認知症の病態の進行に影響する重症化因子の特定と進行予防への効果的な介入方法の確立のための研究

文献情報

文献番号
202316009A
報告書区分
総括
研究課題名
認知症の病態の進行に影響する重症化因子の特定と進行予防への効果的な介入方法の確立のための研究
課題番号
23GB1003
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
川勝 忍(公立大学法人福島県立医科大学 会津医療センター)
研究分担者(所属機関)
  • 松田 圭悟(名古屋大学 大学院情報学研究科複雑系科学専攻)
  • 小林 良太(山形大学 医学部)
  • 鈴木 匡子(東北大学 大学院医学系研究科高次機能障害学)
  • 林 博史(福島県立医科大学 保健科学部作業療法学科)
  • 伊関 千書(東北大学病院 リハビリテーション部)
  • 井原 一成(国立大学法人 弘前大学 大学院医学研究科 大学院医学研究科社会医学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症政策研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
12,320,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
認知症の種類、病期を考慮した認知症の病態の進行に影響する重症化因子と保存されやすい症状を、国内外の知見を踏まえて、社会心理的要因を含む患者背景、精神症状、神経症状、神経心理学的症状、神経画像検査などの臨床検査所見と遺伝的危険因子を調査し、神経病理学的検索を含めた後方視的検討と、前方視的検討を組み合わせて明らかにする。
研究方法
認知症専門医による大学病院もの忘れ外来と認知症疾患医療センターでの認知症患者データについて、1)アミロイドPETや病理学的データを含む後方視的にみた長期経過による検討と、2)前方視的な縦断的検討と効果的な介入について調査解析する。後方視的研究では、MRI、VSRADを撮影した認知症1,000例(アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症など)とアミロイドPETを撮影した認知症450例を中心にこれまでの経時的な臨床経過と認知機能検査などを調査する。前方視的研究では、MRI画像の1年毎の経時的評価、半年ごとの認知機能や臨床評価を行い、後方視的研究と合わせて、認知症の進行速度に影響する因子の解明と、介護サービスによる進行予防効果などの検証を行う。
結果と考察
令和5年度は、前方視的研究エントリー症例として278例をエントリーし、経時的変化を調査中である。後方視的データと合わせて1年間以上の間隔で、2回以上のMRI検査を行った例は会津医療センターでは187例であった。 IADL、ADL、NPI、Zarit介護負担度などの評価を行った。文献的には、自然経過での年間のMMSEの低下率は、アルツハイマー型認知症の場合、2から3点とされているので、3点以上の例を進行群、それ以下を緩徐進行群として、認知機能、MRIのVSRAD所見、ApoE多型について、比較検討中である。実臨床では、MMSEで年間3点以上の低下を示す例も多く、その背景要因の解析中である。認知症の鑑別診断に脳血流SPECTは有効であるが多くの認知症疾患センターではMRIしか利用できない施設が多いため、MRIによる脳血流量測定のスクリーニングとして、arterial spin labeling(ASL) 法による計測を検討し、脳血流SPECT所見と対比し、ほぼ脳血流SPECTと同等な所見が得られることを確認した。問題点としてはラベリング不良による描出不良例がとくに80歳以上の高齢者で多いという点が問題と思われた。アミロイドPiB-PET後方視的検討でセンチロイド解析150/450件で解析済みである。また、PiB-PETを実施した症例で剖検になった症例の画像病理対応について検討し、PiB-PETとSPECT診断の一致率は12/15例(80%)であり、先行論文のFDG-PETとの一致率76%とほぼ同等であった。さらに、 センチロイドスケールで典型的AD例、陰性例、複合病理例について比較すると、典型的AD例より複合病理例ではセンチロイドスケールの値は低い傾向が認めた。前頭側頭型認知症のうち、背景病理が比較的均一である意味性認知症80例について検討した。初診時年齢では65歳以降が60%で、若年性認知症とされる意味性認知症には、より高齢な症例も多いことがしめされた。これは特定疾患としての意味性認知症の認定では65歳以前発症とされているので、該当しない症例が多数存在する可能性がある。また、右優位例は21例、26%であり、Hodgesらの報告94例中24例、26%と全く同じ数字であった。今後、全臨床経過、介護上の問題点、病理像などについても解析していく予定である。
結論
これまでの結果では、実臨床におけるデータでは、従来の多施設研究におけるデータや治験の対照例などのいわゆるチャンピオンデータと比べると、進行が急速な例が多く含まれていた。この要因について、認知機能検査、画像、ApoE多型等とともに、介護サービス利用状況のデータとの関連を含めて検討中である。また、非アルツハイマー型認知症については、進行速度についての検討が不足しているので、アルツハイマー型認知症との比較を含めて、認知症疾患医療センターなどで説明資料として使えるエビデンスを構築していく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2024-06-12
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-06-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202316009Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
16,016,000円
(2)補助金確定額
15,988,892円
差引額 [(1)-(2)]
27,108円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,949,230円
人件費・謝金 3,458,707円
旅費 1,054,594円
その他 4,840,361円
間接経費 3,696,000円
合計 15,998,892円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2024-07-16
更新日
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