B型肝炎の母子感染および水平感染の把握とワクチン戦略の再構築に関する研究

文献情報

文献番号
200933037A
報告書区分
総括
研究課題名
B型肝炎の母子感染および水平感染の把握とワクチン戦略の再構築に関する研究
課題番号
H21-肝炎・一般-013
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
森島 恒雄(岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 脇田 隆字(国立感染症研究所)
  • 森内 浩幸(長崎大学大学院)
  • 工藤 豊一郎(筑波大学臨床医学系)
  • 茶山 一彰(広島大学大学院)
  • 泉 並木(武蔵野赤十字病院)
  • 木村 宏(名古屋大学大学院)
  • 古谷野 伸(旭川医科大学)
  • 田尻 仁(大阪府急性期・総合医療センター)
  • 田中 英夫(愛知県がんセンター研究所)
  • 藤澤 知雄(済生会横浜市東部病院)
  • 石井 勉(国立病院機構 福島病院)
  • 乾 あやの(済生会横浜市東部病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
24,360,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
B型肝炎ウイルス(HBV)の母子感染予防としてHBIGとHBワクチンによる母子感染防止事業が1986年以降開始された。近年予防処置不成功例が報告される。また、欧米から水平感染を起こすgenotype A が侵入し、性感染症(STD)などとして拡大傾向が著明である。本邦のHBV感染の現状を把握し、諸外国と比較しつつ、universal vaccinationの必要性などについて検討することを目的とした。
研究方法
(1)HBV母子感染および水平感染の全国アンケート調査を開始した。(2)現行予防処置による不成功例を調査した。(3)ベトナムでのuniversal vaccinationによる母子感染予防効果調査を設定した。(4)キャリアー児の尿・唾液・涙中のHBVDNAをPCR法で調べた。(5)健康新生児へのHBVワクチン接種を行った。(6)一般健常者におけるHBV新規感染者を推定した。(7)成人におけるgenotype Aの侵淫度、特に急性肝炎における頻度を調査した。
結果と考察
(1)(2)母子感染全国調査は現在進行中。大阪府では1986年以降もキャリアーが生じ、多くは胎内感染と推定されたが、不適切な予防処置も存在した。父子感染の割合は1986年以前に比べ約3倍に増加した。また、genotype Aの母子感染も起きていた。(3)ベトナムで調査体制ができた。(4)キャリアー児の尿・唾液・涙からHBVDNAが検出された。(5) genotype Aによる成人の急性肝炎が急増し、経過が遷延するか、重症であった。感染経路としてSTDが推測された。(6)健康新生児への予防接種では良好な抗体上昇を認めた。(7)一般健常者におけるHBV水平感染率調査では、2005年水平(不顕性)感染者数は8409人と推定された。
結論
現行のHBV母子感染予防処置は大きな役割を果たしたが、近年この予防処置不完全例が増加し、父子水平感染の割合も増加している。成人では急性肝炎の中でgenotype Aの頻度が急増し、STDとしての感染拡大が著明であった。この型の母子感染も起きていた。一方、universal vaccinationを想定した健康新生児へのワクチン接種では良好な抗体上昇を認めた。感染疫学調査から我が国では年間約8400人と多数の(不顕性)感染者数が推定され、HBV感染拡大への対策は緊急の課題と思われた。

公開日・更新日

公開日
2011-06-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)