組織適合性に基づく非血縁同種造血幹細胞移植の成績向上に関する研究

文献情報

文献番号
200934026A
報告書区分
総括
研究課題名
組織適合性に基づく非血縁同種造血幹細胞移植の成績向上に関する研究
課題番号
H20-免疫・一般-014
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
森島 泰雄(愛知県がんセンター中央病院 血液・細胞療法部)
研究分担者(所属機関)
  • 猪子 英俊(東海大学医学部)
  • 笹月 健彦(国立国際医療センター研究所)
  • 小川 誠司(東京大学医学部)
  • 村田 誠(名古屋大学医学部)
  • 屋部 登志雄(東京都赤十字血液センター)
  • 高見 昭良(金沢大学付属病院輸血部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
22,750,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、日本骨髄バンク(JMDP)を介した患者とドナーのペアーの同意が得られた検体を保存し、より精緻な細胞遺伝学的な手法を用い、HLAとHLA以外の組織適合性抗原とその多型が移植免疫反応に与える影響を明らかにする。これら患者とドナーの組織学的な情報と臨床情報に基づき、適切なドナー選択の個別化アルゴリズム(基準)を構築することを目的とする。
研究方法
1.非血縁者間骨髄移植症例とそのドナーの検体保存
2.HLA抗原座およびHLA抗原型の違いが移植免疫反応と生存に及ぼす影響の解析
3.HLAハプロタイプの均一性の検討 HLA領域のmulti-SNPsデータを用いて解析
4.HLA以外の組織適合性に関与する抗原と多型の移植成績に及ぼす影響の検討
  Whole genome SNPs 、マイクロサテライト、サイトカイン受容体、NK細胞受容体、In vitro解析
結果と考察
1.日本人に特有なHLAハプロタイプとその高度な保存性の解析:高頻度なハプロタイプではHLA-A座からHLA-DPB1座までの3.3 Mbが高度に保存されているだけでなく、HLA-A座のテロメア側に広範囲に保存されていた。さらに、HP-1ではHLA-Aのテロメア側でsubtype AとBに分かれることが判明した。
2.非血縁者間造血幹細胞移植における急性GVHD発症率、白血病再発率、移植後生存率の人種による違いの解析:HLA-AからDQB1まで適合したT細胞除去法を用いないGVHD予防法をにより非血縁者間移植を実施した5543症例を用いて多変量解析することにより、日本人間の移植の急性GVHDの頻度、白血病の再発率、移植後の死亡率はいずれも白人間の移植に比べて有意に低いことが明らかになった。人種特異的に頻度の高いHLAハプロタイプを有する日本人と白人の移植の比較でも、日本人間の移植は白人間に比し有意に急性GVHDの頻度が低かった。
結論
非血縁者間骨髄移植を受けた患者とドナーのHLA遺伝子型とその他の組織適合性抗原を精緻な細胞遺伝学的な手法(HLAとその分子解析、HLAハプロタイプ解析、HLA遺伝子以外の多型解析(Whole genome SNPs 、マイクロサテライト、サイトカイン受容体、NK細胞受容体)、In vitro解析)で解析することにより、GVHD、GVLに関与する組織適合性抗原を同定できた。さらに、移植免疫反応の発症機序を解明することにより、移植成績の向上をはかることができると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2010-10-19
更新日
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