患者との双方向的協調に基づく先天異常症候群の自然歴の収集とrecontact可能なシステムの構築

文献情報

文献番号
202310081A
報告書区分
総括
研究課題名
患者との双方向的協調に基づく先天異常症候群の自然歴の収集とrecontact可能なシステムの構築
研究課題名(英字)
-
課題番号
23FC1052
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
小崎 健次郎(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 荻島 創一(国立大学法人 東北大学 高等研究機構 未来型医療創成センター)
  • 青木 洋子(国立大学法人東北大学 大学院医学系研究科 )
  • 仁科 幸子(蓮江 幸子)(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 小児外科系専門診療部 眼科)
  • 松永 達雄(独立行政法人 国立病院機構東京医療センター 臨床研究センター聴覚・平衡覚研究部 / 臨床遺伝センター)
  • 黒澤 健司(地方独立行政法人 神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター 遺伝科)
  • 大橋 博文(埼玉県立小児医療センター 遺伝科)
  • 古庄 知己(国立大学法人信州大学 医学部 遺伝医学教室)
  • 緒方 勤(国立大学法人浜松医科大学  医学部)
  • 水野 誠司(愛知県医療療育医療総合センター 発達障害研究所 遺伝子医療研究部 兼 中央病院)
  • 岡本 伸彦(地方独立行政法人 大阪府立病院機構 大阪府立母子保健総合医療センター 遺伝診療科)
  • 松浦 伸也(国立大学法人広島大学 原爆放射線医科学研究所)
  • 副島 英伸(国立大学法人佐賀大学 医学部 分子生命科学講座)
  • 吉浦 孝一郎(国立大学法人長崎大学 原爆後障害医療研究所 人類遺伝学)
  • 樋野村 亜希子(国立大学法人滋賀医科大学 倫理審査室)
  • 足立 香織(国立大学法人鳥取大学 研究推進機構 研究基盤センター)
  • 渡邉 淳(国立大学法人金沢大学附属病院)
  • 吉橋 博史(地方独立行政法人 東京都立小児総合医療センター 臨床遺伝科)
  • 小崎 里華(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 遺伝診療センター遺伝診療科)
  • 中藤 大輔(慶應義塾大学 医学部)
  • 宇都宮 朱里(地方独立行政法人広島 市立病院機構広島市立北部医療センター安佐市民病院 小児科・がんゲノム診療科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
28,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
先天異常症候群は、障害される解剖学的部位の組み合わせにより数十から数百の疾患に分類される。心肺機能・消化管機能・難治性痙攣などの中枢神経障害等から生命の危険や重度の後遺症を引き起こすことがある。従来、先天異常症候群には治療法がないと考えられていたが、現在いくつかの先天異常症候群については新しい治療法の開発が進められており、治験が始まっている疾患もある。
これまで先天異常症候群の研究班では全国の小児病院や遺伝子診療部門と連携し、各種症候群の自然歴の解明・症状と遺伝子型の関連研究・遺伝学的検査の保険承認、新たな疾患の難病指定を推進してきた。その結果、多くの先天異常症候群の分子遺伝学的検査が保険承認され、全国の施設で遺伝学的検査が可能となり、共通の分子遺伝学的基盤を有する患者コホートの確保が可能となった。しかし、診断症例が増加する中で、各疾患の専門家であっても患者情報の把握が困難になっている。また、患者が治験や患者会などへのアクセスが十分にできていないケースも見受けられる。従来の医師主導による一方向の疾患登録のレジストリでは不十分で、将来の臨床治験の実施を見据えた双方向的なシステムの構築が必要である。このシステムにより、各疾患の詳細な自然歴・症状の情報を収集し研究基盤を強化、医療者や研究者が臨床試験参加者数を容易に概算でき、臨床試験開始時に患者へのコンタクトを可能とすることで、先天異常症候群に関する研究と治療法の開発が加速し、患者やその家族に対する医療サービスの質が向上することが期待される。
研究方法
患者自らがアクセスし、情報を登録できるようにWeb上にシステムを構築する。まず研究の一年目は、Webでの患者レジストリシステムの確立を行う。症例は2~3疾患に絞って、患者情報を登録してもらう。すでに複数の患者会にコンタクトしているが、いずれも本システムの参加に前向きな回答を得ており、システム完成次第登録を進めていく。
また、既知の疾患に関するさらなる検討や鑑別疾患の調査も行い、自然歴などをより詳細に調べることにより、レジストリの登録内容の質の向上も目指す。
結果と考察
1. 患者主導によるrecontact可能なシステムの構築
患者または患者家族がアクセスし登録可能なレジストリシステムを、Web上に構築した。登録内容は臨床症状に加え、発達や教育歴も登録可能なものとした。個人情報に関しては、氏名や生年月日は登録せず、recontactのためのメールアドレスのみとした。セキュリティに関しては、J-CATやREMEDYなどで使用しているサーバーに情報の登録を行うこととした。
システムの完成後、研究計画に従い3疾患の登録を開始した。登録を行った3疾患はソトス症候群、モワット・ウィルソン症候群、HNRNP関連疾患で、患者会と連携し、登録を推進した。患者・患者家族はいずれも協力的であり、家族会内でも周知して頂くことができた。
研究1年目の目標であった2~3疾患の登録を行うことができたことより、来期はさらに登録疾患を本研究班の担当症例を中心に広げていく。

2.レジストリに登録する疾患の臨床症状や自然歴などの更なる調査
患者主導によるレジストリシステム構築により、全国の患者から臨床情報、発達歴、教育歴などの詳細なデータの収集が可能となった。それに並行して、当研究班の研究対象の疾患についての更なる研究と鑑別疾患について研究を行った。
結論
従前の先天異常症候群の研究データを基に、先天異常症候群の患者の自然歴の収集とRecontact可能なレジストリシステムの構築を行い、3疾患について登録を開始した。また今後登録予定の先天異常症候群の自然歴の収集や合併症、鑑別疾患となる先天異常症候群の研究を行い、レジストリの情報の質の向上に資すると考えられる研究も行った。
本研究で構築した先天異常症候群のレジストリシステムは、患者自らWeb上のサイトにアクセスし、自らの意思で情報の登録を行う。このことから、Webにアクセスする環境にあれば、どこの施設・病院の患者でも自然歴や発達などを登録することができ、希望があれば同一疾患の患者同士の交流も可能である。患者・患者家族が本システムを利用し、先天異常症候群の真の自然歴を明らかにし、必要があれば、recontractすることにより、我々は研究に必要な情報を集めることができる。また、患者が求める疾患の情報は医療者とは異なることがあるので、患者の求める情報もrecontact可能な当システムで調査することができる。
来年度には当研究班が担当する先天異常症候群に拡大し、研究班が求める情報だけでなく、患者の求める情報をrecontactしながら質の高いレジストリシステムへと発展させていく。

公開日・更新日

公開日
2025-05-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2025-05-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202310081Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
36,900,000円
(2)補助金確定額
36,354,000円
差引額 [(1)-(2)]
546,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 5,636,045円
人件費・謝金 3,946,401円
旅費 1,846,743円
その他 16,424,974円
間接経費 8,500,000円
合計 36,354,163円

備考

備考
厚生労働省の規定により支出額が千円未満切り捨てになるため補助金確定額と差異が発生しています。

公開日・更新日

公開日
2024-11-05
更新日
-