行動科学を基盤とした科学的根拠に基づく臓器・組織移植啓発モデルの構築に関する研究

文献情報

文献番号
202313003A
報告書区分
総括
研究課題名
行動科学を基盤とした科学的根拠に基づく臓器・組織移植啓発モデルの構築に関する研究
課題番号
22FF1001
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
瓜生原 葉子(学校法人同志社 同志社大学 商学部)
研究分担者(所属機関)
  • 渥美 生弘(社会福祉法人聖隷福祉事業団総合病院聖隷浜松病院救命救急センター)
  • 島田 光生(徳島大学大学院 医歯薬学研究部 消化器・移植外科学)
  • 丸橋 繁(公立大学法人 福島県立医科大学 医学部 肝胆膵・移植外科学講座)
  • 吉住 朋晴(九州大学 大学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 移植医療基盤整備研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
7,278,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
臓器・組織提供数の増加を目指し、その障壁となっている啓発に関する行動課題を特定し、その解決のための「行動変容」促進因子と方策を明らかにすることである。目的を達成するための具体的な目標を以下と設定する。①地域の啓発に必要な資源の網羅的調査と必要資源の明確化②地域啓発プロセスの開発とそのパイロット検証③プロセスモデルの複数地域における実証④医療者への啓発課題の抽出と施策策定・実施⑤地域における啓発の共創環境整備と実装への参画
研究方法
①全国47都道府県に、移植啓発世話人(移植学会)及び都道府県Co.(JOT)を選任し、移植啓発チームを設定する。啓発資源(医療従事者・行政・市民団体・賛同企業など)活動実績について把握を目的とし、R5年1・7月に「地方自治体との連携の実態調査」、3・9月に県庁へ表敬訪問。②11府県、16,050名の市民を対象とした定量分析から既導出の意思表示行動メカニズムを精緻化する。また、科学的根拠に基づき実施された既存の啓発プロセスを検討・精緻化し、啓発マニュアルを作成。これらの普及として、AIによるテーラーメイドの啓発、実施者に負担をかけない地域啓発施策支援の構築開発を進めた。さらに、意思決定後回しへの対応施策検討、そして、臓器移植の無許可あっせん事件を受け、臓器取引と移植ツーリズムに関する動画の日本語版を作成。③福島県民の臓器移植・提供に関する態度・行動を明らかにするため、市民対象のアンケート調査実施。また、臓器提供の多い岡山(同じ人口)、岩手(同じ東北)と結果を比較する。さらに、県内5類型病院10施設の医療者対象の聞き取りを行い、体制整備状況および臓器提供に対する考えを調査する。④-1医学系学生などへの講義を行い、終了後アンケートを実施。また、文科省を窓口として医学教育のためのコンテンツ作成を協議する。④-2複数例の臓器提供を行っている病院勤務の医師、看護師にフォーカスグループインタビューを7施設で実施。関わった時の苦悩や葛藤、達成感、医療者自身の臓器提供への認識変化について実施web会議システムを用いインタビューする。
結果と考察
①協働先(移植学会臓器提供普及啓発委員会、JOT、都道府県Co.)と新たな移植啓発チームの体制を整備し、啓発資源(医療従事者、行政、市民団体、賛同企業など)、活動実績について網羅的な調査をおこなった。R5年度は行政担当者と医師/Co.間のやり取りが疎遠で、行政担当者の短期交代が判明。R6年度は三位一体となり活動する都道府県の啓発モデル事例共有を進める。②臓器提供数が少ない,啓発が活発でない地域においても活用され,効果的な啓発活動を可能とする啓発プロセスを開発し,『科学的根拠に基づく地域連携・啓発マニュアル』作成を目的とする。R5年度にかけて既導出の意思表示行動メカニズムを精緻化した「プロセスマニュアル案」を作成し,地域で使いやすいようなwebsiteを構築。R6年度はその活用について評価し,マニュアルを完成させる。また,時代や現場ニーズに応じ,実効性の高い啓発方法の開発を行う必要がある。R5年度は瓜生原(2021)の意思表示行動メカニズムの再現性を確認。次に、各人の行動変容段階と促進因子を機会学習させ、関心度や態度に応じた情報が届くしくみを開発。R6年度検証予定。③R5年度は障壁要因を探るため、県の人口分布に合わせた一般市民への意識調査アンケートを実施し、臓器提供の少ない福島県民の臓器移植/臓器提供に対する考えは、多い県と比較して乖離を認めなかった。R5-6年度にかけて県の救急施設の医療者へのヒアリングも実施。臓器提供の体制整備が不十分であり、地域の臓器提供の障壁となっていた。④-1 R4年度にメディア・ワークショップを行い、移植報道に携わるメディアへの理解促進を図り内容を分析し、R5年度『移植』に掲載。また、医学生などへの講義やアンケートを行い、これまでに移植に関する講義を受けた経験が8割以上に及ぶことが確認された。R5-6年度にかけて医学生教育コンテンツを作成し、臓器移植の講座で活用予定。④-2臓器提供の普及に必要な医療者の意欲を上げる(インセンティブ、患者・家族ケア)ことに着目した探索的調査をしている。R5年度は複数例の臓器提供経験のある医療者対象のインタビュー調査を全10施設中7施設に実施。逐語録も行動変容のモデルに当てはめ解析中。R6年度は不足情報を検討し、残り3施設のインタビューに取り組む。
結論
R4年度は研究課題の抽出や必要資源の明確化のために、各種定量調査や定性調査を各々の研究者がおこない分析。R5年度は調査結果をより精緻化し、発信や共有のための仕組みづくりを行い、よりよい行動変容を促すための要因を探索した。また、啓発マニュアルの活用など各分担班が協働しながら研究を進める。

公開日・更新日

公開日
2024-05-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-05-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202313003Z