配置や地域との連携に効果的な治療プログラムと退院後の地域生活日数との関係を明らかとするためのアンケート調査を行なった。診療モデルの構築のために令和4年度から精神科救急病棟に併設されている診療報酬算定基準では限られた人員配置となっている精神科療養病棟での地域移行・地域定着に向けた取り組みの実態を把握することにより汎用性のある診療モデルを提供する。
研究方法
アンケート調査を用いた横断研究を実施し、主要アウトカムとして対象施設退院後の地域における平均生活日数や対象施設の人員配置、地域移行・地域定着に資する取り組みを把握する。対象施設は日本精神科救急学会所属179施設を対象とする。主要アウトカムは対象施設の精神科救急病棟に入院した患者の「退院後1年以内の地域における平均生活日数(以下、地域平均生活日数)」とした。副次的評価項目として、対象施設の人員配置、地域移行・地域定着への取り組みの実態を把握することとした。
さらに「精神障害者にも対応した地域包括ケアシステムの構築」に資する人的配置や地域との連携に取り組んでいる施設を好事例施設として抽出し、好事例施設の精神療養病棟を対象に診療実績調査及びヒアリング調査を実施した。
さらに「精神障害者にも対応した地域包括ケアシステムの構築」に資する人的配置や地域との連携に取り組んでいる施設を好事例施設として抽出し、好事例施設の精神療養病棟を対象に診療実績調査及びヒアリング調査を実施した。
結果と考察
対象施設179施設のうち82施設から回答を得た(回答率45.8%)。対象施設の精神科救急病棟に入院した患者(n=3,113)の地域平均生活日数は、329.84日(標準偏差、±73.15)であった。対象施設では第6期障害福祉計画の目標値である地域平均生活日数316日以上、入院後3ヶ月時点の退院率が69%の目標値を達成できていることが明らかとなった。好事例施設の精神療養病棟では、地域定着を見据えた退院支援を実施するために、診療報酬算定基準の人員配置では十分に支援を行うことができず、地域に受療ニーズに応じて一部の専門職を加配している。加配された専門職を中心に多職種カンファレンスや地域援助事業者を含めたケア会議が複数回開催さえていた。加配された専門職による退院前訪問により地域定着が強化されている可能性がある。さらに、地域移行、地域定着の阻害因子を、評価ツールを用いて特定し、プログラムを実施し効率化を図って退院支援をすることによって医療者の人手不足への対応を講じている可能性がある。
結論
本研究で精神科救急医療を要する精神疾患に対する精神科救急病棟で実施されている既存の種々の医療技術、福祉資源を組み合わせた取り組みの実態とその成果を明らかとすることによって、新たな理念として明確化された「精神障害者にも対応した地域包括ケアシステムの構築」に向けた精神医療モデルを確立することにより、地域移行・地域定着を推進する施策に直接反映できる。
公開日・更新日
公開日
2024-08-05
更新日
-