文献情報
文献番号
202312007A
報告書区分
総括
研究課題名
学校・保育所等におけるアレルギー疾患を有するこどもの安心・安全・生き生きとした活動を保証する生活管理指導表の運用・管理体制向上をめざす研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23FE1001
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
藤澤 隆夫(独立行政法人国立病院機構三重病院 臨床研究部)
研究分担者(所属機関)
- 海老澤 元宏(国立病院機構相模原病院 臨床研究センター)
- 今井 孝成(昭和大学)
- 福永 興壱(慶應義塾大学 医学部 内科学(呼吸器))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫・アレルギー疾患政策研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
6,540,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
アレルギー疾患を有するこどもたちの安全・安心な学校生活を守るために、主治医が管理方法を伝える生活管理指導表(以下、指導表)を軸とした連携体制のあり方が示されている。しかし、実際の運用上の問題は少なくない。
本研究では指導表運用に関わる問題点を可視化して、改善のための新しいシステム構築を目指す。第一は、指導表の精度向上、第二は連携体制の向上、第三に、非専門医でも適切に指導表が記載できるよう作成支援アプリの開発、第四に、「指導表」デジタル化である。
本研究では指導表運用に関わる問題点を可視化して、改善のための新しいシステム構築を目指す。第一は、指導表の精度向上、第二は連携体制の向上、第三に、非専門医でも適切に指導表が記載できるよう作成支援アプリの開発、第四に、「指導表」デジタル化である。
研究方法
1. 生活管理指導表の精度向上
自治体(教育委員会等)に対してアンケート調査を行った。内容は、1)記載不備や実行困難な指示等の問題のある指導表の有無 2)項目別に分類した問題の有無:①原因食物・除去根拠が検査結果陽性のみ ②除去根拠が示されていない ③部分除去の指示 ④緊急時薬剤の記載不備 ⑤より厳しい除去の項目に○が多くついている 4)学校と教育員会の連携の有無、4)医師会との連携の有無 5)精度管理の仕組みの有無 6)問題例についての情報共有の仕組みの有無 7)問題例についての医師へのフィードバックの仕組みの有無 等である。
相模原市では、提出された指導表の悉皆調査を行い、問題のある指導表について解析した。
2. 連携体制の向上
指導表を軸とした連携体制向上のために全国の5地域で連携体制づくりを進めた。連携のハブ(基点)を決めて、それぞれの基点から関係各所への連携体制を確認するというステップで進めた。具体的には1)教育委員会等の地方公共団体が基点となる連携としては、指導表の集計と評価を進めること、連携の中心であるとの意識を醸成すること、2)医療機関を基点とした連携としては、指導表の正確性の向上、重症例への対応システムづくり、3)消防機関を基点とした連携として、救急搬送システムの強化やハイリスク者の情報共有を行うこと、とした。そして、それぞれ地域特性に合わせた連携のフレームワークとして完成に向かうこととした。
3. 生活管理指導表作成に係る小児科医対象の全国調査
指導表を作成する小児科医の視点からの問題点を明らかとするために、小児アレルギー学会の医師会員に対して、同学会より一斉メールを送信し、ウエブアンケートへの回答を依頼した。
4.生活管理指導表に係る栄養士対象の全国調査
指導表とその運用に関連する問題点を栄養士の視点から明らかにするため、日本栄養士会所属の管理栄養士、栄養士を対象に、日本栄養士会から一斉メールを送信、ウエブアンケートへの回答を依頼した。
5. 生活管理指導表作成支援アプリ開発
非専門医でも指導表を適切に作成できるように支援するアプリの開発を行った。前提として、専門医の特性とは小児アレルギー疾患の関する知識をベースに、まずは患者に適切な問診を行うことであると考え、指導表作成に必要な問診項目をすべて収集して、それぞれに対する回答の選択肢を準備、指導表記入例出力につながるアルゴリズムを作成した。そのアルゴリズムをもとに専門のプログラマーにアプリ作成を委託した。
6.デジタル化指導表の開発
現状の紙ベースの指導表を電子システムに置き換えるプログラムを作成した。入力する医師の利便性を高めるため、作成支援アプリとの統合を図った。
自治体(教育委員会等)に対してアンケート調査を行った。内容は、1)記載不備や実行困難な指示等の問題のある指導表の有無 2)項目別に分類した問題の有無:①原因食物・除去根拠が検査結果陽性のみ ②除去根拠が示されていない ③部分除去の指示 ④緊急時薬剤の記載不備 ⑤より厳しい除去の項目に○が多くついている 4)学校と教育員会の連携の有無、4)医師会との連携の有無 5)精度管理の仕組みの有無 6)問題例についての情報共有の仕組みの有無 7)問題例についての医師へのフィードバックの仕組みの有無 等である。
相模原市では、提出された指導表の悉皆調査を行い、問題のある指導表について解析した。
2. 連携体制の向上
指導表を軸とした連携体制向上のために全国の5地域で連携体制づくりを進めた。連携のハブ(基点)を決めて、それぞれの基点から関係各所への連携体制を確認するというステップで進めた。具体的には1)教育委員会等の地方公共団体が基点となる連携としては、指導表の集計と評価を進めること、連携の中心であるとの意識を醸成すること、2)医療機関を基点とした連携としては、指導表の正確性の向上、重症例への対応システムづくり、3)消防機関を基点とした連携として、救急搬送システムの強化やハイリスク者の情報共有を行うこと、とした。そして、それぞれ地域特性に合わせた連携のフレームワークとして完成に向かうこととした。
3. 生活管理指導表作成に係る小児科医対象の全国調査
指導表を作成する小児科医の視点からの問題点を明らかとするために、小児アレルギー学会の医師会員に対して、同学会より一斉メールを送信し、ウエブアンケートへの回答を依頼した。
4.生活管理指導表に係る栄養士対象の全国調査
指導表とその運用に関連する問題点を栄養士の視点から明らかにするため、日本栄養士会所属の管理栄養士、栄養士を対象に、日本栄養士会から一斉メールを送信、ウエブアンケートへの回答を依頼した。
5. 生活管理指導表作成支援アプリ開発
非専門医でも指導表を適切に作成できるように支援するアプリの開発を行った。前提として、専門医の特性とは小児アレルギー疾患の関する知識をベースに、まずは患者に適切な問診を行うことであると考え、指導表作成に必要な問診項目をすべて収集して、それぞれに対する回答の選択肢を準備、指導表記入例出力につながるアルゴリズムを作成した。そのアルゴリズムをもとに専門のプログラマーにアプリ作成を委託した。
6.デジタル化指導表の開発
現状の紙ベースの指導表を電子システムに置き換えるプログラムを作成した。入力する医師の利便性を高めるため、作成支援アプリとの統合を図った。
結果と考察
まず、自治体(教育委員会など)、医師(指導表作成に関わる小児科医)、栄養士(教育現場でアレルギー対応食の献立作成に関わる人たち)それぞれ異なる視点からの問題点可視化を行った。その結果、自治体の側からは、多くの地域で精度の低い(問題のある)指導表を受け取っていたが、改善させるための仕組みは整備されていなかった。しかし、アレルギー疾患医療中央拠点病院である国立病院機構相模原病院がある相模原市では問題のある指導表が減っており、拠点病院による連携体制と医師への啓発活動の重要性を示唆した。
栄養士の視点からの問題点も自治体と同様で、アレルギー疾患の管理に精通していない非専門の医師により作成されたと思われる不備のある指導表のために、アレルギー食対応に支障をきたす事例があった。
一方、小児科医を対象とした調査では、調査対象の特性から、現行システムを支える人々の立場からの問題点と考えられたが、指導表作成に少なからぬ負担がかかっていた。より一層の効率化が必要と考えられた。
非専門医でも適切に指導表を記載することができるアプリ、これと連動させたデジタル化指導表の開発に着手し、プロトタイプを完成させた。
連携向上のためには、関係機関の緊密なコミュニケーションが必須ながら、少なからぬ障壁が存在することもわかった。さらに取り組みを進める。
栄養士の視点からの問題点も自治体と同様で、アレルギー疾患の管理に精通していない非専門の医師により作成されたと思われる不備のある指導表のために、アレルギー食対応に支障をきたす事例があった。
一方、小児科医を対象とした調査では、調査対象の特性から、現行システムを支える人々の立場からの問題点と考えられたが、指導表作成に少なからぬ負担がかかっていた。より一層の効率化が必要と考えられた。
非専門医でも適切に指導表を記載することができるアプリ、これと連動させたデジタル化指導表の開発に着手し、プロトタイプを完成させた。
連携向上のためには、関係機関の緊密なコミュニケーションが必須ながら、少なからぬ障壁が存在することもわかった。さらに取り組みを進める。
結論
生活管理指導表を軸とした連携体制の向上のために、指導表の精度向上、連携体制の向上、指導表作成支援プログラム開発、デジタル化指導表開発、それぞれ一定の成果を得た。
公開日・更新日
公開日
2024-12-09
更新日
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