金属アレルギーの新規管理法の確立に関する研究

文献情報

文献番号
202312006A
報告書区分
総括
研究課題名
金属アレルギーの新規管理法の確立に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22FE1003
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
矢上 晶子(冨高 晶子)(藤田医科大学 医学部総合アレルギー科)
研究分担者(所属機関)
  • 加藤 則人(京都府立医科大学 大学院医学研究科)
  • 伊苅 裕二(東海大学医学部付属病院 内科学系循環器内科学)
  • 江草 宏(東北大学大学院歯学研究科 分子・再生歯科補綴学分野)
  • 二木 康夫(慶應義塾大学 医学部)
  • 鈴木 加余子(藤田医科大学 総合アレルギー科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫・アレルギー疾患政策研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
3,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
金属アレルギーは苦慮する国民が潜在的に多いことが推測され、また、皮膚科、歯科、整形外科、循環器内科、脳神経外科間で連携した診療(診断や生活指導)が必要な疾患である。しかし、金属アレルギー診療の問題点として、患者が受診しても各診療科で適切な対応がなされず漫然と観察されている状況がある。その要因として、最も有用とされるパッチテストの普及が十分ではないこと、それに伴い、金属アレルギーの診療で必要な多科連携が希薄になっていることが挙げられる。本研究は、専門性の高い各診療科医師や管理栄養士による研究班を構築し、まず、金属アレルギー診療で患者自身、そして医療施設での問題点を抽出し、さらに、それらの解決に向けて、診断法の確立、国内外の金属アレルギーの情報を収集し整理し、金属アレルギーの診療・管理法を構築することを目的としている。
研究方法
今年度は、診断法の確立、多科連携診療モデルの構築を目指し、接触皮膚炎を専門としパッチテストを日常的に実施している医師のグループである日本接触皮膚炎研究班(JCDRG)に所属している皮膚科医、日本補綴歯科学会、日本歯科保存学会、日本口腔インプラント学会に所属している歯科医、および、日本循環器学会 循環器専門医研修・研修関連施設の循環器専門医を対象とし、2021年度(2021年4月~2022年3月)における金属アレルギー診療・症例情報についてアンケート調査を行った。
各学会を介し、WEBページ(Googleフォーム)もしくは郵送にて回答を得た。
結果と考察
本調査にて明らかとなった、皮膚科、歯科、循環器内科における金属アレルギー診療の現状は以下の通りである。
①患者群とパッチテストの実施状況:金属アレルギーの診断例の大多数は女性であり、発症年齢は主に10代~20代に多い。パッチテストを受けた患者の年齢分布は20歳代から増加し、40歳代でピークに達する。発症時期が不明な患者が多く、早期発見や若年層への啓発が必要である。
②原疾患とアレルギー症状の誘発要因:金属製品の接触によるアレルギー症状が最も多く、汗疱状湿疹や掌蹠膿疱症も一定数存在する。患者の紹介元は歯科、整形外科、循環器内科が多く、他科との連携が重要である。
③パッチテストの実施と結果:日常生活での金属アレルギー症状の診断では様々なパッチテスト試薬が使用されており、統一されたパッチテストシリーズが存在しない。ニッケル、金、コバルト、パラジウム、クロムが陽性反応の多い金属である。
④治療と介入:パッチテスト結果に基づく治療や介入の有無にばらつきがあり、特に歯科金属の除去が多いことが明らかとなった。食生活の変更も行われるが、患者指導の難しさや資料不足が課題として挙げられた。
⑤医療連携:診断や治療における他科との連携が不十分であり、特に紹介元が金属アレルギーの関連性を正しく判断していない場合がある。皮膚科や循環器内科では、患者が金属アレルギーを自己診断する場合が多く、専門的な診断が不足している。
以上の結果から、金属アレルギーの診断と治療には以下の改善が必要であると考えられる。
①統一されたパッチテストシリーズの導入:施設ごとに異なる試薬の使用状況を改善し、共通の診断基準を設けることで、診断の信頼性を向上させる。
②若年層への啓発と早期発見:発症年齢が若いことから、学校や地域での啓発活動を強化し、早期発見を促進する。
③医療連携の強化:歯科、皮膚科、整形外科、循環器内科などの専門科間での情報共有や連携を強化し、適切な診断と治療を提供する。
④患者指導の改善:食品リストや金属含有製品リストの整備、パッチテスト結果の解釈・説明に関する手引きの作成など、患者指導を充実させる。
⑤パッチテスト後の各症例の経過追跡:パッチテスト実施後の症例の経過を追跡し、治療や介入が患者のQOLにどのように影響を及ぼすかを検証する。
結論
これまでの調査によって、金属アレルギーで苦慮している一般国民が多く存在すること、医療施設(皮膚科、歯科、循環器内科)における金属アレルギー診療の問題点を抽出することができた。顕在化した課題解決に向け、現在、金属アレルギー診療ガイドライン・生活指導マニュアルの策定について検討を進めている。
ガイドライン・マニュアルの策定が進み、それらが普及することによって、本邦における金属アレルギー診療が劇的に進歩するとともに、金属アレルギーの実態が明らかになることで本邦における生体に用いる金属に対する規制等も進み、広く国民の保健・医療・福祉の向上に大きく寄与すると期待される。

公開日・更新日

公開日
2024-12-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-12-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202312006Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,000,000円
(2)補助金確定額
4,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,737,842円
人件費・謝金 968,584円
旅費 0円
その他 0円
間接経費 900,000円
合計 3,606,426円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2024-12-09
更新日
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