食物アレルギーの発症要因の解明および耐性化に関する研究

文献情報

文献番号
200934041A
報告書区分
総括
研究課題名
食物アレルギーの発症要因の解明および耐性化に関する研究
課題番号
H21-免疫・一般-005
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
海老澤 元宏(国立病院機構相模原病院 臨床研究センターアレルギー性疾患研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 板橋 家頭夫(昭和大学医学部 小児科・新生児科)
  • 近藤 直実(岐阜大学大学院 医学系研究科 小児病態学)
  • 伊藤 浩明(あいち小児保健医療総合センター 中央検査部兼アレルギー科)
  • 伊藤 節子(同志社女子大学生活科学部 食物栄養科学科)
  • 宇理須 厚雄(藤田保健衛生大学医学部 小児科)
  • 今井 孝成(国立病院機構相模原病院 小児科)
  • 玉利 真由美(理化学研究所 ゲノム医科学研究センター 呼吸器疾患研究チーム)
  • 穐山 浩(国立医薬品食品衛生研究所 代謝生化学部)
  • 大嶋 勇成(福井大学医学部附属病院 小児科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
25,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 日本小児科学会研修施設513施設で食物負荷試験は264施設において導入され、世界に類を見ない食物負荷試験の普及状況となっている。“診療の手引き”で提唱してきた食物負荷試験による“必要最小限の食物除去”の原則から一歩進み、食物によるアナフィラキシー(An)から脱却させ耐性化をより積極的に進める治療法の開発とその効果を検証することを研究班の主目的とした。
研究方法
1.発症要因に関する研究(遺伝子多型、疫学調査)
 遺伝的要因に関する研究として食物アレルギー(FA)およびAnなどの関連形質とdanger signal 関連分子群の遺伝子多型との相関解析を行った。
2.積極的な治療方法の開発研究
 相模原病院にて食物負荷試験(鶏卵・牛乳)でAnを来した6歳以上のFA児に、急速経口減感作療法 (入院)と維持療法(外来)を組み合わせにより原因食品の摂取量を漸増し減感作療法を施行した。同じ対象に対して抗ヒスタミン薬の有無の条件で2回負荷試験を施行し薬効を検討した。
結果と考察
1.NLRP3遺伝子はウイルス感染やシリカなどのDanger signalsを認識し、Inflammasomeを介して炎症性サイトカインの産生を促進する。この遺伝子多型(rs4612666;P=0.00086、rs10754558;P=0.00068)と食物によるAn発症との強い関連を見いだした。
2.55名(鶏卵21名、牛乳34名)にROITを施行し、大多数の症例で原因食物の摂取量を増加できており、ROITは遷延するAnタイプのFA児に対する積極的な治療としてAnの予防策として有効性が確認された。ROITによるIgE抗体関連の変化は、皮膚テストにおけるマスト細胞の抗原特異的な反応の抑制、抗原特異的IgE抗体の低下の順に認められた。抗原特異的IgG、IgG4抗体値は原因食物の摂取量の増加に伴って上昇が認められた。鶏卵に対しては抗ヒスタミン薬の誘発症状への影響は認めなかったが、牛乳に対しては、内服群において初発・最大症状の出現時間が有意に延長し、誘発閾値が有意に高くなっていた。
結論
 食物アレルギーの予知・予防、診断、積極的な治療法の開発を行うべく研究がスタートし、食物負荷試験の普及状況や、積極的な治療法の確立、遺伝子多型の検討など1年目としては十分な成果が上げられた。食物によるAnへの積極的な治療介入がAnの予防だけではなく、寛解誘導できるのかを検証したいと考えている。

公開日・更新日

公開日
2010-10-19
更新日
-