特発性心筋症の診断・ゲノム情報利活用に関する調査研究

文献情報

文献番号
202310079A
報告書区分
総括
研究課題名
特発性心筋症の診断・ゲノム情報利活用に関する調査研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23FC1050
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
坂田 泰史(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 安斉 俊久(北海道大学大学院医学研究院 循環器内科学)
  • 安田 聡(東北大学 大学院医学系研究科 循環器内科学)
  • 渡辺 昌文(山形大学 大学院医学研究科)
  • 竹石 恭知(公立大学法人福島県立医科大学 附属病院)
  • 小室 一成(国立大学法人東京大学 医学部附属病院)
  • 吉村 道博(東京慈恵会医科大学 医学部 循環器内科)
  • 猪又 孝元(新潟大学 大学院医歯学総合研究科 循環器内科学)
  • 絹川 弘一郎(国立大学法人富山大学 学術研究部医学系内科学(第二)講座)
  • 藤野 陽(金沢大学 医薬保健研究域 保健学系 )
  • 桑原 宏一郎(信州大学 学術研究院医学系)
  • 室原 豊明(名古屋大学 大学院 医学系研究科)
  • 泉 知里(国立循環器病研究センター 心不全・移植部門)
  • 彦惣 俊吾(奈良県立医科大学 循環器内科学)
  • 中野 由紀子(広島大学 医学系研究科循環器内科学)
  • 北岡 裕章(国立大学法人 高知大学 教育研究部医療学系臨床医学部門 循環器内科学)
  • 筒井 裕之(学校法人国際医療福祉大学 医学部)
  • 神谷 千津子(国立研究開発法人国立循環器病研究センター 産婦人科)
  • 小垣 滋豊(大阪急性期・総合医療センター 小児科・新生児科)
  • 宮川 繁(国立大学法人大阪大学 医学系研究科)
  • 朝野 仁裕(大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 大谷 朋仁(大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 肥後 修一朗(大阪大学大学院医学系研究科循環器内科学)
  • 木岡 秀隆(大阪大学医学系研究科)
  • 安井 治代(大阪大学 共創機構 産学官連携オフィス (兼)大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
16,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
特発性心筋症は、診断においては明確に分類できない病型が存在し、小児と成人での一部異なる定義が存在しているなど様々な課題が存在する。また、多岐にわたる除外診断プロセスのため、どの程度ガイドラインに準拠した診断が臨床現場で行われているかも不明である。これらの問題は、治療可能な二次性心筋症の不十分な分別や標準化されない診療につながり、施設間での診療の質の差を生じうるのみならず、特異的な治療法の開発や確立や、構築に標準化が求められる小児から成人までの一貫した心筋症のNational registry構築の妨げの一因となっているものと考えられる。また、最新の国内外の診療ガイドラインに一部ゲノム情報の利用が記載されるようになり、心筋症診療におけるゲノム情報の位置付けが上昇しているが、ゲノム情報の診療への利活用については確立されていない。本研究ではこれらの問題解決に向けて、わが国における心筋症診療およびゲノム情報の利活用の実態を評価、把握し、ゲノム情報利活用の体制を整備し、関連学会およびAMED研究班と連携して診断基準や診療ガイドラインを改訂・確立させ、研究成果を広く診療へ普及させることで、心筋症の医療水準と患者のQOLの向上に貢献することを目的とする。
研究方法
心筋症診療および研究における我が国の課題点の抽出・整理のため、日本循環器学会に所属する医師会員を対象にWebでの全国アンケート調査を行った。また、心筋症診療におけるゲノム情報の臨床利活用に関しては、前述の全国アンケート調査で現況を調査・評価し、拠点施設での臨床利用体制の整備を行った。また、心筋症を対象に実施中の国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の各研究班と連携し研究を推進した。さらに、各分担研究者の施設で心筋症の実態解明のための個別研究を多面的に実施した。
結果と考察
全国アンケート調査は、日本循環器学会所属医師会員25,258名にアンケート依頼し、1,103人により有効な回答が得られた。回答者の直近1年間の臨床個人調査票の記載(概算)は、拡張型心筋症3,693例、肥大型心筋症1,480例であり、臨床個人調査票登録数の約20〜30%に相当するものであった。特発性心筋症の診断数ついては、アンケート調査の結果からは、拡張型心筋症と肥大型心筋症の1年間の新規の診断数自体には大きな差はなく、両疾患での指定難病認定者数の差とは乖離していた。このことは肥大型心筋症では拡張型心筋症に比して難病と認定されていない軽症の例が多い可能性やそれぞれの疾患での二次性心筋症の診断率が違う可能性などが考えられた。診断プロセスに関しては、二次性心筋症の診断につながりうる、MRI、Gaシンチグラフィー/FDG-PET、心筋生検などの検査が、どの程度施行されているかが明らかとなり、心筋生検は約半数程度で、Gaシンチグラフィー/FDG-PETなどは約2割り程度で、二次性心筋症の診断に向けた検査の施行率は必ずしも高くないことが明らかとなった。また、我が国の不整脈源性右室心筋症の診断数の実数は不明であったが、拘束型心筋症と同じぐらいの症例数は存在し、肥大型心筋症の10分の1ぐらいであることが示された。特発性心筋症の遺伝学的検査については、保険収載された肥大型心筋症では認知度は半数に至らず、今後さらなる周知が必要と考えられた。また、肥大型心筋症でも検査ができる環境は十分に整備されていないことや、遺伝カウンセリングが実施できる施設も多くなく、遺伝学的検査自体のシステムと合わせて連携体制の普及など体制構築の必要性が明らかとなった。AMED研究班との連携としては、学術集会での発表を通し、研究班間での今後の研究推進のための協議・情報共有を行った。また、個別研究として、各分担研究者の施設にて心筋症の実態、病態解明に向けて、特発性心筋症および鑑別すべき二次性心筋症の画像や生体試料などを用いた研究や、予後関連因子、遺伝子解析に関する研究などを推進した。これらの知見をふまえて、診断基準の標準化や見直し、レジストリの構築、ゲノム診療体制の整備・構築、心筋症の病態および予後因子の解明へ向けた取り組みを引き続き実施していく。
結論
特発性心筋症の診断における課題とその現況および指定難病となっていない特発性心筋症の主要病型の1つである不整脈源性右室心筋症の診療の状況が明らかとなった。また、特発性心筋症におけるゲノム情報の利活用に向けた各施設の現況や循環器内科医の認識が明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2025-06-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2025-06-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202310079Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
21,450,000円
(2)補助金確定額
21,127,000円
差引額 [(1)-(2)]
323,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 5,728,418円
人件費・謝金 824,749円
旅費 3,102,799円
その他 6,521,563円
間接経費 4,950,000円
合計 21,127,529円

備考

備考
実際の残額は322,471円であったが、返還の際には千円単位にそろえる必要があるため、323,000円となる。そのため529円の差額が発生した。

公開日・更新日

公開日
2024-09-27
更新日
-