神経皮膚症候群および色素性乾皮症・ポルフィリン症の学際的診療体制に基づく医療最適化と患者QOL向上のための研究

文献情報

文献番号
202310066A
報告書区分
総括
研究課題名
神経皮膚症候群および色素性乾皮症・ポルフィリン症の学際的診療体制に基づく医療最適化と患者QOL向上のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23FC1037
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
朝比奈 昭彦(東京慈恵会医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 吉田 雄一(鳥取大学医学部感覚運動医学講座皮膚病態学分野)
  • 今福 信一(福岡大学 医学部)
  • 久保 亮治(国立大学法人神戸大学 大学院医学研究科)
  • 西田 佳弘(名古屋大学 医学部附属病院 リハビリテーション科)
  • 舟崎 裕記(東京慈恵会医科大学 整形外科)
  • 緒方 大(国立がん研究センター中央病院 皮膚腫瘍科)
  • 原 政人(愛知医科大学 脳神経外科)
  • 松尾 宗明(佐賀大学   医学部)
  • 藤井 正純(福島県立医科大学 医学部)
  • 今泉 光雅(福島県立医科大学 医学部耳鼻咽喉科学講座)
  • 水口 雅(東京大学  大学院医学系研究科)
  • 金田 眞理(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 波多野 孝史(東京慈恵会医科大学 医学部 泌尿器科)
  • 錦織 千佳子(国立大学法人神戸大学 大学院医学研究科)
  • 森脇 真一(大阪医科薬科大学 医学部)
  • 宮田 理英(東京北医療センター 小児科)
  • 上田 健博(神戸大学医学部附属病院 神経内科)
  • 清水 忠道(富山大学医学部皮膚科学)
  • 諏佐 真治(山形大学医学部内科学第3講座)
  • 須賀 万智(東京慈恵会医科大学 医学部 環境保健医学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
21,500,000円
研究者交替、所属機関変更
2023年4月29日研究分担者中野創先生急逝のため、2023年6月13日付で清水忠道先生が後任として着任された。

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の対象は、主領域の皮膚・結合織疾患領域から神経線維腫症1型(NF1)および2型(NF2)と色素性乾皮症(XP)、他領域から結節性硬化症(TSC)とポルフィリン症である。各疾患は一部を除き遺伝性で、幼小児期から皮膚と神経を含む複数臓器に多発性かつ経時的に病変が進行する。NFとTSCは神経皮膚症候群に属し、XP、ポルフィリン症も皮膚症状が診断契機となる。病像が複雑で診断と治療が難しく、QOLを障害し生命予後に関わる。NF2以外は小児慢性特定疾病で、小児期から各診療科が連携して切れ目なく診療する必要がある。患者レジストリから本邦における実態を把握して医師間の啓発活動を進め、診療・治療ガイドライン(GL)や重症度分類をアップデートすること、既存ならびに新規の薬剤の適正使用を通じた診療水準向上と均質化を進めることが、患者QOL向上と政策医療の実現に繋がる。
研究方法
対象となる5疾患で、各領域から専門家が研究班を組成して研究活動を行った。その内容は多岐にわたり、患者レジストリや疫学調査、施設登録に関するもの、診療や治療ガイドライン(GL)の策定や改訂に関するもの、特定の臨床症状の解析や、患者予後あるいはQOLをみるもの、患者診療体制の構築に関するもの、治療薬や手技の有効性・安全性・予後や治療指針に関わるもの、医師や患者・家族の啓発や活動支援に繋がるもの、遺伝子解析や遺伝子診断に関わるもの等がある。
結果と考察
NF1:患者レジストリを継続するとともに、患者重症度やQOL解析が各方面から施行された。本邦の診断基準は海外に準拠させることが望ましく、重症度分類もstage 3と4を統合するべきであるため、今後のNF1診療GLや臨床調査個人票の改訂に繋げる。NF1患者に発生する腫瘍として重要な叢状神経線維腫(PN)・悪性末梢神経鞘腫瘍については新たな診療GLが完成し、セルメチニブの適切使用に繋がると考えられる。小児のPN合併の実態も全国疫学調査で明らかとなった。また、海外に準拠した包括的診療体制の構築と施設認定が始まった。最新手技を用いた遺伝子解析も進められ、遺伝子型と表現型の関連について症例蓄積が期待される。モザイク例における遺伝子解析は、次世代伝搬リスクを推定する手法として意義深い。NF2:両側の聴神経腫瘍を生じる代表的疾患であり、聴覚維持・再建に関する治療指針作成の研究ワーキンググループが立ち上げられ、積極的な人工聴覚器導入が有効であることが示された。今後はレジストリ研究を経て治療指針に繋がると期待される。また、AMED班と共同する医師主導治験データを元にベバシズマブの聴覚維持・改善に関する効果が明らかとなり、治療指針への盛り込みが想定される。TSC:国際的な診断基準や本邦の実情に沿うTSCの診断基準及び治療GL―2023改訂版が完成し公開予定である。さらにTSCに伴う腎血管筋脂肪腫診療GL 2023年版も作成された。このほかシロリムスによる治療効果や同ゲル製剤の皮膚症状への効果などの解析が行われ、新規薬剤による治療の知見が集積されつつある。XP:患者レジストリを継続するとともに、診断センターを組成して全国からの診断依頼に対応し、診療支援を行っている。新規の疑い症例の遺伝子診断が複数行われ、XPの認知を目的に若手医師や一般市民に対する啓発活動も行われた。XP診療GLの改訂も進められている。さらに重症型XP-Aにおけるライフイベントが後方視的に調査され、患者家族が主体となるアドバンスケアプランニングの意思決定支援の必要性と課題が示された。またXP-A患者で酸化ストレスによる心合併症も起こりうることや心臓の定期健診の必要性が新たに示唆された。ポルフィリン症:全国規模の疫学的二次調査による施設登録が行われ、文献調査から本邦の赤芽球性プロトポルフィリン症患者の特徴も示された。新規のポルフィリン症診療GLの作成が進められており、診断や疾患に対する啓発および診療体制の向上が期待される。急性肝性ポルフィリン症については、独自技術に基づく原因遺伝子解析が行われた。
結論
診療GLの整備やアップデート、重症度評価や患者の実態調査、患者レジストリの推進、学際的な診療体制の整備、医師や患者への疾患の啓発活動、新しい手法を用いた遺伝子解析や診断、治療方針の評価や新しい治療薬の開発など、これまでに概ね望ましい成果が得られている。今後も、患者QOLの向上のために多くの領域にわたる複数の専門家が研究を続け、複数の学会やAMED班とも密な連携をとりつつ、これらの疾患の診療水準向上と均質化を進めることで政策医療に貢献していきたい。

公開日・更新日

公開日
2025-07-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2025-07-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202310066Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
27,950,000円
(2)補助金確定額
26,861,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,089,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 11,380,652円
人件費・謝金 561,209円
旅費 2,727,935円
その他 5,742,070円
間接経費 6,450,000円
合計 26,861,866円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2024-10-03
更新日
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