文献情報
文献番号
202310083A
報告書区分
総括
研究課題名
小児期発症慢性疾患を有する全ての子どもに対する成人移行支援の均てん化と移行期医療支援センターとの連携に向けた調査研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23FC1054
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
窪田 満(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 総合診療部)
研究分担者(所属機関)
- 三浦 大(東京都立小児総合医療センター 循環器科)
- 一ノ瀬 英史(いちのせファミリークリニック)
- 稲垣 剛志(国立国際医療研究センター センター病院 総合診療科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
4,610,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
小児医療の進歩の結果、疾患を持ちながら成人する患者が増えているが、適切な「成人移行支援」が提供されていないために多くの課題が残されている。成人移行支援の体制整備を目的として、平成27年度から2年間、「小児慢性特定疾病児童成人移行期医療支援モデル事業」が行われ、多職種連携チームによる成人移行支援外来が各地で始まった。それを受けた形で、平成29年度から3年間行われた厚生労働科学研究「小児期発症慢性疾患を持つ移行期患者が疾患の個別性を超えて成人診療へ移行するための診療体制の整備に向けた調査研究(窪田班)」にて、「成人移行支援コアガイド」が全国に配付された。その後、令和2年度から国立高度専門医療研究センター医療研究連携推進本部横断的研究推進費による「病院間の成人移行支援体制の構築(窪田班)」に研究が受け継がれ、移行困難患者の成人移行に関する症例集の作成や病院間移行のスキームの作成などが行われてきた。
しかしながら、上記事業および調査研究は医療機関を主体として行われてきたものであり、患者主体の目線や、厚労省が各自治体への設置を目指している移行期医療支援センターとの連携に乏しいものであった。その問題の解決を目指すため、慢性疾患成人移行アプリの開発と移行期医療支援センターとの連携に取り組むこととした。
しかしながら、上記事業および調査研究は医療機関を主体として行われてきたものであり、患者主体の目線や、厚労省が各自治体への設置を目指している移行期医療支援センターとの連携に乏しいものであった。その問題の解決を目指すため、慢性疾患成人移行アプリの開発と移行期医療支援センターとの連携に取り組むこととした。
研究方法
(1) 慢性疾患成人移行アプリの開発は、東京都移行期医療支援センターとの連携で行い、株式会社ミラボとアプリの開発・運用に関して検討を進める。ユーザーインターフェースも含め、アプリのデザインや内容に関して、毎月オンラインによる面談で詳細を詰めていく。
(2) 1年目は主に自立(自律)支援を慢性疾患成人移行アプリで試行していく。アプリに成人移行支援のガイド、移行準備チェックリストを入れ、サマリーなどを自分で入力できるようにする。
(3) 各自治体の移行期医療支援センターと連携し、問題点を抽出し、解決の方法を検討する。
(4) 国立国際医療センター病院における、成人移行患者を受ける側のトランジションチームを用いた病院間移行を増やす。運用マニュアルを作成し、一部を慢性疾患成人移行アプリにその内容を組み込む。
(5) 在宅医療を必要としている成人移行支援対象患者に対して、病院、地域双方に向けたマニュアルを作成し、一部を慢性疾患成人移行アプリにその内容を組み込む。
(倫理面の配慮)
本研究は患者情報を扱わず、倫理審査は不要である。
(2) 1年目は主に自立(自律)支援を慢性疾患成人移行アプリで試行していく。アプリに成人移行支援のガイド、移行準備チェックリストを入れ、サマリーなどを自分で入力できるようにする。
(3) 各自治体の移行期医療支援センターと連携し、問題点を抽出し、解決の方法を検討する。
(4) 国立国際医療センター病院における、成人移行患者を受ける側のトランジションチームを用いた病院間移行を増やす。運用マニュアルを作成し、一部を慢性疾患成人移行アプリにその内容を組み込む。
(5) 在宅医療を必要としている成人移行支援対象患者に対して、病院、地域双方に向けたマニュアルを作成し、一部を慢性疾患成人移行アプリにその内容を組み込む。
(倫理面の配慮)
本研究は患者情報を扱わず、倫理審査は不要である。
結果と考察
小児期発症慢性疾患の成人移行支援に関しては、これまで医療機関、特に小児医療機関を主体として行われてきたものであり、患者主体の目線が乏しかった。また、厚労省が各自治体への設置を目指している移行期医療支援センターとの連携も進んでいなかった。
今回開発した慢性疾患成人移行アプリの最大の特徴は、記入することだけで患者自身の学びになるように作られているところである。例えば、「自分の病名について知っていますか」という問いに対し、回答欄で「はい」を選択すれば問題ないが、「いいえ」あるいは「ある程度」と回答した際に、以下の助言がポップアップする。
・主治医に病名をたずねましょう。
・病名が複数ある場合は、どれが主な者か確認しましょう。
・それぞれの病気の状態について、知っておきましょう。
・自分の病気について、インターネットや本で、自分でも調べてみましょう。
この機能によって、自己学習が進み、ヘルスリテラシーの獲得に寄与するようにできている。
また、医療的ケア児に関しては、移動・食事・排泄・入浴・コミュニケーションなどの日常生活活動(ADL)、胃瘻、気管切開などの医療デバイスの有無、知的障害の有無、そして在宅指導管理料や医療費助成の種類を記載できるようにした。これにより、保護者の確認が進むとともに、成人診療科に移行する際の、社会的側面の情報を共有しやすくした。
以上の機能によって、自立可能な患者に対しては自立支援が進み、自立が難しい患者に関しては、診療科の移行が進むことを期待できる。さらに今後、全国の移行期医療支援センターとの連携の中でバージョンアップがされることで、さらなる改善が期待できる。
今回開発した慢性疾患成人移行アプリの最大の特徴は、記入することだけで患者自身の学びになるように作られているところである。例えば、「自分の病名について知っていますか」という問いに対し、回答欄で「はい」を選択すれば問題ないが、「いいえ」あるいは「ある程度」と回答した際に、以下の助言がポップアップする。
・主治医に病名をたずねましょう。
・病名が複数ある場合は、どれが主な者か確認しましょう。
・それぞれの病気の状態について、知っておきましょう。
・自分の病気について、インターネットや本で、自分でも調べてみましょう。
この機能によって、自己学習が進み、ヘルスリテラシーの獲得に寄与するようにできている。
また、医療的ケア児に関しては、移動・食事・排泄・入浴・コミュニケーションなどの日常生活活動(ADL)、胃瘻、気管切開などの医療デバイスの有無、知的障害の有無、そして在宅指導管理料や医療費助成の種類を記載できるようにした。これにより、保護者の確認が進むとともに、成人診療科に移行する際の、社会的側面の情報を共有しやすくした。
以上の機能によって、自立可能な患者に対しては自立支援が進み、自立が難しい患者に関しては、診療科の移行が進むことを期待できる。さらに今後、全国の移行期医療支援センターとの連携の中でバージョンアップがされることで、さらなる改善が期待できる。
結論
慢性疾患成人移行アプリを広く全国の小児期発症慢性疾患を持つ患者に使用して頂き、誰一人取り残されることのない悉皆性のある成人移行支援の構築に繋げたいと考えている。
公開日・更新日
公開日
2025-05-27
更新日
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