文献情報
文献番号
202315002A
報告書区分
総括
研究課題名
医療および介護レセプトデータ分析による在宅医療・介護連携推進のための適正な評価指標等の提案のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22GA1001
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
赤羽 学(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
研究分担者(所属機関)
- 山口 佳小里(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
- 大夛賀 政昭(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
- 中西 康裕(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
- 西岡 祐一(奈良県立医科大学 公衆衛生学講座)
- 次橋 幸男(奈良県立医科大学 公衆衛生学講座)
- 柴山 志穂美(神奈川県立保健福祉大学 実践教育センター 保健福祉学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学政策研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
3,948,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
高齢者が今後さらに増加するため、在宅医療・介護提供体制の整備は急務であるが、それら提供体制の詳細な実態把握は十分ではない。講じるべき施策を検討する際に有用な指標等も行政や医療・介護関係者間での共有が不十分である。また、在宅医療・介護連携推進事業の取り組みでは協議会の設置等、連携体制は整いつつある一方で、地域の実情を踏まえたPDCAの運用・事業展開は十分には行われていない。定量的・定性的な地域の現状把握を基に、目標設定・課題抽出・対応策の検討を行いPDCAの運用で重要な指標が設定されるが、多くの自治体において指標設定に困難を生じている現状がある。そこで本研究では、既存の指標に加えて新規指標案の検討も行い、在宅医療・介護連携推進のための適正な評価指標等を提案することを目的とする。
研究方法
1年目に得られた研究成果に基づき、既存指標の妥当性の評価及び適正な評価項目等を提示するために次に示す課題を実施した。
①地域包括ケア「見える化」システムに掲載された重要指標の42指標と保険者機能強化推進交付金の在宅医療・介護連携スコアに関する相関分析
②令和5年度在宅医療・介護連携推進支援事業で収集された市町村調査データの二次分析と在宅医療・介護連携に関する住民ニーズのアンケート調査
③地域の実情に応じた評価指標の妥当性と実用可能性について検討するためのインタビュー調査
④在宅医療・介護連携に関する地域差を可視化するためのレセプトを用いた指標案の検討
⑤医療・介護の突合レセプトデータを用いて多職種による在宅医療・介護連携に係る分析を円滑に実施するための検討
①地域包括ケア「見える化」システムに掲載された重要指標の42指標と保険者機能強化推進交付金の在宅医療・介護連携スコアに関する相関分析
②令和5年度在宅医療・介護連携推進支援事業で収集された市町村調査データの二次分析と在宅医療・介護連携に関する住民ニーズのアンケート調査
③地域の実情に応じた評価指標の妥当性と実用可能性について検討するためのインタビュー調査
④在宅医療・介護連携に関する地域差を可視化するためのレセプトを用いた指標案の検討
⑤医療・介護の突合レセプトデータを用いて多職種による在宅医療・介護連携に係る分析を円滑に実施するための検討
結果と考察
①全国の自治体を対象として、「見える化」に収載されている合計42指標と保険者機能強化推進交付金の在宅医療・介護連携スコアについて、指標間の相関分析を行ったところ、看取り関連指標と訪問診療系指標、入退院支援関連指標2つと緊急時訪問看護加算において、自治体の規模によらず関連があった。小規模自治体においては、緊急時の対応関連指標と訪問診療系指標ならびに入退院支援指標と、在宅・施設サービス受給比と看護体制強化加算との間にのみ関連がみられた。
②市町村調査データ(回収数1,714)を用いて、4つの場面ごとの取り組みの有無、目指すべき姿の設定、目標設定、指標の策定、実施していない場合の課題について人口規模ごとに集計を行ったところ、4つの場面ごとの目指すべき姿は約4割、目指すべき姿に対する目標の設定は約3割、評価指標の策定約2割の実施にとどまり、人口規模が小さいほどその実施割合が低くなる傾向があった。アンケート調査(1,240例対象)では、家族の在宅療養について賛成である群のほうが、家族の看取りにも賛成の意向が強く、在宅療養や退院後の生活に対する不安が小さい傾向がみられた。
③モデル都道府県内の自治体を対象としたヒアリングを通して、「日頃の取り組みを客観的に裏付けられる」「データから事業改善や課題解決の見通しを立てる」など、指標の活用における利点、有用性が明らかになった。一方、「指標の定義が不明」「医療機関所在地ベースでは、自治体での活用に限界」「データと自治体の実感との不一致」などの課題があげられた。
④レセプトを用いた指標案の検討では、既存指標単体での活用に限定せず、指標同士の組み合わせ等により定量的な妥当性の検証ができないかを検討した。自治体間で比較可能な評価指標案として示した標準化レセプト出現比(SCR)は、隣接する自治体や同程度の規模の自治体との比較の中で、各自治体がサービス提供の実態を把握することを可能とし、行政の実務的な観点から有用であると考えられる。各自治体がレセプトを活用し、評価指標の具体的な数値として用いることを推進するには、国の手引きにおいてレセプト上の定義付け等を整備することが求められる。非公表ガイドラインによって、レセプトデータの集計値が10未満あるいは人口2,000人未満の小規模自治体は非表示にしなければならずデータ活用において制限があるため、今後改善すべき課題である。
⑤医療・介護の突合レセプトデータを用いて多職種による在宅医療・介護連携に係る分析を円滑に実施するために、管理栄養士、歯科衛生士、薬剤師による介護保険上の居宅療養管理指導と関連のある医療保険上の評価(医科、歯科、調剤)及び居宅療養管理指導以外の介護保険サービスを整理できた。これによって、多職種によるサービス提供状況を分析するために必要な項目が明らかになった。
②市町村調査データ(回収数1,714)を用いて、4つの場面ごとの取り組みの有無、目指すべき姿の設定、目標設定、指標の策定、実施していない場合の課題について人口規模ごとに集計を行ったところ、4つの場面ごとの目指すべき姿は約4割、目指すべき姿に対する目標の設定は約3割、評価指標の策定約2割の実施にとどまり、人口規模が小さいほどその実施割合が低くなる傾向があった。アンケート調査(1,240例対象)では、家族の在宅療養について賛成である群のほうが、家族の看取りにも賛成の意向が強く、在宅療養や退院後の生活に対する不安が小さい傾向がみられた。
③モデル都道府県内の自治体を対象としたヒアリングを通して、「日頃の取り組みを客観的に裏付けられる」「データから事業改善や課題解決の見通しを立てる」など、指標の活用における利点、有用性が明らかになった。一方、「指標の定義が不明」「医療機関所在地ベースでは、自治体での活用に限界」「データと自治体の実感との不一致」などの課題があげられた。
④レセプトを用いた指標案の検討では、既存指標単体での活用に限定せず、指標同士の組み合わせ等により定量的な妥当性の検証ができないかを検討した。自治体間で比較可能な評価指標案として示した標準化レセプト出現比(SCR)は、隣接する自治体や同程度の規模の自治体との比較の中で、各自治体がサービス提供の実態を把握することを可能とし、行政の実務的な観点から有用であると考えられる。各自治体がレセプトを活用し、評価指標の具体的な数値として用いることを推進するには、国の手引きにおいてレセプト上の定義付け等を整備することが求められる。非公表ガイドラインによって、レセプトデータの集計値が10未満あるいは人口2,000人未満の小規模自治体は非表示にしなければならずデータ活用において制限があるため、今後改善すべき課題である。
⑤医療・介護の突合レセプトデータを用いて多職種による在宅医療・介護連携に係る分析を円滑に実施するために、管理栄養士、歯科衛生士、薬剤師による介護保険上の居宅療養管理指導と関連のある医療保険上の評価(医科、歯科、調剤)及び居宅療養管理指導以外の介護保険サービスを整理できた。これによって、多職種によるサービス提供状況を分析するために必要な項目が明らかになった。
結論
既存の指標に加えて新規指標案に関する検討も行い、在宅医療・介護連携推進のため課題を明らかにした。4つの場面ごとの取り組みを推進する具体例やわかりやすいガイドラインの提示、小規模自治体支援の広域的な取り組みが必要である。
公開日・更新日
公開日
2025-05-13
更新日
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