若年性認知症の病態・支援等に関する実態把握と適切な治療及び支援につなぐプロセスの構築に資する研究

文献情報

文献番号
202316008A
報告書区分
総括
研究課題名
若年性認知症の病態・支援等に関する実態把握と適切な治療及び支援につなぐプロセスの構築に資する研究
課題番号
23GB1002
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
鷲見 幸彦(社会福祉法人仁至会 認知症介護研究・研修大府センター )
研究分担者(所属機関)
  • 粟田 主一(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 認知症未来社会創造センター)
  • 武田 章敬(独立行政法人国立長寿医療研究センター 脳機能診療部)
  • 表 志津子(金沢大学 保健学系)
  • 齊藤 千晶(社会福祉法人仁至会認知症介護研究・研修大府センター 研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症政策研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
11,816,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
若年性認知症は65歳未満で発症する認知症の総称で、患者数は3.57万人と推計されている。実数は少ないが、この年代で発症することによる医療上、介護上の特性や課題が存在する。認知症施策推進大綱において、若年性認知症支援コーディネーターを全都道府県、指定都市に設置し支援を進めており、ステージに対応した診断治療及び支援が適時適切に行われていると考えられるが、その実態調査は十分でない。
本研究では若年性認知症のステージに応じた医療提供、支援体制に関する実態調査を行い、切れ目のない支援体制の構築につながるデータを提供する。そのためには継続的に患者の状況を把握し、一方では患者・家族の情報源となるような登録・情報提供システムの構築もあわせて必要となる。
研究方法
 (1)医療上の課題に対する調査
武田は本年度で全国の認知症疾患医療センターにおける若年性認知症の受診、診断、治療、診断後支援、継続診療等の状況を明らかにするための調査票を作成し、全国約500ヶ所の認知症疾患医療センターを対象とした調査を実施した。粟田は全国の認知症疾患医療センターで実践されている若年性認知症の診断後支援の実態を明らかにするとともに、先進的な取り組みを行う認知症疾患医療センターと連携して若年性認知症レジストリの構築を開始した。
(2)介護支援での課題に対する調査
齊藤は、若年性認知症の人のニーズに合わせたサービスの調整と検討のため、47都道府県・20指定都市の若年性認知症施策行政担当者を対象にアンケート調査を実施し、全ての県・市の行政担当者から回答を得た。また全国の地域包括の管理者5,375名(石川県を除く)を対象にアンケート調査を実施し、2,249名を分析対象とした。表は若年性認知症の人の就労支援・経済的支援の調査を、事業場の支援者、及び本人・家族を対象として、幅広く具体的な実態を捉えるために量的調査を実施するための調査票を作成した。
(3)若年性認知症の人と家族を支える情報提供・登録システムの検討
鷲見は研究の統括、倫理委員会への申請を行うとともに他の研究分担者及び研究協力者の李と共同して若年性認知症の人の情報登録・提供システムの文献的検討と登録方法の検討を行った。
結果と考察
武田は全国の認知症疾患医療センターを対象に若年性認知症の診療の現状を分析した。画像検査、脳波検査が自施設または他施設と連携して実施可能と回答した医療機関は90%を超えていた。鑑別診断を目的として受診した高齢者と有意な差を認めたのは、頭部MRI、脳血流シンチ、脳波検査、脳脊髄液アミロイドβ、リン酸化タウ測定であった。令和4年度の鑑別診断目的での若年者の受診者数は1~10人が最も多かった。今後2023年12月に販売された新しいアルツハイマー病治療薬の影響についても調査・検討していく必要がある。
粟田は全国の認知症疾患医療センターに対する診断後支援の調査を行った。実施頻度が低い診断後支援は就労に関する支援、ピア・サポートやインフォーマル・サポートの利用支援であった。今日の認知症疾患医療センターで実施されている若年性認知症診断後支援の標準的なあり方とともに、相対的に実施頻度が低い診断後支援が明らかになった。今後は、実施頻度が低くなる要因を分析するとともに、実施頻度を高めていくための対策を考案していく必要がある。
齊藤の調査では支援コーディネーター設置事業は全県・9市で実施していた。県はネットワーク構築事業、支援ニーズの把握は7割以上が実施し、社会参加活動の支援は半数以上実施していたが、実態調査は約半数が実施していなかった。支援センターとの連携から達成した項目は、インフォーマルな場の創出、個別支援では本人や家族の困り事の整理が多かった。
表は事業所への調査は従業員100人以上の10,000企業を抽出し、郵送及びWeb調査用送付資料一式を準備した。当事者家族への調査は、全国の若年性認知症の当事者・家族とともに活動している団体に参加する当事者家族とし、郵送による調査票等送付資料一式を準備した。
鷲見・李 若年性認知症に特化した情報源は少数かつ限定的であり専門の情報源が少ないことが指摘された。本人や家族が信頼して閲覧できる情報源、病態によって重要な医療、関連サービスの情報を集約した包括的な情報発信の仕組みが必要である。
結論
認知症疾患医療センターで実施されている若年性認知症の診療の現状、若年性認知症診断後支援の標準的なあり方とともに、相対的に実施頻度が低い診断後支援が明らかになった。
都道府県・指定都市の若年性認知症施策総合推進事業の実施状況、地域包括と支援コーディネーターの連携実態が明らかとなった。
情報提供・登録システムの検討では若年性認知症者では高齢者認知症とは異なる情報を必要としている可能性がある。

公開日・更新日

公開日
2024-06-12
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-06-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202316008Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
14,800,000円
(2)補助金確定額
14,038,000円
差引額 [(1)-(2)]
762,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,992,753円
人件費・謝金 728,291円
旅費 397,135円
その他 6,937,320円
間接経費 2,984,000円
合計 14,039,499円

備考

備考
分担研究者(粟田)1,000円未満  566円
  〃  (武田)    〃    933円
それぞれ切り捨てたため、実際の支出額との差額が発生した

公開日・更新日

公開日
2024-07-16
更新日
-