経口感染する肝炎ウイルス(A型、E型)の感染防止、遺伝的多様性、および治療に関する研究

文献情報

文献番号
200933035A
報告書区分
総括
研究課題名
経口感染する肝炎ウイルス(A型、E型)の感染防止、遺伝的多様性、および治療に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H21-肝炎・一般-011
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
岡本 宏明(自治医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 矢野 公士(国立国際医療センター国府台病院 肝炎・免疫研究センター)
  • 新井 雅裕(東芝病院)
  • 鈴木 一幸(岩手医科大学)
  • 横須賀 收(千葉大学大学院医学研究院)
  • 日野 学(日本赤十字社血液事業本部)
  • 姜 貞憲(手稲渓仁会病院病院 消化器病センター)
  • 桶谷 眞(鹿児島大学病院 消化器センター)
  • 李 天成(国立感染症研究所 ウイルス第2部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
28,105,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
経口感染する肝炎ウイルス(A型、E型)の感染経路の全解明、及び診断・治療・予防法の確立。

研究方法
発生動向と重症化リスク因子の調査、感染実態の調査、HAV並びにHEVのウイルス株塩基配列の蒐集と解析、HEV宿主動物調査、食品媒介感染の可能性の調査、抗ウイルス剤、ワクチン開発のための予備的検討などによる。
結果と考察
A型肝炎:1) 劇症肝炎を含め、発生数が明らかに減少しているが、高齢発症と合併症の発現により予後不良の劇症肝炎症例が増えている、2) HAV IRES依存性翻訳抑制にAmantadineが有効である。
E型肝炎:1) Non-ABC急性肝炎の中でのE型肝炎の占める割合が増加傾向にある、2)北海道で4型HEV株による孤発性小流行が見られ、献血者でも4型HEV感染者が例年よりも多く、重症化傾向の強いHEV株の感染拡大が懸念される、3)HEV感染状況の全国調査の結果、全体の5.3%がIgGクラスHEV抗体を保有しており、男性が女性に比べて有意に高い陽性率であり、地域差も顕著で、北海道での陽性率が最も高く、中部以北は近畿以南に比べて有意に高率であること、加えて、3人からHEV RNAが検出され、東北や関東でも北海道に匹敵する頻度で不顕性HEV感染が起こっている、4)東京でも北海道とほぼ同等の頻度で市販豚レバーからHEV RNAが検出された、5)静岡県内の野生のイノシシから新しい遺伝子型(5型?)に分類される可能性のある新種HEV株が分離された、6)糞便中HEVのみならず、患者血清中のHEVもPLC/PRF/5細胞およびA549細胞で効率よく増殖しうることが明らかになった、7) 培養細胞由来の不活化HEVが中和抗体を誘導しうる、などの成果が得られた。
初年度ではあるが、成果に富む研究・調査を推進できたと考えられる。加えて、北海道札幌地区でのE型肝炎流行、および本概要作成時点での福岡県、広島県を中心とする全国的なA型肝炎の流行の兆候(平成22年4月29日各紙報道)については引き続き介入の是非を含め注意深く観察を行う必要がある。
結論
A型およびE型肝炎ともに、感染経路、感染防止策、重症・劇症化機序等についての継続的な検討が必要である。特に、A型肝炎に関しては、抗ウイルス剤の開発、ワクチン接種対象の検討など、E型肝炎に関しては、さらなる感染経路の解明、不活化ワクチン開発を目指した研究などが重要である。

公開日・更新日

公開日
2011-06-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)