間葉系幹細胞を利用した新しい造血幹細胞移植技術の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200934032A
報告書区分
総括
研究課題名
間葉系幹細胞を利用した新しい造血幹細胞移植技術の開発に関する研究
課題番号
H20-免疫・一般-020
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
小澤 敬也(自治医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 尾崎 勝俊(自治医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
6,396,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
間葉系幹細胞(MSC: mesenchymal stem cell)には免疫抑制作用があることが明らかにされ、その臨床応用(MSCを用いた細胞治療)として、同種造血幹細胞移植後のステロイド不応性の重症急性移植片対宿主病(GVHD)に対する治療効果が期待されている。本研究ではMSCの免疫抑制能に関する基礎研究を行い、造血幹細胞移植へのMSCの臨床応用を推進する。
研究方法
1)ヒトMSCのT細胞抑制能を調べた。培養上清中のNO濃度を測定し、NO産生阻害剤のL-NAMEを添加して検討した。さらに、PGE2産生阻害剤のindomethacinと、IDO産生阻害剤の1-MTの作用を検討した。2)IL-21のデコイ受容体をアデノウイルスベクターでMSCに発現させた。3)ヒトMSCバンク:様々な患者からMSCを樹立した。4)重症急性GVHDに対するMSC治療の臨床研究:対象患者の血縁者から骨髄の提供を受け、MSCの分離と培養を行い、MSC治療を実施した。
結果と考察
1)ヒトMSCではNOの関与は認められなかった。PGE2阻害剤でMSCによるT細胞増殖抑制の部分的解除が認められた。IDO阻害剤では抑制解除は認められなかった。ヒトMSCの免疫抑制能には、PGE2の関与が考えられた。2)アデノウイルスベクターを用いてMSCにIL-21デコイ受容体を発現させ、ウエスタンブロットとFACSで確認した。3)ヒトMSCバンク:本年度は17例が新規登録され、現在までに48症例分を集めた。今後、年齢による違いなどを検討していきたい。4)これまで計9例で治療目的にMSCを準備した。本年度は1症例で実際に治療を行った。非血縁者間移植後の重症GVHDで、MMF, ATG, ステロイドが無効であったため、MSC(1x10e6/kg)を2回投与したが、効果は得られなかった。MSC治療の開始時期やMSCの投与量・投与期間についてさらに検討が必要と考えられた。
結論
1)ヒトMSCの免疫抑制能に関して、PGE2の関与が示唆された。2)アデノウイルスベクターの使用により、IL-21デコイ受容体をMSCに高発現させることができた。3)ヒトMSCバンクについて、総計48症例から樹立を行った。4)難治性急性 GVHD患者に対してMSCを投与したが、明らかな臨床的効果は認められなかった。

公開日・更新日

公開日
2010-10-19
更新日
-