金属アレルギーの克服へ向けた効果的診断・予防・治療法の開発研究

文献情報

文献番号
200934005A
報告書区分
総括
研究課題名
金属アレルギーの克服へ向けた効果的診断・予防・治療法の開発研究
課題番号
H19-免疫・一般-005
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
小笠原 康悦(東北大学 加齢医学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木 隆二(国立病院機構 相模原病院 臨床研究センター)
  • 大津 浩(東北大学大学院 工学研究科)
  • 椛島 健治(京都大学大学院 医学研究科)
  • 西屋 禎(北海道大学大学院 医学研究科)
  • 戸倉 新樹(産業医科大学 医学部)
  • 橋爪 秀夫(浜松医科大学 医学部)
  • 松永 佳世子(藤田保健衛生大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
金属アレルギーは最近増加しているが、金属アレルギー発症の分子機構は未だ分かっていない。本研究は金属アレルギー発症の分子機構を明らかにし、アレルギーの診断、予防、治療に役立つ理論的基盤の確立を目指すことを目的とする。
Specific Aimとして以下を設定する。
1金属アレルギー発症の分子機構の解明
2金属アレルギーにおける細菌成分のアジュバント効果
3新規診断法と治療法の開発へ向けた理論的基盤の確立
研究方法
1金属アレルギー発症の分子機構の解明
金属(Pd)アレルギーマウスモデルを用いて所属リンパ節リンパ球をヌードマウスに養子移入した。養子移入と金属暴露を繰り返し、エフェクター細胞を濃縮し解析した。内因性のアトピー性皮膚炎(AD)の金属アレルギーとの関与を調べた。
2金属アレルギーにおける細菌成分のアジュバント効果
マウスの骨髄由来樹状細胞(BMDC)を金属(Pd)溶液+ LPSで処理しマウスに移入しその後、Pd溶液を耳介に接種し腫脹を測定した。
3新規診断法と治療法の開発へ向けた理論的基盤の確立
金属パッチテスト(PT)の方法を再検討した。新規診断法の確立のため、金属PT陽性の金属アレルギー患者末梢血を用いて金属イオンによるリンパ球幼弱化試験(LTT試験)を評価した。溶出金属イオンの測定法を開発するため、マウス皮下に金属ワイヤーを植え込み、周辺組織を採取し金属イオン濃度を測定した。
結果と考察
1 金属特異的Vα鎖が炎症局所に選択的に集積していた。ヌードマウスに養子移入を繰り返すことで、アレルギー炎症局所にエフェクターT細胞の集積が確認された。内因性AD患者に1つ以上の金属の陽性所見を得た。
2 BMDCの耳介への移入による感作実験において、BMDCを移入することで感作が成立した。
3 Niアレルギー患者のLTTは、サイトカインの中和抗体添加によっても効果が認められなかった。マウスに金属ワイヤーを埋め込み周辺組織中のNi濃度を測定したところ、検出可能であった。
結論
・Pdアレルギーにおいて、TCRの特異的Vα鎖が金属の認識に関与している。
・内因性ADの原因・病態は金属アレルギーが重要因子である。
・BMDCの耳介への移入による感作実験において、BMDCを移入することで感作が成立した。
・金属の生体での溶出量測定の実用化のためには、さらなる高感度化が必要である。

公開日・更新日

公開日
2010-05-19
更新日
-

文献情報

文献番号
200934005B
報告書区分
総合
研究課題名
金属アレルギーの克服へ向けた効果的診断・予防・治療法の開発研究
課題番号
H19-免疫・一般-005
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
小笠原 康悦(東北大学 加齢医学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木 隆二(国立病院機構 相模原病院 臨床研究センター)
  • 大津 浩(東北大学大学院 工学研究科)
  • 椛島 健治(京都大学大学院 医学研究科)
  • 西屋 禎 (北海道大学大学院 医学研究科)
  • 戸倉 新樹(産業医科大学 医学部)
  • 橋爪 秀夫(浜松医科大学 医学部)
  • 松永 佳世子(藤田保健衛生大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、金属アレルギー患者は増加の一途であるが、金属アレルギー発症の分子機構は未だ分かっていない。本研究は金属アレルギー発症の分子機構を明らかにし、アレルギーの診断、予防、治療に役立つ理論的基盤の確立を目指すことを目的とする。 Specific Aimとして以下を設定する。
1金属アレルギー発症の分子機構の解明
2金属アレルギーにおける細菌成分のアジュバント効果
3新規診断法と治療法の開発へ向けた理論的基盤の確立
研究方法
1金属アレルギー発症の分子機構の解明
金属(Pd)アレルギーマウスモデルを用いて所属リンパ節リンパ球をヌードマウスに養子移入した。養子移入と金属暴露を繰り返し、エフェクター細胞を濃縮し解析した。
2金属アレルギーにおける細菌成分のアジュバント効果
各種TLR系ならびにNOD系リガンドの細菌成分の重要性についてマウスモデルを用いて検討した。マウスの骨髄由来樹状細胞(BMDC)を金属(Pd)溶液+ LPSで処理しマウスに移入しその後、Pd溶液を耳介に接種し腫脹を測定した。
3新規診断法と治療法の開発へ向けた理論的基盤の確立
金属パッチテスト(PT)の方法を再検討した。新規診断法の確立のため、金属PT陽性の金属アレルギー患者末梢血を用いて金属イオンによるリンパ球幼弱化試験(LTT試験)を評価した。溶出金属イオンの測定法を開発するため、マウス皮下に金属ワイヤーを植え込み、周辺組織を採取し金属イオン濃度を測定した。
結果と考察
1 金属特異的Vα鎖が炎症局所に選択的に集積していた。ヌードマウスに養子移入を繰り返すことで、アレルギー炎症局所にエフェクターT細胞の集積が確認された。
2 BMDCの耳介への移入による感作実験において、BMDCを移入することで感作が成立した。
3 金属アレルギー患者のLTTは、制御性T細胞の除去により感度が増強した。マウスに金属ワイヤーを埋め込み周辺組織中のNi濃度を測定したところ、検出可能であった。
結論
・Pdアレルギーにおいて、TCRの特異的Vα鎖が金属の認識に関与している。
・細菌成分は金属アレルギーの発症、増悪に関与する。
・BMDCの耳介への移入による感作実験において、BMDCを移入することで感作が成立した。
・金属アレルギー患者のLTTは、制御性T細胞の除去により感度が増強した。
・金属の生体での溶出量測定が可能となった。

公開日・更新日

公開日
2010-05-19
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200934005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
これまで適切な動物モデルがなかった金属アレルギー研究において、新たなモデルの開発に成功した。このモデルによりアレルギーの発症の時系列的解析が可能となった。金属アレルギーにおいて、細菌成分がその発症および増悪に深くかかわっていることが明らかとなった。さらに、金属特異的に反応するT細胞を特定することに成功した。加えて、埋め込み金属周囲組織から、溶出金属の種類および濃度を測定する技術を開発した。
臨床的観点からの成果
パッチテストの判定エラーなどの問題点を調べ、パッチテストの標準化に向けて貼付方法、判定時期、基準について再検討した。新規診断法の開発に向けて患者末梢血を用いた金属反応性リンパ球の増殖反応を検討した。本法は、ニッケル等の金属においては有意であり、パッチテストの前診断として期待できる。我々が開発した溶出金属種、および量を測定する方法は、アレルギーの診断、予後の判定に極めて有用である。
ガイドライン等の開発
一般市民の方、医療従事者の方から質問を受けることも多く、今後、金属アレルギーQ&A集の作成を進め、将来的にはガイドラインの開発を目指している。
その他行政的観点からの成果
本研究班で得られた結果について浦安市歯科医師会会員へ情報提供した。歯科医師会を通じて金属アレルギーの話題を保健会報として浦安市の公立小学校および中学校12,000人に平成22年3月18日に配布した。保健会報は、保護者および生徒に保健活動のPR、ホットな話題および疾患の治療法等を周知することを目的としている。今後もセミナーや会報を通じて、医療従事者、ならびに市民一般への情報提供を続ける予定である。
その他のインパクト
市民、一般に対しての情報提供として、東北大学研究所一般公開において、金属アレルギー研究を紹介した。また、医療従事者に対する専門知識の提供として、当研究班の分担研究者である松永が、歯科と皮膚科の連携シンポジウムを開催した。

発表件数

原著論文(和文)
34件
原著論文(英文等)
146件
その他論文(和文)
18件
その他論文(英文等)
8件
学会発表(国内学会)
92件
学会発表(国際学会等)
36件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kitaura K, Kanayama K, Fujii Y et al.
T cell receptor repertoire in BALB/c mice varies according to tissue type, sex, age, and hydrocortisone treatment.
Exp Anim. , 58 (2) , 159-168  (2009)
原著論文2
Gotoh A, Hamada Y, Shiobara N et al.
Skew in T cell receptor usage with polyclonal expansion in lesions of oral lichen planus without hepatitis C virus infection.
Clin Exp Immunol. , 154 (2) , 192-201  (2008)
原著論文3
Shiobara N, Suzuki Y, Aoki H et al.
Bacterial superantigens and T cell receptor beta-chain-bearing T cells in the immunopathogenesis of ulcerative colitis.
Clin Exp Immunol. , 150 (1) , 13-21  (2007)
原著論文4
Wakasa-Morimoto C, Toyosaki-Maeda T, Matsutani T et al.
Arthritis and pneumonitis produced by the same T cell clones from mice with spontaneous autoimmune arthritis.
Int Immunol. , 20 (1) , 1331-1342  (2008)
原著論文5
Nakayama M, Akiba H, Takeda K et al.
Tim-3 mediates phagocytosis of apoptotic cells and cross-presentation
Blood , 113 , 3821-3830  (2009)
原著論文6
Kawano M, Matsuyama K, Miyamae Y et al.
Antimelanogenesis effect of Tunisian herb Thymelaea hirsuta extract on B16 murine melanoma cells.
Exp. Dermatol. , 16 , 977-984  (2007)
原著論文7
Nishimoto A, Lu L, hayashi M et al.
Jab1 regulates levels of endothelin type A and B receptors by promoting ubiquitination and degradation
Biochem. Biophys. Res. Commun. , 391 (4) , 1616-1622  (2010)
原著論文8
Horinouchi T, Asano H, Higa T et al.
Differential coupling of human endothelin type A receptor to G(q/11) and G(12) proteins: the functiional significance of receptor expression level in generating multiple receptor signaling
J. Pharmacol. Sci. , 111 (4) , 338-351  (2009)
原著論文9
Rajasekaran N, Solomon S, Watanabe T et al.
Histidine decarboxylase but not histamine receptor 1 or 2 deficiency protects from K/BxN serum-induced Arthritis.
Int Immunol , 21 , 1263-1268  (2009)
原著論文10
Ishihara K, Goi Y, Hong JJ et al.
Effects of nickel on eosinophil survival.
Int Arch Allergy Immunol , 149 , 57-60  (2009)
原著論文11
Leite-de-Moraes MC, Diem S et al.
Histamine receptor H4 Activation Positively Regulates in vivo IL-4 and IFN-g Production by invariant natural killer T cells.
J Immunol , 182 , 1233-1236  (2009)
原著論文12
Yamauchi K, Piao HM, Nakadate T et al.
Enhanced Goblet Cell Hyperplasia in HDC Knockout Mice with Allergic Airway Inflammation.
Allergology International , 58 , 125-134  (2009)
原著論文13
Ito T, Ito N, Hashizume H et al.
Roxithromycin inhibits chmokine-induced chemotaxis of Th1 and Th2 but regulatory T cells
J Dermatol Sci , 54 , 185-191  (2009)
原著論文14
Hashizume H, Aoshima M, Ito T et al.
Emergence of circulating monomyeloid precursors predicts reactivation of human herpesvirus-6 in drug-induced hypersensitivity syndrome
Br J Dermatol , 161 , 486-488  (2009)
原著論文15
Kobayashi M, Yoshiki R, Sakabe J et al.
Expression of toll-like receptor 2, NOD2 and dectin-1 and stimulatory effects of their ligands and histamine in normal human keratinocytes.
Br J Dermatol , 160 , 297-304  (2009)
原著論文16
Yoshiki R, Kabashima K, Sugita K et al.
IL-10-Producing Langerhans Cells and Regulatory T Cells Are Responsible for Depressed Contact Hypersensitivity in Grafted Skin.
J Invest Dermatol , 129 , 705-713  (2009)
原著論文17
Fukamachi S, Nakamura M, Tokura Y
Cisplatin-induced acral erythema.
Eur J Dermatol , 19 , 171-172  (2009)
原著論文18
Sugita K, Kobayashi M, Mori T et al.
Antihistaminic drug olopatadine downmodulates CCL17/TARC production by keratinocytes and Langerhans cells.
J Dermatol , 36 , 654-657  (2009)
原著論文19
Atarashi K, Kabashima K, Akiyama K et al
Skin application of the nonsteroidal anti-inflammatory drug ketoprofen downmodulates the antigen-presenting ability of Langerhans cells in mice
Br J Dermatol , 159 , 306-313  (2009)
原著論文20
Koga C, Kabashima K, Shiraishi N et al.
Possible pathogenic role of Th17 cells for atopic dermatitis.
J Invest Dermatol , 128 , 2625-2630  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-06-29
更新日
-