薬学的視点を踏まえた自立支援・重度化防止推進のための研究

文献情報

文献番号
202315005A
報告書区分
総括
研究課題名
薬学的視点を踏まえた自立支援・重度化防止推進のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22GA1005
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
溝神 文博(国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 病院 薬剤部)
研究分担者(所属機関)
  • 岡崎 光洋(東京大学・大学院薬学系研究科 医薬政策学講座)
  • 竹屋 泰(大阪大学 医学部)
  • 伊藤 直樹(国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター リハビリテーション科部)
  • 岡田 希和子(名古屋学芸大学 管理栄養学部)
  • 浜田 将太(一般財団法人 医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構 研究部)
  • 枝広 あや子(地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所)
  • 高橋 寛(岩手医科大学 薬学部 臨床薬学講座 地域医療薬学分野)
  • 小宮 仁(名古屋大学 医学部附属病院)
  • 水野 智博(藤田医科大学 医学部)
  • 長谷川 みどり(藤田医科大学 医学部)
  • 岸本 桂子(昭和大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学政策研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
4,248,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
在宅患者訪問薬剤管理指導を推進する上で、多職種連携が重要であるが、薬剤師は在宅医療において多職種連携が不十分である。そこで本研究は、在宅においてポリファーマシー対策を推進するべく、薬剤師が地域医療レベルで関連職種と情報共有するための様式案と体制を構築し、実際の現場でその効果を検証することを目的としている。初年度は実態調査と様式案作成、次年度には実装を行い、様式およびガイドを完成させることを目指す。  
<令和5年度の目標>
薬剤師がポリファーマシー対策を行うため関連職種に情報共有を行う様式案の作成及び介護施設で関連職種に情報提供を行う様式案及び情報共有方法の作成、ガイドの作成。
情報共有の様式及び方法の各現場での実装及び電子的な情報連携に関する調査研究
研究方法
本年度は、前年度に行ったアンケート調査および既存の報告書の収集、好事例集などの情報をもとに、おくすり問診票、多職種連携のための薬学的評価シート、訪問薬剤管理指導の報告書を作成し、多職種連携のための訪問薬剤管理指導の流れの検討を行った。その後、おくすり問診票、多職種連携のための薬学的評価シートに係る項目を抽出し、多職種連携推進のための在宅患者訪問薬剤管理指導ガイドを研究分担者・研究協力者とともに執筆を行った。電子的な情報連携に関する調査研究として、株式会社アクシスの協力のもと、クラウド型電子薬歴の固定機端末またはタブレット端末を使用して在宅・居宅指導業務を行った70歳以上の患者を対象に解析した。
結果と考察
令和5年度の研究において、訪問薬剤管理指導の際に関連職種と情報共有を行うための様式を作成し、その情報共有方法を提示した。また、その様式に関する解説として、在宅医療における薬物治療の適正化を目指し、薬剤師が地域医療レベルで他職種との情報共有を効果的に行うために「多職種連携推進のための在宅患者訪問薬剤管理指導ガイド」を開発した。初年度の文献調査と実態調査を基に、このガイドは多職種との情報共有を強化し、薬物治療の質を向上させるための具体的な手法を提供する。ポイントは薬剤師が自ら情報を収集することができるように、おくすり問診票を導入した。自己回答形式でかつ薬剤起因性老年症候群の評価が行える。これにより、処方カスケードのリスクを減少させ、患者の安全と健康を守ることが可能となる。高齢者総合機能評価(CGA)の活用もガイドに組み込まれており、全体的な健康状態を評価し、個別のニーズに応じた薬学的管理を行うための基盤を提供する。このガイドの実装と適用は、在宅医療と介護老人保健施設における薬物治療の質を根本から改善し、多職種連携を促進し、患者のQOL向上に大きく寄与することが期待される。
開発ツール等一覧
・多職種連携推進のための在宅患者訪問薬剤管理指導ガイド
・在宅医療で遭遇しやすい薬剤起因性老年症候群の原因薬の一覧
・おくすり問診票
・多職種連携のための薬学的評価シート
・訪問薬剤管理指導の報告書
・老健施設退所時情報連携書式(かかりつけ医連携様式B)
なお、本成果物は、https://www.ncgg.go.jp/hospital/kenshu/organization/yakugaku.html、に公開を行った。
電子的な情報連携に関する調査研究として、クラウド型電子薬歴機能を搭載したタブレット端末の使用が在宅・訪問薬剤管理指導に与える影響を評価した。総対象患者数は53,836人であり、70歳未満、在宅・居宅指導外の算定、指導記録が抽出できなかった患者を除外し、対象患者数は33,405人となった。これらの患者をタブレット端末なしグループ(6,118人)とタブレット端末ありグループ(27,287人)に分けた。タブレット端末を使用したグループの平均服薬指導回数は5.4回であり、タブレット端末なしグループの4.4回と比較して有意に多かった(p < 0.01)。高齢者総合的機能評価の実施率はタブレット端末ありグループで46.8%(12,780人)であり、タブレット端末なしグループの33.4%(2,044人)と比較して有意に高かった(p < 0.01)。外来服薬支援料2の算定件数もタブレット端末ありグループで66.6%(18,170人)であり、タブレット端末なしグループの33.8%(2,068人)と比較して有意に多かった(p < 0.01)。
結論
「多職種連携推進のための在宅患者訪問薬剤管理指導ガイド」を開発した。クラウド型電子薬歴機能を搭載したタブレット端末は、在宅・訪問薬剤管理指導において有効なツールであると結論付けられる。
 本ガイドは在宅医療と介護老人保健施設における薬物治療の質を向上させるための基盤を提供し、多職種連携の実現に寄与するものである。今後の普及と実践を通じて、患者のQOL向上に大きく貢献することが期待される。

公開日・更新日

公開日
2025-05-13
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2025-05-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202315005B
報告書区分
総合
研究課題名
薬学的視点を踏まえた自立支援・重度化防止推進のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22GA1005
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
溝神 文博(国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 病院 薬剤部)
研究分担者(所属機関)
  • 岡崎 光洋(東京大学大学院薬学系研究科 医薬政策学講座)
  • 竹屋 泰(大阪大学 医学部)
  • 伊藤 直樹(国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター リハビリテーション科部)
  • 岡田 希和子(名古屋学芸大学 管理栄養学部)
  • 浜田 将太(一般財団法人 医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構 研究部)
  • 枝広 あや子(地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所)
  • 高橋 寛(岩手医科大学 薬学部 臨床薬学講座 地域医療薬学分野)
  • 小宮 仁(名古屋大学 医学部附属病院)
  • 水野 智博(藤田医科大学 医学部)
  • 長谷川 みどり(藤田医科大学 医学部)
  • 岸本 桂子(昭和大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学政策研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
訪問薬剤管理指導におけるポリファーマシー対策では、情報収集が最も重要である。ポリファーマシーは薬剤数に限らず、重複投与、薬物有害事象、服薬アドヒアランスの低下、過量投与・過小医療の回避などの薬物療法の適正化が求められる。これには、処方歴や病状に加え、認知機能、ADL、栄養状態、生活環境など多角的な情報が必要であり、多職種の介入が不可欠である。
 薬局薬剤師へのアンケート調査から、「ポリファーマシーの判断」や「病態全体の把握」が難しいことが障壁として示されている。これを踏まえ、訪問薬剤管理指導では薬局薬剤師と医師・歯科医師を含む多職種での情報共有が必要である。
 本研究の究極的な目的は、在宅医療における多職種連携のモデルを確立し、地域医療レベルでの薬物治療の適正化を実現することにより、患者の安全とQOLの向上に寄与することである。この目的達成のために、初年度からの継続的な実態調査、様式案の作成、及び最終年度のガイド開発を行ってきた。
各年度の目標は以下の通りである:
訪問薬剤管理指導に対する各職種との情報共有に関する実態調査(令和4年度)
訪問薬剤管理指導の実態調査(薬剤師)(令和4年度)
介護老人保健施設での薬剤師と医師・歯科医師を含む各職種の情報共有の実態調査(令和4年度)
ポリファーマシー対策のための情報共有様式案の作成及び介護施設での情報提供方法の作成(令和5年度)
情報共有の様式及び方法の実装及び電子的な情報連携の調査研究(令和5年度)
 これにより、初年度からの継続的な実態調査、様式案の作成、最終年度のガイド開発を行い、在宅医療における多職種連携を強化し、地域医療の質を向上させることを目指す。
研究方法
 文献調査、アンケート調査を含む実態調査および解析をおこなった。また、報告書の様式案作成のため既存の報告書収集、多職種連携による処方適正化に関する好事例集の作成、更には、介護老人保健施設に関する実地調査および座談会を行った。
 アンケート調査および既存の報告書の収集、好事例集などの情報をもとに、おくすり問診票、多職種連携のための薬学的評価シート、訪問薬剤管理指導の報告書を作成し、多職種連携のための訪問薬剤管理指導の流れの検討を行った。その後、おくすり問診票、多職種連携のための薬学的評価シートに係る項目を抽出し、「多職種連携推進のための在宅患者訪問薬剤管理指導ガイド」を作成するため、研究分担者・研究協力者とともに執筆を行った。電子的な情報連携に関する調査研究として、株式会社アクシスの協力のもと、クラウド型電子薬歴の固定機端末またはタブレット端末を使用して在宅・居宅指導業務を行った70歳以上の患者を対象に解析した。
結果と考察
アンケート調査の結果、多くの薬剤師が多職種連携の必要性を認識しているが、看護師以外の職種への情報提供は非常に少ない。また、提供される情報は「薬」に関する物理的なものが多く、多職種が求める薬物療法の有効性・安全性に関する情報が不足していた。好事例集の作成及び介護老人保健施設の薬剤師による聞き取り調査を実施し、簡便な情報収集のツールの作成が必要であると考えられた。
 クラウド型電子薬歴機能を搭載したタブレット端末の導入は、在宅・訪問薬剤管理指導において有効なツールであると結論付けられる。
 訪問薬剤管理指導の際に関連職種と情報共有を行うための様式を作成し、その情報共有方法を提示した。また、その様式に関する解説として、在宅医療における薬物治療の適正化を目指し、薬剤師が地域医療レベルで他職種との情報共有を効果的に行うために「多職種連携推進のための在宅患者訪問薬剤管理指導ガイド」を開発した。ポイントは薬剤師が自ら情報を収集することができるように、おくすり問診票を導入した。自己回答形式でかつ薬剤起因性老年症候群の評価が行える。これにより、処方カスケードのリスクを減少させ、患者の安全と健康を守ることが可能となる。高齢者総合機能評価(CGA)の活用もガイドに組み込まれており、全体的な健康状態を評価し、個別のニーズに応じた薬学的管理を行うための基盤を提供する。このガイドの実装と適用は、在宅医療と介護老人保健施設における薬物治療の質を根本から改善し、多職種連携を促進し、患者のQOL向上に大きく寄与することが期待される。
結論
多職種連携推進のための在宅患者訪問薬剤管理指導ガイドは、プレスリリースを行い、国立長寿医療研究センターホームページ上で公開した。また、ガイドに関する普及用のパワーポイントの教育資材を作成した。本成果物は、https://www.ncgg.go.jp/hospital/kenshu/organization/yakugaku.html、に公開を行った。

公開日・更新日

公開日
2025-05-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202315005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
(1) 研究成果
「多職種連携推進のための在宅患者訪問薬剤管理指導ガイド」を開発した。
(2) 研究成果の学術的・国際的・社会的意義
本ガイドは、これまでに在宅医療における薬剤師のガイドが存在しなかったため、各薬剤師会から大きな反響があった。
臨床的観点からの成果
このガイドの実装と適用は、在宅医療と介護老人保健施設における薬物治療の質を根本から改善し、多職種連携を促進し、患者のQOL向上に大きく寄与することが期待される。
ガイドライン等の開発
多職種連携推進のための在宅患者訪問薬剤管理指導ガイドは、プレスリリースを行い、国立長寿医療研究センターホームページ上で公開した。また、ガイドに関する普及用のパワーポイントの教育資材を作成した。作成した教育資材をもとに各薬剤師会等で講演会などを実施し、普及に努める予定である。また、ガイドを用いた介入研究など効果実証研究も行う予定である。
その他行政的観点からの成果
本ガイドは、令和6年度調剤報酬改定の資料として引用された。 診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知)令和6年3月5日保医発0305第4号 別添3 調剤報酬点数表に関する事項
その他のインパクト
本ガイドに関する内容が下記2件記事として報道された。
・薬剤師向け「在宅多職種連携」ガイド公開 PHARMACY NEWSBREAK 2024年2月29日に掲載された。
・高齢者の「ポリファーマシー」 多剤服用 訪問指導で防ぐ 
国立長寿研が在宅、施設向けガイド公表 2024年4月23日 中日新聞朝刊26面に掲載された。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
令和6年度調剤報酬改定の資料となった。
その他成果(普及・啓発活動)
3件
マスコミ発表3件、ホームページ1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
鈴木亮平,浜田将太,糀屋絵理子,田口怜奈,神保美紗子,竹屋 泰,溝神文博
在宅医療における多職種による情報共有および 服薬管理・薬物療法に関する業務の実態調査
医療薬学 , 51 (1) , 35-45  (2025)
https://doi.org/10.5649/jjphcs.51.35
原著論文2
Tomohiro Mizuno, Sho Hasegawa and Fumihiro Mizokami
Factors necessary for a community pharmacist to achieve interprofessional collaboration in home-based care in Japan
Geriatrics & Gerontology International , 24 (10) , 1008-1014  (2024)
https://doi.org/10.1111/ggi.14963

公開日・更新日

公開日
2025-05-13
更新日
2025-06-02

収支報告書

文献番号
202315005Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,522,000円
(2)補助金確定額
5,169,000円
差引額 [(1)-(2)]
353,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,202,037円
人件費・謝金 980,250円
旅費 635,663円
その他 1,077,183円
間接経費 1,274,000円
合計 5,169,133円

備考

備考
自己資金133円

公開日・更新日

公開日
2025-05-13
更新日
-