介護・福祉・在宅医療現場における関節リウマチ患者支援に関する研究

文献情報

文献番号
202312008A
報告書区分
総括
研究課題名
介護・福祉・在宅医療現場における関節リウマチ患者支援に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23FE1002
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
松井 利浩(独立行政法人国立病院機構相模原病院臨床研究センター リウマチ性疾患研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 川畑 仁人(聖マリアンナ医科大学 医学部)
  • 川人 豊(京都府立医科大学 大学院医学研究科)
  • 小嶋 雅代(名古屋市立大学 医薬学総合研究院(医学))
  • 酒井 良子(明治薬科大学 薬学部)
  • 杉原 毅彦(東邦大学 医学部)
  • 辻村 美保(独立行政法人国立病院機構相模原病院 臨床研究センター リウマチ性疾患研究部)
  • 房間 美恵(宝塚大学 看護学部)
  • 松下 功(金沢医科大学 リハビリテーション医学科)
  • 矢嶋 宣幸(学校法人昭和大学 医学部内科学講座リウマチ・膠原病内科学部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫・アレルギー疾患政策研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
6,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
「リウマチ等対策委員会報告書」(平成30年11月)において、関節リウマチ(RA)患者の高齢化、及び高齢発症RA患者の増加が明らかとなった。しかし、高齢RA患者における医療・介護保険等の利用状況は調査されておらず、介護、福祉、在宅医療現場におけるRA患者支援の実態も明らかでない。また、多職種連携による患者支援の充実に向けて、社会福祉士やケアマネージャー等が活用できる患者支援資材の作成も望まれている。本研究の目的は、RA患者のQOLの向上を目指し、医師、看護師、薬剤師、リハビリテーションスタッフ、社会福祉士、介護支援専門員、患者が協同して、①RA患者の医療・介護保険等の利用状況並びにRA患者の診療実態の調査、②介護・福祉・在宅医療現場におけるRA患者支援の実態調査、③①及び②に基づいたアンメットニーズの抽出、④アンメットニーズの解決に寄与する介護・福祉スタッフのためのRA患者支援資材の作成と普及活動を行うことである。
研究方法
1. RA患者の診療実態及び介護・福祉・在宅医療サービスの利用実態を明らかにするため、匿名医療保険データベース(NDB)と介護情報データベース(介護DB)を使用し調査を行う。
2. 全国規模のRAデータベース:National Database of Rheumatic Diseases in Japan (NinJa)の2002-2021年度データを用い、RA患者の診療実態とその変遷を調査する。
3. 介護、福祉、在宅医療現場におけるRA患者支援の実態及びアンメットニーズの把握を行うため、①介護支援専門員及び社会福祉士、②リウマチ医を対象とした2つのアンケートを実施する。
4. 中年期から前期高齢期、後期高齢期への移行期における治療の現状を明らかにし、高齢期のRA治療戦略の確立を目指すため、Rheumatoid arthritis cohort on transitional medicine from middle age to old age(ATOMMコホート)による調査を行う。
5. 悪性腫瘍や悪性リンパ腫を発症したRA患者における抗リウマチ薬治療の安全性を検討するため、NinJa2012-2018のデータを用いて解析する。
結果と考察
1. NDB及び介護DBを用いて行う解析内容を確定し、必要な情報を抽出するための申出手続きを完了した。また、専用の解析室の工事を終了し、研究体制を整備した。今後はDBの提供を待って順次解析を実施していく予定である。
2. RA患者の高齢化の進行、高齢発症RA患者のさらなる増加が認められた。疾患活動性は高齢者も含めて経年的に改善し、寛解達成率もさらに上昇したが、いずれも高齢者では若年者に比べ劣っていた。高齢者ではMTX使用率が低く、GC使用率が高い傾向があるが、以前の報告と比較すると前者は上昇、後者は減少した。生物学的製剤もしくはJAK阻害薬を使用する患者は80歳代でも30%以上おり、以前よりも増加していた。入院率は加齢とともに上昇し、入院理由として感染症、骨粗鬆症関連の割合が増加した。以上より、以前に比べ高齢者でもより積極的な治療が行われ、疾患活動性の低下に結びついている可能性がある。しかし、依然として高齢者におけるGC使用率は高く、その低下を目指した治療戦略の構築が望まれる。
3. アンケート内容及び実施方法を確定し、倫理審査を終了した。次年度の冒頭でアンケートを実施し、その結果を介護・福祉職向けのRA支援資材の作成や啓発活動に役立てる。
4. ATOMMコホートのベースラインデータの中間解析の結果、Comorbidity damage indexと既存のRheumatic Disease Comorbidity Index(RDCI)は相関した。身体機能低下例の方がRDCI、Comorbidity damage index とも有意に高かった。Comorbidity damage indexの各項目についてみると骨関節疾患、呼吸器疾患と抑うつが、身体機能低下例で高い傾向を認めた。併存症を網羅的に評価し定量化することで、RA患者における併存症によるダメージを評価できると考えられた。引き続きデータの集積を行っていく。
5. RA患者における悪性リンパ腫のリスク因子として、MTXとNSAIDsによる治療が同定された。悪性腫瘍発症後の治療状況は、悪性リンパ腫と他の悪性腫瘍で異なっていた。今後、患者の高齢化に伴い増加が予想される悪性腫瘍既往のあるRA患者に対する抗リウマチ薬治療を考える上で重要な結果と考える。
結論
RA患者のさらなる高齢化が明らかとなった。高齢RA患者のQOL向上には、高齢RA患者に対する治療戦略の構築と共に、介護、福祉、在宅医療現場におけるRA患者支援の充実が不可欠と考えられる。

公開日・更新日

公開日
2024-12-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-12-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202312008Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,967,000円
(2)補助金確定額
8,967,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,444,678円
人件費・謝金 3,665,803円
旅費 575,956円
その他 1,213,563円
間接経費 2,067,000円
合計 8,967,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2024-12-12
更新日
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