文献情報
文献番号
202315001A
報告書区分
総括
研究課題名
早期の在宅療養移行及び療養継続支援における訪問看護による効果測定及び評価のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
21GA1002
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
山本 則子(東京大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
- 五十嵐 歩(東京大学 大学院医学系研究科)
- 野口 麻衣子(渡邊 麻衣子)(東京医科歯科大学大学院 保健衛生学研究科)
- 目 麻里子(筑波大学 医学医療系)
- 角川 由香(東京大学 大学院医学系研究科)
- ELTAYBANI SAMEH(エルタイバニ サメハ)(東京大学 大学院医学系研究科)
- 沼田 華子(東京大学 大学院医学系研究科)
- 高岡 茉奈美(東京大学 大学院医学系研究科)
- 柏原 康佑(東京大学 医学部附属病院)
- 小島 太郎(東京大学 大学院医学系研究科)
- 北村 智美(一般財団法人医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構 研究部)
- 弓野 大(医療法人社団ゆみの)
- 新田 國夫(医療法人社団つくし会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
6,411,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
1)訪問看護提供による効果、サービスの充実度を測定するための標準化評価指標を開発すること(研究本本本研究の目的は、1)、2)看取り期を含む対象への前向き研究により、訪問看護の効果、サービスの充実度を可視化すること(研究2,3,5)、3)評価指標を活用したサービスの充実に向けた評価方法(PDCAサイクル)を提案することである(研究4)。
研究方法
研究1では、開発した評価指標の再テスト信頼性、評価者間信頼性、実施可能性を検討するため、訪問看護師62名・介護支援専門員14名を対象に質問紙調査およびインタビュー調査を実施した。
研究2では、高齢者のアウトカム(死亡率、入院、施設入居、生活の質、満足度)に対する訪問看護の効果を検討することを目的とし、PubMed、CINAHL、PsycINFO、Cochrane Database、PROSPERO、Epistemonikos、ProQuestを対象にアンブレラレビューを実施した。
研究3では、訪問看護の効果を検討するため、既存のコホート調査に参加していた75歳以上の在宅療養者547名(訪問看護利用群411名、非利用群136名)に対し、24,36,48カ月後調査を継続した。
研究4では、評価指標を用いた質改善PDCAサイクル提案のため、訪問看護事業所の管理者・職員に対し、質改善の取り組み等についてインタビューおよび訪問看護事業所における質改善に関する量的な調査を実施し、介入プログラム(VENUS QIC)を開発し、管理者を対象とした6カ月間の介入プログラムを実施した。
研究5では、心不全高齢患者の訪問看護利用群と非利用群における訪問看護介入の効果を検討するため、訪問看護利用開始時から6カ月間の前向き縦断研究を実施した。
研究2では、高齢者のアウトカム(死亡率、入院、施設入居、生活の質、満足度)に対する訪問看護の効果を検討することを目的とし、PubMed、CINAHL、PsycINFO、Cochrane Database、PROSPERO、Epistemonikos、ProQuestを対象にアンブレラレビューを実施した。
研究3では、訪問看護の効果を検討するため、既存のコホート調査に参加していた75歳以上の在宅療養者547名(訪問看護利用群411名、非利用群136名)に対し、24,36,48カ月後調査を継続した。
研究4では、評価指標を用いた質改善PDCAサイクル提案のため、訪問看護事業所の管理者・職員に対し、質改善の取り組み等についてインタビューおよび訪問看護事業所における質改善に関する量的な調査を実施し、介入プログラム(VENUS QIC)を開発し、管理者を対象とした6カ月間の介入プログラムを実施した。
研究5では、心不全高齢患者の訪問看護利用群と非利用群における訪問看護介入の効果を検討するため、訪問看護利用開始時から6カ月間の前向き縦断研究を実施した。
結果と考察
研究1では、一定程度の信頼性・表面妥当性は担保されたが、更なる信頼性・実施可能性の向上が必要であるとの示唆を得た。さらなる信頼性・実施可能性向上のため、評価ガイドを作成し、その効果を検討した。評価ガイドの利用により、評価者間信頼性がさらに向上した一方、評価ガイドを活用しても欠損割合および評価者間信頼性が改善しないものもあった。評価ガイドを用いても実施可能性、評価者間信頼性が不十分だった項目については、質問文の文言や回答選択肢の見直しを含めて検討する必要がある。
研究2では、諸外国の文献を含んだアンブレラレビューの結果、訪問看護は、死亡率、施設入所、利用者満足度、QOLに有意な影響を及ぼすという結果は得られなかった。一方で、訪問看護は、入院回数を減らす効果が示された。その他、ADL改善、自宅療養する高齢者の増加など、訪問看護提供による効果を示した研究もあった。しかしながら、本レビューで訪問看護の効果を結論づけることはできなかった。その理由として、提供された介入内容が簡潔な記述にとどまっていること、国による文脈の違いに関するデータの欠如、そしてフォローアップ期間のばらつきなどが挙げられる。
研究3では、既存の前向きコホート調査に参加していた75歳以上の在宅療養高齢者を対象に、24,36,48カ月後調査を実施した。分析の結果、訪問看護利用群は、非利用群に比べて状態像が悪い一方、36ヵ月後調査時点まで全身状態の悪化に差がなく経過していることから、要介護高齢者への訪問看護提供は、全身状態の悪化予防につながる可能性が見出された。
研究4では、事業所の質向上を図るPDCA プログラムとして、ICTを利用したQIC(Quality Improvement Collaborative)が開発された(VENUS QIC)。VENUS QICは、「ポジティブフィードバックを用いた事例検討」を主軸とした訪問看護ステーション管理者対象のプログラムであり、VENUS QICを受講することにより、管理者が自事業所の強みに目を向けることでケアの質向上の取り組みを後押しすることことが期待できる。一方、VENUS QIC は参加者の負担減を最大限考慮したが、主催者・参加者双方にとって、一層のエフォートレス実現が重要課題である。
研究5では、心不全高齢患者の6カ月間の前向き縦断研究により、高齢心不全患者の訪問看護利用が、3か月後の心不全のセルフケア、QOL、安心感を改善させる可能性があり、短期的な訪問看護利用ではなく継続的な利用が有用であることが示唆された。
研究2では、諸外国の文献を含んだアンブレラレビューの結果、訪問看護は、死亡率、施設入所、利用者満足度、QOLに有意な影響を及ぼすという結果は得られなかった。一方で、訪問看護は、入院回数を減らす効果が示された。その他、ADL改善、自宅療養する高齢者の増加など、訪問看護提供による効果を示した研究もあった。しかしながら、本レビューで訪問看護の効果を結論づけることはできなかった。その理由として、提供された介入内容が簡潔な記述にとどまっていること、国による文脈の違いに関するデータの欠如、そしてフォローアップ期間のばらつきなどが挙げられる。
研究3では、既存の前向きコホート調査に参加していた75歳以上の在宅療養高齢者を対象に、24,36,48カ月後調査を実施した。分析の結果、訪問看護利用群は、非利用群に比べて状態像が悪い一方、36ヵ月後調査時点まで全身状態の悪化に差がなく経過していることから、要介護高齢者への訪問看護提供は、全身状態の悪化予防につながる可能性が見出された。
研究4では、事業所の質向上を図るPDCA プログラムとして、ICTを利用したQIC(Quality Improvement Collaborative)が開発された(VENUS QIC)。VENUS QICは、「ポジティブフィードバックを用いた事例検討」を主軸とした訪問看護ステーション管理者対象のプログラムであり、VENUS QICを受講することにより、管理者が自事業所の強みに目を向けることでケアの質向上の取り組みを後押しすることことが期待できる。一方、VENUS QIC は参加者の負担減を最大限考慮したが、主催者・参加者双方にとって、一層のエフォートレス実現が重要課題である。
研究5では、心不全高齢患者の6カ月間の前向き縦断研究により、高齢心不全患者の訪問看護利用が、3か月後の心不全のセルフケア、QOL、安心感を改善させる可能性があり、短期的な訪問看護利用ではなく継続的な利用が有用であることが示唆された。
結論
訪問看護提供による効果、サービスの充実度を測定するための標準化評価指標を開発され、看取り期を含む対象への前向き研究により、訪問看護の効果、サービスの充実度を可視化した。さらに、開発した評価指標を活用したサービスの充実に向けた評価方法(PDCAサイクル)を提案した。
公開日・更新日
公開日
2025-05-13
更新日
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