文献情報
文献番号
202311005A
報告書区分
総括
研究課題名
腎疾患対策検討会報告書に基づく対策の進捗管理および新たな対策の提言に資するエビデンス構築
課題番号
22FD2001
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
柏原 直樹(学校法人川崎学園 川崎医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 岡田 浩一(埼玉医科大学 医学部)
- 中川 直樹(旭川医科大学 医学部)
- 和田 淳(国立大学法人岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科 腎・免疫・内分泌代謝内科学)
- 内田 治仁(岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科 CKD・CVD地域連携包括医療学講座)
- 今澤 俊之(独立行政法人国立病院機構千葉東病院)
- 向山 政志(熊本大学 大学院生命科学研究部)
- 山縣 邦弘(筑波大学 医学医療系臨床医学域腎臓内科学)
- 古波蔵 健太郎(琉球大学病院 血液浄化療法部)
- 森下 義幸(自治医科大学 総合医学第1講座(腎臓内科))
- 上條 祐司(信州大学 医学部附属病院)
- 服部 元史(東京女子医科大学腎臓小児科)
- 石倉 健司(北里大学 医学部 小児科学)
- 横尾 隆(東京慈恵会医科大学 医学部)
- 福井 亮(東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科)
- 旭 浩一(岩手医科大学 医学部)
- 田村 功一(横浜市立大学 医学部 循環器・腎臓・高血圧内科学)
- 今田 恒夫(山形大学 医学部)
- 酒井 謙(東邦大学 医学部)
- 祖父江 理(香川大学 医学部 循環器・腎臓・脳卒中内科)
- 要 伸也(学校法人杏林学園 杏林大学 医学部 腎臓・リウマチ膠原病内科)
- 和田 健彦(虎の門病院)
- 成田 一衛(国立大学法人 新潟大学 大学院医歯学総合研究科 腎・膠原病内科学)
- 南学 正臣(国立大学法人東京大学 医学部附属病院 腎臓・内分泌内科)
- 深水 圭(久留米大学 腎臓内科部門)
- 猪阪 善隆(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科 腎臓内科学)
- 福間 真悟(京都大学 医学部附属病院 臨床研究教育研修部)
- 西山 成(香川大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 腎疾患政策研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
18,182,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
平成30年7月に発出された「腎疾患対策検討会報告書~腎疾患対策の更なる推進を目指して~」の5課題実現・社会実装の為の具体的な計画・方法の立案、評価・進捗管理の方法開発を行う。全国各地の腎疾患対策を評価・分析し、課題抽出、新たな対策立案のPDCAサイクルを回し、継続的に腎疾患対策が実現する体制を構築することを目的とする。
研究方法
普及啓発、診療連携体制の構築、診療水準の向上、人材育成、研究開発を5本の柱とし、公募研究班(代表:岡田浩一)とNPO法人日本腎臓病協会のCKD対策部会(J-CKDI)と連携し、全国各地へ展開していく。本研究班では、上記活動の進捗管理や研究に加え、アルブミン尿の診療報酬の収載へ向けた研究、全国のCKDの有病率を調査する。これらの研究成果を、新たに立ち上げたHPに公開し有効に活用する基盤を構築する。具体的に以下研究結果に示す分科会・WGを構築して実施する。
結果と考察
① 普及、啓発(1)普及啓発資材の開発:今年度は尿異常の検査結果の見方、蛋白尿の重要性を説明する資材を開発した。(2)地域における普及啓発活動の評価:アンケート調査により、啓発活動の実施数、認知度について経年的な変化を評価した。動画サイト、SNSなど普及啓発の媒体は様々で各地での工夫が伺えた。②診療連携体制構築(1)実態調査:前述のアンケートで連携体制構築についても調査した。今後は数の増加のみならず、連携の質の向上や、連携体制でカバーできている市区町村の範囲等全体像の把握、好事例の共有、今後の方針等の調査も必要と考えられた。(2)好事例共有・横展開:研究班HPにおいて、全都道府県の普及啓発及び診療連携体制の現状の閲覧、スライドのダウンロードが可能となっている。(3)検診結果に基づく保健指導、受診勧奨の推進:5つの健康習慣による生活習慣スコアリングを活用した住民の行動変容と保健指導の効果検証を可能とする帳票作成した。保健指導の効果の評価と効果的な改善を通じ、保健指導の推進に有用である可能性が示唆された。③診療水準向上(1)移行期医療:昨年作成した調査票を115施設に送付した(回収率50.4%)。施設調査の移行プログラムや移行コーディネーターを有する施設は小児・成人いずれも依然として少なかった。 (2)高齢CKD患者、透析・移植後患者のQOL維持向上:移植後患者のQOLの実態調査を行った。QOL向上に資する移植医療であるが、非正規雇用形態・年収等に未だ問題を含む結果と解釈された。AMED事業で作成したCKMガイドの普及も継続して図っていく。(3)難治性腎疾患の診療レベルの向上・均霑化:指定難病に定められている腎障害患者の腎疾患対策を推進した。難病を原疾患とする腎障害患者の診療が向上し均霑化が進んだ。(4)尿中アルブミンの測定診療報酬化:UAEの有用性を証明しうる既存のエビデンスを集約した。さらに費用対効果の解析に着手した。④人材育成:第7回認定試験で新たに322名の腎臓病療養指導士を認定した。2024年度診療報酬改定において、慢性腎臓病透析予防指導管理料が算定されることが決定された。⑤研究の推進 (1) AMED,厚労省等の公的研究:腎臓学会員へ向けたアンケートで、2008年~2022年に獲得した公的資金獲得状況を調査、解析を行った。(2)国際動向:KDIGOにて推奨されているCKD、DKD治療薬の使用状況について各国にアンケートを行い、これら薬剤の使用に国際間で差があるか否か検討した。KDIGOが推奨している治療薬の使用内容と現実的なCKD治療内容にはかなり隔たりがあることが明らかとなった。(3)疫学調査:過去の健診受診状況等で重み付けを行い、CKD患者数を推定した。わが国のCKD患者数は2000万人以上存在する可能性があることが示唆された。⑥情報発信、広報:昨年立ち上げた研究班のHPを活用し、今後も研究成果を広く周知・公開していく予定である。 (https://ckd-research.jp/)。
結論
腎疾患検討会報告書では、今後のCKD対策の全体目標が設定されている。1)CKDを早期に発見・診断し、良質で適切な治療を早期から実施・継続することにより、CKD重症化予防を徹底する。2)同時に、CKD患者のQOLの維持向上を図る。2028 年までに、年間新規導入患者数を 35,000 人以下に減少させる(2016 年度、約39000人)。これまでの5年間の活動で、各分科会研究で一定の成果をあげてきた。CKDの早期発見・重症化予防、そして新規透析導入患者数の減少といった本研究の目標を達成することがこの研究班の使命である。最終年度を迎えるにあたり、これまでの成果をより鮮明に可視化、発信していけるよう腎臓学会、腎臓病協会等と連携して、継続的にオールジャパン体制で取り組む必要がある。
公開日・更新日
公開日
2024-11-14
更新日
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