文献情報
文献番号
202310091A
報告書区分
総括
研究課題名
小児慢性特定疾病における医療・療養支援および疾病研究の推進に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22FC2003
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
笠原 群生(国立研究開発法人国立成育医療研究センター 病院)
研究分担者(所属機関)
- 横谷 進(福島県立医科大学 放射線医学県民健康管理センター)
- 窪田 満(国立研究開発法人国立成育医療研究センター 総合診療部)
- 田倉 智之(国立大学法人東京大学 大学院医学系研究科 医療経済政策学講座)
- 檜垣 高史(国立大学法人愛媛大学 大学院医学系研究科 地域小児・周産期学講座)
- 落合 亮太(横浜市立大学 大学院医学研究科 看護学専攻)
- 小松 雅代(大阪大学 大学院医学系研究科 社会医学講座環境医学)
- 大石 公彦(東京慈恵会医科大学 小児科)
- 黒澤 健司(神奈川県立こども医療センター 遺伝科)
- 西牧 謙吾(独立行政法人国立病院機構新潟病院 小児科)
- 掛江 直子(国立研究開発法人国立成育医療研究センター 研究開発監理部 生命倫理研究室)
- 盛一 享徳(国立成育医療研究センター 研究所 小児慢性特定疾病情報室)
- 桑原 絵里加(国立成育医療研究センター 研究所 小児慢性特定疾病情報室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
31,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
小児慢性特定疾病(以下、小慢)対策の推進に寄与する基礎資料および実践基盤の整備のために、①当該事業に関連した疾病研究および適切な医療の促進に関する検討(医療費助成、医療提供体制、疾病登録など)、②地域共生および療養生活支援に関する検討(移行期医療支援・自立支援、国民への情報発信など)を行うことを目的とした。
研究方法
以下の研究を実施した。
1.1 指定難病に該当する可能性のある小児慢性特定疾病の検討
1.2 小児慢性特定疾病の新規対象疾病に関する検討
1.3 小児期慢性疾病に対する医療経済評価の手法を用いた検討
1.4 診療情報明細書データを利用した小児慢性特定疾病の医療費に関する検討
1.5 国際生活機能分類から見た医療意見書に含めるべき項目に関する検討
2.1 小児慢性特定疾病の遺伝子診断および全ゲノム解析に関する検討
2.2 特殊ミルクの品質及び安定的な供給のあり方等に関する検討
3.1現行および次期登録データベースの在り方に関する検討
3.2小児慢性特定疾病児童等登録データの提供システム等に関する検討
4.1移行期医療支援センターの設置促進に向けた実態と課題の把握に関する検討
4.2医療および障害・福祉の横断的な制度・施策に関する検討
4.3病弱教育と連携した小慢児童等の教育分野向け支援に関する検討
4.4地域共生の促進のための領域横断的な連携を目指す際の課題に関する検討
4.5小児慢性特定疾病児童等の生活実態および社会支援等に関する検討
5.1 医療関係者や患者家族等への情報提供・情報共有についての検討
1.1 指定難病に該当する可能性のある小児慢性特定疾病の検討
1.2 小児慢性特定疾病の新規対象疾病に関する検討
1.3 小児期慢性疾病に対する医療経済評価の手法を用いた検討
1.4 診療情報明細書データを利用した小児慢性特定疾病の医療費に関する検討
1.5 国際生活機能分類から見た医療意見書に含めるべき項目に関する検討
2.1 小児慢性特定疾病の遺伝子診断および全ゲノム解析に関する検討
2.2 特殊ミルクの品質及び安定的な供給のあり方等に関する検討
3.1現行および次期登録データベースの在り方に関する検討
3.2小児慢性特定疾病児童等登録データの提供システム等に関する検討
4.1移行期医療支援センターの設置促進に向けた実態と課題の把握に関する検討
4.2医療および障害・福祉の横断的な制度・施策に関する検討
4.3病弱教育と連携した小慢児童等の教育分野向け支援に関する検討
4.4地域共生の促進のための領域横断的な連携を目指す際の課題に関する検討
4.5小児慢性特定疾病児童等の生活実態および社会支援等に関する検討
5.1 医療関係者や患者家族等への情報提供・情報共有についての検討
結果と考察
小慢と指定難病の対象疾病を比較検討したところ、小慢に対して指定難病が対応しているのは406疾病(48%)であった。指定難病から見た場合、253疾病(74%)が対応、一部対応は20疾病(6%)、非対応は68疾病(20%)であった。学会との協力の下、小慢新規追加検討にて乳児発症性STING関連血管炎、遺伝性高カリウム性周期性四肢麻痺、遺伝性低カリウム性周期性四肢麻痺など13疾病が要望された。医療経済評価として支払意思調査を行い、仮想的市場評価分析では家計に対する追加負担金額は小児期を基準1とすると、青年期0.95、壮年期0.91、高齢期0.72と推定された。コンジョイント分析では、小児期で6873.6千円/QALY、高齢期で6283.1千円/QALYとされ、小児医療への投資が国民の支持を得る可能性が示唆された。レセプト傷病名と小慢10疾患群について検討し対応表を作成した。国際生活機能分類(ICF)を用いて、小慢の医療意見書に含めるべきADLや社会参加項目を抽出した。慢性心疾患では術後の生活の質に影響を与える項目が特定され、疾患の重症度と学校生活管理指導票の指導区分との相関が示された。小慢の遺伝性疾病の40%以上が保険適用外であることが確認され、希少難病に対しては多数遺伝子を同時解析する技術がコスト的にも診断確定率でも優位であることが示された。フェニルケトン尿症メープルシロップ尿症の治療に必須な特殊ミルクの安定供給策を検討し、日本では特定メーカー一社が供給しているため供給の不安定性が問題であり、食品グレードの原材料を用いた新規登録品の開発が提案された。小慢児童等が利用できる施策やサービスについて、制度横断的な情報として、社会保障制度の視点からの説明や医療費助成のシナリオ例を作成し公開した。北海道や東北・北陸地方での調査から病弱教育の専門性の低下や新しい連携モデルの構築の必要性が示された。支援冊子やICTを活用した自立支援員の相談事例の蓄積が必要と考えられた。小慢児童等の生活実態と社会支援等の検討のため、全国の小慢指定医療機関と患者家族会に協力を求め、12月~3月に調査を実施し1475例の回答を得た。指定難病と小慢の制度の違いをわかりやすく説明した新しいコンテンツを一般向けサイトで公開した。中高生に対し病児の療養生活を伝える実写とパラパラマンガアニメの2種類の動画を制作し、子供24名、保護者18名に評価を行った。実写は子供46%、保護者33%が面白いと感じ、アニメは子供50%、保護者39%が面白いと回答し、どちらも概ね主旨に沿った理解がされ動画媒体による情報伝達は一定の効果が期待された。ポータルウェブサイトの2023年度のアクセス数は年間約324万件。スマートデバイスからのアクセスが7割を占めていた。
結論
本研究班では、疾病研究および適切な医療と福祉支援の促進のために必要な基礎資料の提示や具体的な推進方策の提案ならびに社会への情報提供を行ってきた。慢性疾病を抱えた子どもたちの療養環境に関わる支援は、相互に関係しつつ多岐にわたる総合的な支援となっている。本年度の研究成果を踏まえ引き続き政策への貢献に努めたい。
公開日・更新日
公開日
2025-05-27
更新日
-