気道炎症モニタリングの一般臨床応用化:新しい喘息管理目標の確立に関する研究

文献情報

文献番号
200934024A
報告書区分
総括
研究課題名
気道炎症モニタリングの一般臨床応用化:新しい喘息管理目標の確立に関する研究
課題番号
H20-免疫・一般-012
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
一ノ瀬 正和(和歌山県立医科大学 医学部内科学第三講座)
研究分担者(所属機関)
  • 相澤 久道(久留米大学 医学部内科学講座)
  • 秋山 一男(独立行政法人国立病院機構相模原臨床研究センター)
  • 大田 健(帝京大学 医学部内科学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
気道炎症は気管支喘息の最も重要な病態で主たる治療標的である。本研究は我々がこれまで免疫アレルギー疾患予防・治療研究事業における研究で証明してきた非侵襲的な呼気凝縮液や呼気ガスを用いた気道炎症評価を、喘息管理の新しい手段として確立し、一般臨床応用することを目的とした。平成21年度の研究では、呼気一酸化窒素(NO)濃度測定機器の妥当性、成人健常者における呼気NO濃度の正常値、喘息診断における呼気NO濃度のカットオフ値、呼気凝縮液、喀痰検査と肺機能、喘息治療効果との関連性について検討した。
研究方法
呼気NO濃度を化学発光式測定装置と電子化学式測定装置で測定し、測定機器の妥当性を検証した。また成人健常者と未治療の喘息患者を対象にスパイロメトリーおよび呼気NO濃度測定を行ない、呼気NO濃度の正常値および喘息診断におけるカットオフ値を算出した。呼気凝縮液を用いた脂質メディエーター測定における希釈補正マーカーを検索し、呼気凝縮液中15-HETE濃度と気道過敏性の関連について検討した。さらにステロイド治療の前後における喀痰中好酸球、好中球の変化と肺機能の変化との関連について検討した。
結果と考察
呼気NO濃度の正常値および喘息診断における呼気NO濃度のカットオフ値が算出され、一般臨床における喘息管理への応用・展開に向けて、呼気NO濃度の具体的な管理目標値が明らかにされた。今後、呼気NO濃度、呼気凝縮液、喀痰好酸球を用いた気道炎症評価を薬剤効果の個人レベルでの評価に応用し、喘息管理効率向上に結び付くか、明らかにしていく必要がある。
結論
化学発光式測定装置で測定した呼気NO濃度は電子化学式測定装置の測定値と有意な正の相関を示した。健常者240名を対象とした検討の結果、呼気NO濃度の正常値は15.4ppbで参照範囲は6.5から36.8ppbと算出された。喘息診断における呼気NO濃度のカットオフ値としては24.0ppbが妥当であった(感度90%、特異度83%)。Tyrosineは呼気凝縮液の希釈補正のマーカーとして優れていることが示された。呼気凝縮液中の15-HETE濃度は喘息患者で増加しており、気道過敏性の程度と相関した。ステロイドによる誘発喀痰中好酸球の減少程度は閉塞性障害の改善程度と相関を示し、誘発喀痰中の好酸球数は、ステロイド反応性を予測するバイオマーカーとして有用と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2010-05-19
更新日
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