自立支援に資する介護等の類型化及びエビデンスの体系的な整理に関する研究

文献情報

文献番号
202315011A
報告書区分
総括
研究課題名
自立支援に資する介護等の類型化及びエビデンスの体系的な整理に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
21GA2003
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
松田 晋哉(産業医科大学 医学部・公衆衛生学)
研究分担者(所属機関)
  • 村松 圭司(産業医科大学 医学部 公衆衛生学)
  • 藤本 賢治(産業医科大学産業保健データサイエンスセンター)
  • 田宮 菜奈子(国立大学法人筑波大学 医学医療系 / ヘルスサービス開発研究センター)
  • 福井 小紀子(国立大学法人東京医科歯科大学 大学院保健衛生学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
7,355,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は自立支援型介護自立支援に資する介護の方法等の類型化を行い、どのような介護の方法が、どのような利用者のどのようなアウトカムを改善するのかというエビデンスを示すことを目的とした。
研究方法
今年度研究としては以下の分析を行った。
1. ADL/IADL及び主な傷病別別に、居宅介護サービスが要介護度の変化に及ぼす影響の分析: 東日本の1自治体において2019年4月から2020年3月までに、要介護認定を受けた者の介護認定調査票、医科レセプト及び介護レセプトを用いてADL/IADL及び主な傷病の有無別に、訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護、通所介護、通所リハビリテーション、福祉用具貸与のサービス利用量が要介護度の悪化に関連しているかを分析した。
2. 介助介護が必要な高齢者における介護サービス利用の有無別にみた医療費及び介護給付費の状況の検討: 東日本の一自治体における2016年度の日常生活圏域ニーズ調査と個人単位で連結した医科レセプト、介護レセプトを用いて、2016年度、2017年度、2018年度、2019年度、2020年度医科レセプト及び介護レセプトを用いて一人当たり医療費及び介護給費を求め、介護サービス利用の有無別にこれらの値を比較した。
3. 要介護高齢者の医療介護ニーズに適切に対応するための地域ネットワークの先進事例の検討― 函館市におけるはこだて医療介護連携サマリーを活用した連携事例の分析―: ICTを用いて「はこだて医療介護連携サマリー」を医療介護の関係者間で共有するシステムを実装している函館市では、要介護高齢者の多面的なアセスメント結果をもとに、総合的なケアマネジメントを行う体制が構築されている。本研究ではその事例を収集し、その内容を分析した。
4.特養における抗精神病薬の実態調査:茨城県介護・医療レセプトデータ、介護サービス情報公表システムのデータを使用し、2018年7月〜2019年3月の期間に特養に入所しているものを対象として向精神薬の処方実態を分析した。
5.自立支援に資する介護等の類型化及びエビデンスの体系的な整理に関する研究:従来型の居室形式を持つ介護老人保健施設、特別養護老人ホームの職員に対して自立支援を目的としたケアマネジメントの現状を構造化された質問票で検討した。
結果と考察
1. ADL/IADL及び主な傷病別別に、居宅介護サービスが要介護度の変化に及ぼす影響の分析: 分析の結果、要介護度の悪化防止を目的とした時、それに効果的な介護サービスは訪問入浴介護以外ほとんど検出されなかった。要介護度の悪化が多くの高齢者にとって死に至る過程の一部であることを考えると、身体的な機能低下の予防ではなく、人生の最終段階における療養生活の質を維持、向上させるケアママネジメントがより重要であると考えられた。
2. 介助介護が必要な高齢者における介護サービス利用の有無別にみた医療費及び介護給付費の状況の検討: 「介助・介護が必要である」高齢者について、介護サービス利用の有無別に、医療費及び介護給付費の状況を比較検討した。その結果、2016年の調査時にサービス利用の有無で、医療費には差がないが、介護給付費は利用ない者で低いことが明らかとなった。未利用者は、IADLが低く、口腔機能や栄養の平均スコアの低かった。また、経済状況も悪い者が多かった。
3. 要介護高齢者の医療介護ニーズに適切に対応するための地域ネットワークの先進事例の検討― 函館市におけるはこだて医療介護連携サマリーを活用した連携事例の分析―: はこだて医療介護連携サマリーを用いた連携事例とICFシートの活用事例を収集しその内容を分析した。
4.特養における抗精神病薬の実態調査:抗精神病薬の処方割合:7.0%、ベンゾジアゼピンの処方割合:17.0%、Z-drugの処方割合:5.9%であり、Z-drug処方者では処方されていない者と比べ新規骨折の発生割合が有意に多かった。
5.自立支援に資する介護等の類型化及びエビデンスの体系的な整理に関する研究:従来型居室形態でも、利用者のADLやコミュニケーション等の状態別に集団化することで、利用者が活性化し、個別性のあるプランの立案が容易になっていることが明らかとなった。
結論
自立支援型介護自立支援に資する介護の方法等の類型化を行い、どのような介護の方法が、どのような利用者のどのようなアウトカムを改善するのかという明確なエビデンスを示すことは困難であった。むしろ、人生の最終段階における高齢者のICF的な視点での多様性に着目して柔軟なケアマネジメントを多職種で行える体制を作ることが重要であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2025-05-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202315011B
報告書区分
総合
研究課題名
自立支援に資する介護等の類型化及びエビデンスの体系的な整理に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
21GA2003
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
松田 晋哉(産業医科大学 医学部・公衆衛生学)
研究分担者(所属機関)
  • 村松 圭司(産業医科大学 医学部 公衆衛生学)
  • 藤本 賢治(産業医科大学産業保健データサイエンスセンター)
  • 田宮 菜奈子(国立大学法人筑波大学 医学医療系 / ヘルスサービス開発研究センター)
  • 福井 小紀子(国立大学法人東京医科歯科大学 大学院保健衛生学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は自立支援型介護自立支援に資する介護の方法等の類型化を行い、どのような介護の方法が、どのような利用者のどのようなアウトカムを改善するのかというエビデンスを示すことを目的とした。
研究方法
本研究課題では以下の分析を行った。
1. ADL/IADL及び主な傷病別別に、居宅介護サービスが要介護度の変化に及ぼす影響の分析: 要介護認定を受けた者の介護認定調査票、医科レセプト及び介護レセプトを用いてADL/IADL及び主な傷病の有無別に、訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護、通所介護、通所リハビリテーション、福祉用具貸与のサービス利用量が要介護度の悪化に関連しているかを分析した。
2. 介助介護が必要な高齢者における介護サービス利用の有無別にみた医療費及び介護給付費の状況の検討: 医科レセプト、介護レセプトを用いて、2016年度、2017年度、2018年度、2019年度、2020年度医科レセプト及び介護レセプトを用いて一人当たり医療費及び介護給費を求め、介護サービス利用の有無別にこれらの値を比較した。
3. 要介護高齢者の医療介護ニーズに適切に対応するための地域ネットワークの先進事例の検討― 函館市におけるはこだて医療介護連携サマリーを活用した連携事例の分析―: ICTを用いて「はこだて医療介護連携サマリー」を医療介護の関係者間で共有するシステムを実装している函館市では、要介護高齢者の多面的なアセスメント結果をもとに、総合的なケアマネジメントを行う体制が構築されている。本研究ではその事例を収集し、その内容を分析した。
4.特養における福祉用具利用及び抗精神病薬処方の実態調査:茨城県介護・医療レセプトデータ、介護サービス情報公表システムのデータを使用し、2018年7月〜2019年3月の期間に特養に入所しているものを対象として向精神薬の処方実態を分析した。また、入所者の福祉用具利用状況を調査した。
5.自立支援に資する介護等の類型化及びエビデンスの体系的な整理に関する研究:介護老人保健施設、特別養護老人ホームの職員に対して自立支援を目的としたケアマネジメントの現状を構造化された質問票で検討した。
結果と考察
1. ADL/IADL及び主な傷病別別に、居宅介護サービスが要介護度の変化に及ぼす影響の分析: 分析の結果、要介護度の悪化防止を目的とした時、それに効果的な介護サービスは訪問入浴介護以外ほとんど検出されなかった。要介護度の悪化が多くの高齢者にとって死に至る過程の一部であることを考えると、身体的な機能低下の予防ではなく、人生の最終段階における療養生活の質を維持、向上させるケアママネジメントがより重要であると考えられた。
2. 介助介護が必要な高齢者における介護サービス利用の有無別にみた医療費及び介護給付費の状況の検討: 「介助・介護が必要である」高齢者について、介護サービス利用の有無別に、医療費及び介護給付費の状況を比較検討した。その結果、2016年の調査時にサービス利用の有無で、医療費には差がないが、介護給付費は利用ない者で低いことが明らかとなった。未利用者は、IADLが低く、口腔機能や栄養の平均スコアの低かった。また、経済状況も悪い者が多かった。
3. 要介護高齢者の医療介護ニーズに適切に対応するための地域ネットワークの先進事例の検討― 函館市におけるはこだて医療介護連携サマリーを活用した連携事例の分析―: はこだて医療介護連携サマリーを用いた連携事例とICFシートの活用事例を収集しその内容を分析した。
4.特養における抗精神病薬の実態調査:抗精神病薬の処方割合:7.0%、ベンゾジアゼピンの処方割合:17.0%、Z-drugの処方割合:5.9%であり、Z-drug処方者では処方されていない者と比べ新規骨折の発生割合が有意に多かった。福祉用具では、入所前からの車椅子を継続利用している者でADLの維持がなされていた。
5.自立支援に資する介護等の類型化及びエビデンスの体系的な整理に関する研究:従来型居室形態でも、利用者のADLやコミュニケーション等の状態別に集団化することで、利用者が活性化し、個別性のあるプランの立案が容易になっていることが明らかとなった。
結論
自立支援型介護自立支援に資する介護の方法等の類型化を行い、どのような介護の方法が、どのような利用者のどのようなアウトカムを改善するのかという明確なエビデンスを示すことは困難であった。むしろ、人生の最終段階における高齢者のICF的な視点での多様性に着目して柔軟なケアマネジメントを多職種で行える体制を作ることが重要であると考えられた。また、在宅・入所に関わらず継続的なケアができる体制や服薬管理が重要であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2025-05-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202315011C

成果

専門的・学術的観点からの成果
要介護度の悪化防止のための状態像とサービスの組み合わせの類型化について検討したが、明確な知見は得られなかった。人生の最終段階においては、心身の自立度が低下する中で、生きていく目標(生きがい)をいかに維持するかが重要であり、またその理解なしにACPを進めることもできない。高齢者の状況を多職種でアセスメントし、その時々の状況に応じたケアサービスを柔軟に提供していく体制づくりが重要であると考えられる。
臨床的観点からの成果
入所時に在宅で利用していた福祉機器が恵贈して使えること、抗不安薬等の薬剤管理を適切に行うことが、自立支援に重要であることが示された。また、多職種によるチームアプローチが自立支援に重要であることが示された。
ガイドライン等の開発
はこだて地域の実践事例をもとに、自立支援のためのICF的視点からの、経過観察記録の標準様式を提案した。
その他行政的観点からの成果
自立支援のためには、多職種が継続的に、共通の情報基盤で対象者のケアに対処することが必要であることが、本研究で明らかとなった。その基盤としてはこだて医療介護連携サマリーの有効性が示された。今後、これを参考に情報共有の仕組みが開発されることが期待される。
その他のインパクト
特になし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2025-05-13
更新日
-

収支報告書

文献番号
202315011Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,561,000円
(2)補助金確定額
9,561,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 452,813円
人件費・謝金 1,456,692円
旅費 93,600円
その他 5,351,895円
間接経費 2,206,000円
合計 9,561,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2025-05-13
更新日
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