文献情報
文献番号
202310068A
報告書区分
総括
研究課題名
稀少難治性皮膚疾患に関する調査研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23FC1039
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
秋山 真志(国立大学法人東海国立大学機構名古屋大学 大学院医学系研究科皮膚科学分野)
研究分担者(所属機関)
- 青山 裕美(川崎医科大学 医学部)
- 池田 志斈(順天堂大学 医学部)
- 石河 晃(東邦大学 医学部)
- 氏家 英之(北海道大学 大学院医学研究院)
- 黒沢 美智子(順天堂大学医学部)
- 下村 裕(山口大学 大学院医学系研究科)
- 鈴木 民夫(山形大学 医学部)
- 高橋 勇人(慶應義塾大学 医学部)
- 田中 暁生(広島大学大学院 医系科学研究科 皮膚科学)
- 玉井 克人(大阪大学大学院 医学系研究科)
- 照井 正(日本大学医学部)
- 室田 浩之(国立大学法人 長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
- 山上 淳(慶應義塾大学医学部 皮膚科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
28,000,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者変更
玉井克人(大阪大学 教授)、令和5年9月末で辞退。
尚、交替となる研究分担者なし。
研究報告書(概要版)
研究目的
原因不明で治療法が確立していない稀少難治性皮膚疾患を対象として、全国疫学調査、QOL調査等による科学的根拠の集積・分析を推進するとともに、医療情報提供と社会啓発活動を通して臨床現場における医療の質の向上を図り、国民への研究成果の還元を促進することを目的とする。
研究方法
1.各疾患の研究
[天疱瘡]患者末梢血からデスモグレイン特異的B細胞を単一細胞として分離する方法を確立し、B細胞受容体のレパトアを調べるとともに、RNAシーケンス解析による包括的な遺伝子解析を試みた。
[類天疱瘡(後天性表皮水疱症を含む)]全国12施設を対象とした免疫チェックポイント阻害薬関連類天疱瘡全国実態調査の予備調査を実施した。
[膿疱性乾癬]患者の遺伝子解析と、日本と海外で使用されている重症度指標の中の、どの指標が患者の重症度を最も表すか調査を行った。
[表皮水疱症]患者参画型による疾患特異的なQOL質問票開発研究と、汎発重症型(Dowling-Meara型)5症例の検討を行った。
[先天性魚鱗癬]患者の重症度、疾患がQOLに与える影響、治療選択の実態とその効果を明らかにすることを目的として疫学調査を実施した。
[弾性線維性仮性黄色腫]解析したデータをレジストリとして構築し、高解像度末梢骨用定量的CT(HR-pQCT)の評価を行った。
[眼皮膚白皮症]啓発を行い、国内外の遺伝性色素異常症症例の遺伝子診断結果をレジストリに追加した。
[遺伝性血管性浮腫]患者負担と治療実態を評価するためにRudy Japanを用いて発作・受診動態およびQOLに関する情報を収集した。海外のガイドラインを翻訳し本邦での診療の均てん化を目指した。
2.共通研究課題
[症例登録と疫学解析]難病法施行前の臨床疫学像と難病法施行後の臨床疫学像の変化や当研究班で実施された全国疫学調査結果との比較等を行うこと、ガイドライン改訂時の基礎資料にすることを目的に、2回目の指定難病データの利用申請を行った。
[天疱瘡]患者末梢血からデスモグレイン特異的B細胞を単一細胞として分離する方法を確立し、B細胞受容体のレパトアを調べるとともに、RNAシーケンス解析による包括的な遺伝子解析を試みた。
[類天疱瘡(後天性表皮水疱症を含む)]全国12施設を対象とした免疫チェックポイント阻害薬関連類天疱瘡全国実態調査の予備調査を実施した。
[膿疱性乾癬]患者の遺伝子解析と、日本と海外で使用されている重症度指標の中の、どの指標が患者の重症度を最も表すか調査を行った。
[表皮水疱症]患者参画型による疾患特異的なQOL質問票開発研究と、汎発重症型(Dowling-Meara型)5症例の検討を行った。
[先天性魚鱗癬]患者の重症度、疾患がQOLに与える影響、治療選択の実態とその効果を明らかにすることを目的として疫学調査を実施した。
[弾性線維性仮性黄色腫]解析したデータをレジストリとして構築し、高解像度末梢骨用定量的CT(HR-pQCT)の評価を行った。
[眼皮膚白皮症]啓発を行い、国内外の遺伝性色素異常症症例の遺伝子診断結果をレジストリに追加した。
[遺伝性血管性浮腫]患者負担と治療実態を評価するためにRudy Japanを用いて発作・受診動態およびQOLに関する情報を収集した。海外のガイドラインを翻訳し本邦での診療の均てん化を目指した。
2.共通研究課題
[症例登録と疫学解析]難病法施行前の臨床疫学像と難病法施行後の臨床疫学像の変化や当研究班で実施された全国疫学調査結果との比較等を行うこと、ガイドライン改訂時の基礎資料にすることを目的に、2回目の指定難病データの利用申請を行った。
結果と考察
1.各疾患の研究
[天疱瘡]非特異的なB細胞との比較により、炎症、B細胞の分化、T細胞との相互作用などに関連するデスモグレイン特異的B細胞における発現変動遺伝子が抽出された。
[類天疱瘡(後天性表皮水疱症を含む)] 9施設23例の検討を行い、本邦での患者の特徴や治療法の傾向を把握することができた。現在、全国調査を開始している。
[膿疱性乾癬]2名の患者にMPO遺伝子のミスセンスバリアント(p.R604Cとp.R511C)がヘテロ接合型で同定され、p.R604Cを有するMPO蛋白は部分的な機能喪失を示した一方、p.R511Cを有するMPO蛋白は完全に機能を喪失していた。重症度の指標については、フレアアップの時期、退院後の症状が安定している時期で、特定の指標と重症度と相関性を見出した。
[表皮水疱症]患者参画型研究では検討会を五回開催し、討論結果に基づいて、現在質問項目作成を進めている。症例検討では、蛍光抗体法所見、電子顕微鏡検査を併用し、遺伝子検査の結果と形態学的異常に矛盾がないか検証することが、正確な診断確定に重要であることを確かめた。
[先天性魚鱗癬]我が国の診療実態を明らかにすることができた。診療に携わる全ての医師にとって有意義な内容であり、診療ガイドライン策定のための礎となる重要なデータである。
[弾性線維性仮性黄色腫]HR-pQCTについては現在4症例目を解析中である。トランスクリプトーム解析では3例のRNAseqを終了し、新たに4症例を解析予定としている。
[眼皮膚白皮症]国内施設からの遺伝子診断の依頼を受け計26例の症例情報を集積しレジストリの拡充を行った。
[遺伝性血管性浮腫]本邦で発作予防薬が使用できる前にあたる2021年3月までの発作出現の状況と患者QOLデータの解析結果を英文誌に報告した。2017年改訂版と2021年改訂版の両ガイドラインの和訳を行いアレルギー誌に掲載した。
2.共通研究課題
[症例登録と疫学解析]主に天疱瘡の分析を行った。受給者数は2014年に約6000人であったが、2015年の難病法施行に伴い、認定基準に重症度が加わり、受給者数の減少が予想されていた。2017年末までは移行措置が取られていたため2016年度の受給者数は5693例と大きな変化はなく、移行措置が終了した2017年度に受給者数3347例と大きく減少した。
[天疱瘡]非特異的なB細胞との比較により、炎症、B細胞の分化、T細胞との相互作用などに関連するデスモグレイン特異的B細胞における発現変動遺伝子が抽出された。
[類天疱瘡(後天性表皮水疱症を含む)] 9施設23例の検討を行い、本邦での患者の特徴や治療法の傾向を把握することができた。現在、全国調査を開始している。
[膿疱性乾癬]2名の患者にMPO遺伝子のミスセンスバリアント(p.R604Cとp.R511C)がヘテロ接合型で同定され、p.R604Cを有するMPO蛋白は部分的な機能喪失を示した一方、p.R511Cを有するMPO蛋白は完全に機能を喪失していた。重症度の指標については、フレアアップの時期、退院後の症状が安定している時期で、特定の指標と重症度と相関性を見出した。
[表皮水疱症]患者参画型研究では検討会を五回開催し、討論結果に基づいて、現在質問項目作成を進めている。症例検討では、蛍光抗体法所見、電子顕微鏡検査を併用し、遺伝子検査の結果と形態学的異常に矛盾がないか検証することが、正確な診断確定に重要であることを確かめた。
[先天性魚鱗癬]我が国の診療実態を明らかにすることができた。診療に携わる全ての医師にとって有意義な内容であり、診療ガイドライン策定のための礎となる重要なデータである。
[弾性線維性仮性黄色腫]HR-pQCTについては現在4症例目を解析中である。トランスクリプトーム解析では3例のRNAseqを終了し、新たに4症例を解析予定としている。
[眼皮膚白皮症]国内施設からの遺伝子診断の依頼を受け計26例の症例情報を集積しレジストリの拡充を行った。
[遺伝性血管性浮腫]本邦で発作予防薬が使用できる前にあたる2021年3月までの発作出現の状況と患者QOLデータの解析結果を英文誌に報告した。2017年改訂版と2021年改訂版の両ガイドラインの和訳を行いアレルギー誌に掲載した。
2.共通研究課題
[症例登録と疫学解析]主に天疱瘡の分析を行った。受給者数は2014年に約6000人であったが、2015年の難病法施行に伴い、認定基準に重症度が加わり、受給者数の減少が予想されていた。2017年末までは移行措置が取られていたため2016年度の受給者数は5693例と大きな変化はなく、移行措置が終了した2017年度に受給者数3347例と大きく減少した。
結論
3年計画の1年目に当たる本年度は各疾患ならびに共通研究課題でよいスタートを切ることができた。来年度も、各疾患ならびに共通研究課題で推し進めている、全国調査等による疫学動向の統合的な分析、患者レジストリの拡充、関連学会や患者会のサポートを通じた継続的な医療情報提供と啓発をまとめ上げ、国民に有益となる新規治療の準備に繋がるような稀少難治性皮膚疾患対策に貢献できるような研究を継続する。
公開日・更新日
公開日
2025-07-03
更新日
-