関節リウマチ診療ガイドラインの改訂による医療水準の向上に関する研究

文献情報

文献番号
202312005A
報告書区分
総括
研究課題名
関節リウマチ診療ガイドラインの改訂による医療水準の向上に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22FE1002
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
針谷 正祥(東京女子医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 杉原 毅彦(東邦大学 医学部)
  • 金子 佳代子(国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター母性内科)
  • 金子 祐子(慶應義塾大学 医学部)
  • 田中 榮一(東京女子医科大学医学部膠原病リウマチ内科学講座)
  • 宮前 多佳子(東京女子医科大学 医学部)
  • 岸本 暢将(杏林大学 医学部)
  • 河野 正孝(京都府立医科大学大学院 医学研究科 免疫内科学)
  • 小嶋 雅代(名古屋市立大学 医薬学総合研究院(医学))
  • 平田 信太郎(広島大学 病院)
  • 森信 暁雄(京都大学 大学院医学研究科)
  • 森 雅亮(国立大学法人東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 川人 豊(京都府立医科大学大学院医学研究科 免疫内科学)
  • 小嶋 俊久(国立病院機構 名古屋医療センター)
  • 亀田 秀人(東邦大学 医学部 内科学教室 膠原病学分野 (医療センター大橋病院 膠原病リウマチ科))
  • 中島 亜矢子(三重大学 医学部)
  • 房間 美恵(宝塚大学 看護学部)
  • 後藤 美賀子(国立成育医療研究センター 妊娠と薬情報センター)
  • 岡本 奈美(大阪医科薬科大学医学部医学科  小児科学)
  • 矢嶋 宣幸(昭和大学 医学部内科学講座リウマチ膠原病内科学部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫・アレルギー疾患政策研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
3,077,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
関節リウマチ(RA)全体の治療方針は、研究代表者が中心となって作成した日本リウマチ学会(JCR)関節リウマチ診療ガイドライン2020(RA-CPG2020)に記載され、55の推奨が提示されている。このガイドラインの発行以降に、メトトレキサート(MTX)皮下注製剤、新規生物学的製剤が承認され、バイオ後続品も新規製剤が複数承認されている。また、JAK阻害薬に関しては5剤の臨床試験結果が出揃い、安全性データの蓄積も進んでいる。また、本邦でも2024年3月に既存治療で効果不十分な多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎への適応拡大が承認された。
本研究課題では、RA患者のライフステージに応じて治療を適切に実施し、疾患の重症化・難治化を未然に防止するためのガイドライン改訂を目指す。そのために、 (1) RAにおけるMTX皮下注製剤、生物学的製剤、JAK阻害薬、バイオ後続品の2019年以降のエビデンスを収集し、それ以前のエビデンスと統合し、システマティックレビュー(SR)を行う、(2)SR、ナラティブレビュー等の手法を用いて、①RA、JIAの妊娠・授乳期、②成人移行期の少関節炎型・多関節炎型JIA、③高齢RAにおける治療に関するエビデンスを収集・解析する、これらの結果を踏まえてRA-CPG2024改訂案を作成することを目的とした。
研究方法
今回のRA-CPG改訂においても、2020版と同様にGRADE (Grading of Recommendations, Assessment, Development and Evaluation)法に沿ったCPGを作成する方針とした。令和5年度は、CPGパネル委員会における推奨案の作成・検討、担当パネル委員による解説文案の作成、統括委員会による編集作業、出版社による編集作業とその確認、外部評価、日本リウマチ学会理事会での承認を実施した。また、SR結果を英文論文として発表した。
結果と考察
令和4年度にSR担当者がまとめたSR結果を受けて、CPGパネルの各クリニカルクエスチョン(CQ)担当者がEvidence to Decision Table (EtDテーブル)と推奨文案を作成した。合計5回のパネル会議を開催し、成人RA、高齢RA、妊娠・授乳期、少関節炎型・多関節炎型JIAの推奨を討議・投票・決定した。対面会議に加え、メール会議を多数開催し、推奨、サマリー、注記の記載について検討した。その結果、MTX皮下注射に関する推奨1点、biological DMARDに関する推奨6点、JAK阻害薬に関する推奨6点、バイオ後続品に関する推奨2点、高齢者に関する推奨4点、妊娠・授乳期に関する推奨2点、JIA少関節炎型・多関節炎型に関する推奨6点が決定された。推奨に合わせて、治療アルゴリズムも一部修正された。推奨作成可能なエビデンスが揃わなかったCQに関して、5項目(ハイドロキシクロロキン1点、妊娠・授乳期3点、JIA少関節炎型・多関節炎型1点)のQ&Aを作成した。
作成したCPGに対してパブリックコメントを募集し、外部評価を3名の外部評価委員および日本医療機能評価機構EBM普及推進事業(Minds)に依頼した(Mindsは2024年5月現在、受審中)。また、作成したCPGを日本リウマチ学会理事会に提出し、日本リウマチ学会のガイドラインとすることが承認された。2024年5月1日に本CPGの初版第1刷が発行され、日本リウマチ学会員に配布された。
今回の研究では、2年間の計画でCPGを改訂したが、かなり厳しいスケジュール管理が必要であった。出版した書籍には、RA推奨が66点掲載されており、今回はその中の21点を改訂した。
RAの新規治療薬開発は絶え間なく継続されており、今後も3~4年間隔でのガイドライン改訂が必要と考えられる。そのためにはSRの知識・技術を持ったSRグループ候補人材、ガイドラインの作成方法・経験を持ったCPGパネル候補となる人材、予算確保が必要不可欠である。今後はSRグループ参加者のリトリートを行い、より適切に、より速やかにSRを実施する人材を育成する必要がある。
結論
「日本リウマチ学会関節リウマチ診療ガイドライン2024改訂―若年性特発性関節炎 少関節炎型・多関節炎型診療ガイドラインを含む」を発行した。本CPGの普及によりRAおよびJIA治療の標準化が一層進み、医療消費者の大きなメリットになることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2024-12-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-12-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202312005B
報告書区分
総合
研究課題名
関節リウマチ診療ガイドラインの改訂による医療水準の向上に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22FE1002
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
針谷 正祥(東京女子医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 杉原 毅彦(東邦大学 医学部)
  • 金子 佳代子(国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター母性内科)
  • 金子 祐子(慶應義塾大学 医学部)
  • 田中 榮一(東京女子医科大学医学部膠原病リウマチ内科学講座)
  • 宮前 多佳子(東京女子医科大学 医学部)
  • 岸本 暢将(杏林大学 医学部)
  • 河野 正孝(京都府立医科大学大学院 医学研究科 免疫内科学)
  • 小嶋 雅代(名古屋市立大学 医薬学総合研究院(医学))
  • 平田 信太郎(広島大学病院)
  • 森信 暁雄(京都大学 大学院医学研究科)
  • 森 雅亮(国立大学法人東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 川人 豊(京都府立医科大学大学院医学研究科 免疫内科学)
  • 小嶋 俊久(国立病院機構 名古屋医療センター)
  • 亀田 秀人(東邦大学 医学部 内科学教室 膠原病学分野 (医療センター大橋病院 膠原病リウマチ科))
  • 中島 亜矢子(三重大学 医学部)
  • 房間 美恵(宝塚大学 看護学部)
  • 後藤 美賀子(国立成育医療研究センター 妊娠と薬情報センター)
  • 岡本 奈美(大阪医科薬科大学医学部医学科  小児科学)
  • 矢嶋 宣幸(昭和大学 医学部内科学講座リウマチ膠原病内科学部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫・アレルギー疾患政策研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
関節リウマチ(RA)全体の治療方針は、研究代表者が中心となって作成した日本リウマチ学会(JCR)関節リウマチ診療ガイドライン2020(RA-CPG2020)に記載され、55の推奨が提示されている。このガイドラインの発行以降に、新たなエビデンスが複数報告され、ガイドライン改訂の必要性が高まった。
本研究課題では、RA患者のライフステージに応じて治療を適切に実施し、疾患の重症化・難治化を未然に防止するためのガイドライン改訂を目指す。そのために、 (1) RAにおけるMTX皮下注製剤、生物学的製剤、JAK阻害薬、バイオ後続品の2019年以降のエビデンスを収集し、それ以前のエビデンスと統合し、システマティックレビュー(SR)を行う、(2)SR、ナラティブレビュー等の手法を用いて、①RA、JIAの妊娠・授乳期、②成人移行期の少関節炎型・多関節炎型JIA、③高齢RAにおける治療に関するエビデンスを収集・解析する、これらの結果を踏まえてRA-CPG2024改訂案を作成することを目的とした。
研究方法
2020版と同様にGRADE (Grading of Recommendations, Assessment, Development and Evaluation)法に沿ったCPGを作成する方針とした。ガイドライン作成組織として、統括委員会、SRグループ、CPGパネル委員会を設置、また、妊娠・授乳期担当、成人後の少関節炎型・多関節炎型JIA担当、高齢者担当を指名した。
JCRから当研究班に委員を推薦して頂き、日本リウマチ友の会に患者代表の参加を依頼した。また、厚生労働科学研究費補助金難治性・希少免疫疾患におけるアンメットニーズの把握とその解決に向けた研究班、移行期JIAを中心としたリウマチ性疾患における患者の層別化に基づいた生物学的製剤等の適正使用に資する研究班、自己免疫疾患に関する調査研究班、AMED高齢発症関節リウマチ患者の健康寿命延伸を目指した治療戦略の確立班と連携し、研究を進めた。
結果と考察
令和4年4月に統括委員会を設置し、作成手順およびスケジュールの決定、利益相反管理方針の決定、作成組織の編成、スコープ作成、クリニカルクエスチョン(CQ)決定を行い、並行してSRチームの公募、選考を実施した。合計4回のSR勉強会を開催し、SRを進めた。翌年度でのパネル会議に向けて、パネル会議メンバーを対象としたEvidence to Decision Table(EtDテーブル)の作成講習会を開催した。
令和5年度はCPGパネルの各CQ担当者がEtDテーブルと推奨文案を作成した。合計5回のパネル会議を開催し、成人RA、高齢RA、妊娠・授乳期、JIA少関節炎型・多関節炎型の推奨を討議・投票・決定し、各推奨に関する解説文を作成した。推奨に合わせて、治療アルゴリズムも一部修正された。推奨作成可能なエビデンスが揃わなかったCQに関して、5項目のQ&Aを作成した。
作成したCPGに対してパブリックコメントを募集し、外部評価を外部評価委員および日本医療機能評価機構EBM普及推進事業(Minds)に依頼した。作成したCPGを日本リウマチ学会のガイドラインとすることが同学会理事会で承認された。2024年5月1日に本CPGの初版第1刷が発行された。
成人RA、高齢RA、妊娠・授乳期、JIA少関節炎型・多関節炎型のそれぞれのSR結果の論文化を進めた。成人RAは投稿中、高齢RAは受理済、妊娠・授乳期とJIAは投稿準備中である(2024年5月現在)。
今後も3~4年間隔でのガイドライン改訂が必要と考えられ、そのために今後はSRグループ参加者のリトリートを行い、より適切に、より速やかにSRを実施する人材を育成する必要がある。
結論
「日本リウマチ学会関節リウマチ診療ガイドライン2024改訂―若年性特発性関節炎 少関節炎型・多関節炎型診療ガイドラインを含む」を発行した。本CPGの普及によりRAおよびJIA治療の標準化が一層進み、医療消費者の大きなメリットになることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2024-12-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202312005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
システマティックレビュー担当者を24名育成し、①RA、JIAの妊娠・授乳期、②成人移行期の少関節炎型・多関節炎型JIA、③高齢RAにおける治療に関するエビデンスを収集・解析した。これらをパネル会議で議論し、関節リウマチガイドラインを開発した。
臨床的観点からの成果
関節リウマチ診療ガイドライン2020以降に発表されたエビデンスを取り入れた最新のガイドラインを作成・発表したことで、RA治療の標準化が一層進み、医療消費者の大きなメリットになることが期待される。
ガイドライン等の開発
「日本リウマチ学会関節リウマチ診療ガイドライン2024-若年性特発性関節炎少関節炎型・多関節炎型診療ガイドラインを含む」を2024年4月に発刊した。
その他行政的観点からの成果
2018年に厚生科学審議会疾病対策部会リウマチ等対策委員会報告書が作成され、6年目を迎えている。今後、わが国のリウマチ対策が改訂される際には、本ガイドラインがその資料として用いられることが期待される。
その他のインパクト
RAに対する標準的かつ均てん化された医療の社会実装が可能になった結果、わが国のリウマチ対策の全体目標である「疾患活動性を適切な治療によりコントロールし、長期的なQOLを最大限まで改善し、職場や学校での生活や妊娠・出産などのライフイベントに対応したきめ細やかな支援を行う」ことが達成される。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
2件
本研究の成果を公表した
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Takahiko Sugiharaa , Yutaka Kawahitob , Akio Morinobu, et al.
Systematic review for the treatment of older rheumatoid arthritis patients informing the 2020 update of the Japan College of Rheumatology clinical practice guidelines for the management of rheumatoid arthritis
Modern Rheumatology , 32 (2) , 313-322  (2024)
10.1080/14397595.2021.1912922
原著論文2
Yoichi Nakayama, Wataru Nagata, Yoichi Takeuchi, et al.
Systematic review and meta-analysis for the 2024 update of the Japan College of Rheumatology clinical practice guidelines for the management of rheumatoid arthritis
Modern Rheumatology , In press (In press) , In press-In press  (2024)
10.1093/mr/roae049

公開日・更新日

公開日
2024-12-09
更新日
-

収支報告書

文献番号
202312005Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,000,000円
(2)補助金確定額
3,999,725円
差引額 [(1)-(2)]
275円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 863,444円
人件費・謝金 316,151円
旅費 397,407円
その他 1,499,723円
間接経費 923,000円
合計 3,999,725円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2024-12-09
更新日
-