アレムツズマブを用いたHLA不一致同種造血幹細胞移植療法の医師主導治験および造血幹細胞移植領域における医師主導治験発展のための研究

文献情報

文献番号
200934011A
報告書区分
総括
研究課題名
アレムツズマブを用いたHLA不一致同種造血幹細胞移植療法の医師主導治験および造血幹細胞移植領域における医師主導治験発展のための研究
課題番号
H19-免疫・一般-011
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
神田 善伸(自治医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 大橋 靖雄(東京大学大学院医学系研究科)
  • 中尾 眞二(金沢大学医薬保健研究域医学系)
  • 千葉 滋(筑波大学大学院人間総合科学研究科)
  • 谷口 修一(国家公務員共済組合連合会虎の門病院)
  • 宮村 耕一(名古屋第一赤十字病院)
  • 宮本 敏浩(九州大学病院)
  • 森 慎一郎(国立がんセンター中央病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
22,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
CD52に対するモノクローナル抗体であるアレムツズマブを用いることによってHLA二座以上不一致血縁者間造血幹細胞移植が可能になることを示す。本試験は医師主導治験として行い、アレムツズマブの適応承認申請を行う。造血幹細胞移植領域における医師主導治験のあり方についても考察する。
研究方法
他に有効な治療法を持たない造血器疾患を有する、HLA一致または一座不一致の血縁・非血縁ドナーがいない20-65歳の患者を対象とした。移植前処置は、自家移植の既往のない55歳未満の患者においてはシクロホスファミドと全身放射線照射に加えてアレムツズマブを患者体重あたり0.16-0.25 mg/kgを6日間併用した。自家移植の既往のある患者あるいは55歳以上の高齢患者においては、フルダラビン、ブスルファン、少線量全身放射線照射とアレムツズマブを併用した。前処置後にドナーから採取した末梢血幹細胞を輸注した。主要評価項目は移植後60日以内の生着不全およびグレードIII以上の急性GVHDの発症率とした。アレムツズマブの投与量は0.20 mg/kgを開始用量(第1コホート)から開始し、3例ずつのコホート法により、0.16 mg/kg、0.20 mg/kg、あるいは0.25 mg/kgを投与し、その後のCRM(連続再評価法)の開始量を決定した。
結果と考察
0.20 mg/kgを用いた第1コホートの3症例、0.16 mg/kg/dayを用いた第2コホートの3症例が全て成功基準を満たしたので、平成19年度よりCRMによってアレムツズマブの至適投与量を検討している。現在、0.16 mg/kgに減量後の症例が9症例となり、7例が成功基準を満たしており、逐次検定に移行することによって治験を早期に終了できる予定である。
造血幹細胞移植の臨床試験であるため、移植後180日以内に1症例あたり50件を超える有害事象が認められたが、大半の有害事象は非重篤であり、かつ治験薬との関連性が「関連あるかもしれない」に分類されており、その理由は関連性がないと断定する明らかな証拠を提示できないからである。今後はより合理的な有害事象の管理法を探索することによって、造血幹細胞移植領域における医師主導治験の確立に貢献する。
結論
この医師主導治験でアレムツズマブの適応承認申請を行うことによって、適切なドナーがいないために移植を受けることが出来ない多くの患者に同種造血幹細胞移植療法を適応することが可能となる。さらに造血幹細胞移植領域における医師主導治験の発展にも貢献する公益性の高い研究であると考える。

公開日・更新日

公開日
2010-05-19
更新日
-

文献情報

文献番号
200934011B
報告書区分
総合
研究課題名
アレムツズマブを用いたHLA不一致同種造血幹細胞移植療法の医師主導治験および造血幹細胞移植領域における医師主導治験発展のための研究
課題番号
H19-免疫・一般-011
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
神田 善伸(自治医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 大橋 靖雄(東京大学大学院医学系研究科)
  • 中尾 眞二(金沢大学医薬保健研究域医学系)
  • 千葉 滋(筑波大学大学院人間総合科学研究科)
  • 谷口 修一(国家公務員共済組合連合会虎の門病院)
  • 宮村 耕一(名古屋第一赤十字病院)
  • 宮本 敏浩(九州大学病院)
  • 森 慎一郎(国立がんセンター中央病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
CD52に対するモノクローナル抗体であるアレムツズマブを用いることによってHLA二座以上不一致血縁者間造血幹細胞移植が可能になることを示す。本試験は医師主導治験として行い、アレムツズマブの適応承認申請を行う。造血幹細胞移植領域における医師主導治験のあり方についても考察する。
研究方法
他に有効な治療法を持たない造血器疾患を有する、HLA一致または一座不一致の血縁・非血縁ドナーがいない20-65歳の患者を対象とした。移植前処置は、自家移植の既往のない55歳未満の患者においてはシクロホスファミドと全身放射線照射に加えてアレムツズマブを患者体重あたり0.16-0.25 mg/kgを6日間併用した。自家移植の既往のある患者あるいは55歳以上の高齢患者においては、フルダラビン、ブスルファン、少線量全身放射線照射とアレムツズマブを併用した。前処置後にドナーから採取した末梢血幹細胞を輸注した。主要評価項目は移植後60日以内の生着不全およびグレードIII以上の急性GVHDの発症率とした。アレムツズマブの投与量は0.20 mg/kgを開始用量(第1コホート)から開始し、3例ずつのコホート法により、0.16 mg/kg、0.20 mg/kg、あるいは0.25 mg/kgを投与し、その後のCRM(連続再評価法)の開始量を決定した。
結果と考察
0.20 mg/kgを用いた第1コホートの3症例、0.16 mg/kg/dayを用いた第2コホートの3症例が全て成功基準を満たしたので、平成19年度よりCRMによってアレムツズマブの至適投与量を検討している。現在、0.16 mg/kgに減量後の症例が9症例となり、7例が成功基準を満たしており、逐次検定に移行することによって治験を早期に終了できる予定である。
造血幹細胞移植の臨床試験であるため、移植後180日以内に1症例あたり50件を超える有害事象が認められたが、大半の有害事象は非重篤であり、かつ治験薬との関連性が「関連あるかもしれない」に分類されており、その理由は関連性がないと断定する明らかな証拠を提示できないからである。今後はより合理的な有害事象の管理法を探索することによって、造血幹細胞移植領域における医師主導治験の確立に貢献する。
結論
この医師主導治験でアレムツズマブの適応承認申請を行うことによって、適切なドナーがいないために移植を受けることが出来ない多くの患者に同種造血幹細胞移植療法を適応することが可能となる。さらに造血幹細胞移植領域における医師主導治験の発展にも貢献する公益性の高い研究であると考える。

公開日・更新日

公開日
2010-05-19
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200934011C

成果

専門的・学術的観点からの成果
CD52分子に対するモノクローナル抗体であるアレムツズマブを用いることによって二抗原以上のHLA不適合移植が可能となるという発見は世界初のものである。また、その血中濃度が移植後のCD4陽性T細胞やCD8陽性T細胞の回復に関連する傾向を見いだした。一方、この移植方法では移植後の免疫回復が遷延する危険があるが、不随研究によって移植後の抗原特異的細胞傷害性T細胞の誘導、感染症に対する先制攻撃的治療戦略などの開発を行なった。
臨床的観点からの成果
逐次検定に移行して治験を早期に終了することにより、目標であるアレムツズマブの日本国内での適応承認申請は早期に達成できる予定である。これによって、移植を必要とする疾患を有するにもかかわらずHLA適合ドナーが存在しない患者に対して同種移植という根治的な治療法が日本全国の移植施設において可能となる。また、造血幹細胞移植領域の医師主導治験における有害事象の管理についての対策を考えることができた。この知見に基づいて今後の医師主導治験の発展が期待される。
ガイドライン等の開発
池亀和博(兵庫医科大学)、吉原哲(兵庫医科大学)、一戸辰夫(京都大学)、神田善伸(自治医科大学附属さいたま医療センター)の4名で日本造血細胞移植学会ガイドライン委員会HLA不適合移植ガイドライン部会を構成し、平成21年8月に「HLA 不適合移植ガイドライン」を公表した。
その他行政的観点からの成果
日本初の造血幹細胞移植領域の医師主導治験を実施し、先進治療領域での医師主導治験制度の問題点について掌握することができた。先進治療領域では様々な薬剤が適応外使用されているため、医師主導治験の効率的な方法を提案することは、健全な医療の発展に貢献する。
その他のインパクト
2008年1月に移植関連班研究合同で公開シンポジウムを実施した。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
48件
その他論文(和文)
69件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
25件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Oshima K, Kanda Y, Kako S, et al.
Persistent cytomegalovirus (CMV) infection after haploidentical hematopoietic stem cell transplantation using in vivo alemtuzumab: Emergence of resistant CMV due to mutations in the UL97 and UL54 genes.
Journal of Medical Virology  (2008)
原著論文2
Asano-Mori Y, Kanda Y, Oshima K, et al.
Clinical features of late cytomegalovirus infection after hematopoietic stem cell transplantation.
International Journal of Hematology  (2008)
原著論文3
Oshima K, Kanda Y, Yamashita T, et al.
Central nervous system relapse of leukemia after allogeneic hematopoietic stem cell transplantation.
Biology of Blood and Marrow Transplantation  (2008)
原著論文4
Kanda Y, Omuro Y, Baba E, et al.
Allogeneic stem cell transplantation using reduced-intensity conditioning against advanced pancreatic cancer: a Japanese survey.
Bone Marrow Transplantation  (2008)
原著論文5
Oshima K, Kanda Y, Asano-Mori Y, et al.
Presumptive treatment strategy for aspergillosis in allogeneic hematopoietic stem cell transplant recipients.
Journal of Antimicrobial Chemotherapy  (2007)
原著論文6
Oshima K, Kanda Y, Nakasone H, et al.
Decreased incidence of acute graft-versus-host disease by continuous infusion of cyclosporine with a higher target blood level.
American Journal of Hematology  (2008)
原著論文7
Okuda S, Terasako K, Kanda Y, et al.
Fludarabine, cyclophosphamide, anti-thymocyteglobulin, and low-dose total body irradiation conditioning enables 1-HLA-locus-mismatched hematopoietic stem cell transplantation for very severe aplastic anemia without affecting ovarian function.
American Journal of Hematology  (2009)
原著論文8
Okuda S, Sato M, Kanda Y, et al.
Should busulfan-containing regimen be avoided for young female patients undergoing hematopoietic stem cell transplantation?
Bone Marrow Transplantation  (2009)
原著論文9
Kato M, Sanada M, Chiba S, et al.
Frequent inactivation of A20 in B-cell lymphomas.
Nature  (2009)
原著論文10
Yokoyama Y, Suzuki T, Chiba S, et al.
Derivation of functional mature neutrophils from human embryonic stem cells.
Blood  (2009)
原著論文11
Takagi S, Taniguchi S. et al.
High incidence of haemophagocytic syndrome following umbilical cord blood transplantation for adults.
British Journal of Haematology  (2009)
原著論文12
Matsuno N, Taniguchi S. et al.
Impact of HLA disparity in the graft-versus-host direction on engraftment in adult patients receiving reduced-intensity cord blood transplantation.
Blood  (2009)
原著論文13
Kuwatsuka Y, Miyamura K, Suzuki R, et al.
Hematopoietic stem cell transplantation for core binding factor acute myeloid leukemia: t(8;21) and inv(16) represent different clinical outcomes.
Blood  (2009)
原著論文14
Nishiwaki S, Terakura S, Miyamura K, et al.
Impact of macrophage infiltration of skin lesions on survival after allogeneic stem cell transplantation: a clue to refractory graft-versus-host disease.
Blood  (2009)
原著論文15
Kohno K, Nagafuji K, Miyamoto T, et al.
Infectious complications in patients receiving autologous CD34-selected hematopoietic stem cell transplantation for severe autoimmune diseases.
Transplantation Infectious Disease  (2009)
原著論文16
Teshima T, Nagafuji K, Miyamoto T, et al.
Rituximab for the treatment of corticosteroid-refractory chronic graft-versus-host disease.
International Journal of Hematology  (2009)
原著論文17
Fuji S, Kim SW, Mori S, et al.
Possible association between obesity and posttransplantation complications including infectious diseases and acute graft-versus-host disease.
Biology of Blood and Marrow Transplantation  (2009)
原著論文18
Fuji S, Kim SW, Mori S, et al.
Intensive glucose control after allogeneic hematopoietic stem cell transplantation: a retrospective matched-cohort study.
Bone Marrow Transplantation  (2009)
原著論文19
Kanda Y, Yamashita T, Mori T, et al.
A randomized controlled trial of plasma real-time PCR and antigenemia assay for monitoring cytomegalovirus infection after unrelated bone marrow transplantation.
Bone Marrow Transplantation  (2010)
原著論文20
Kimura SI, Oshima K, Kanda Y, et al.
Pharmacokinetics of cyclosporine during the switch from continuous intravenous infusion to oral administration after allogeneic hematopoietic stem cell transplantation.
Bone Marrow Transplantation  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
2015-06-29