B型肝炎ジェノタイプA型感染の慢性化など本邦における実態とその予防に関する研究

文献情報

文献番号
200933027A
報告書区分
総括
研究課題名
B型肝炎ジェノタイプA型感染の慢性化など本邦における実態とその予防に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H21-肝炎・一般-003
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
溝上 雅史(国立国際医療センター国府台病院 肝炎・免疫研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 田中 靖人(名古屋市立大学大学院 医学研究科)
  • 正木 尚彦(国立国際医療センター 戸山病院)
  • 荒瀬 康司(虎ノ門病院健康管理センター)
  • 今関 文夫(千葉大学大学院 医学研究科)
  • 四柳 宏(東京大学 医学部)
  • 黒崎 雅之(武蔵野赤十字病院)
  • 梅村 武司(信州大学 医学部)
  • 三田 英治(大阪医療センター)
  • 山本 和秀(岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科)
  • 八橋 弘(長崎医療センター)
  • 内田 茂治(日本赤十字社 血液事業部)
  • 田沼 順子(国立国際医療センター戸山病院)
  • 多田 有希(国立感染症研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
41,340,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は最近本邦で増加しているB型肝炎ウイルス(HBV) Genotype AによるB型急性肝炎の実態を把握し、その慢性化率および慢性化機序を解析することにより、有効な慢性化阻止の方策を確立し医療に貢献することを目標とする。今回の研究の目的は(1)本邦におけるB型急性肝炎の実数把握(2)HBV genotype Aの地域差および感染ルートの解析(3) HBV genotype AとHIVとの共感染の解析(4)Genotype Aの慢性化機序および実際の慢性化率の解析(5)核酸アナログ製剤は慢性化を阻止するかどうか、(6)慢性化に関わる宿主側SNPsの解析 である
研究方法
1)後ろ向き研究による過去のB型急性肝炎の発生状況調査
2)前向き研究による慢性化率、核酸アナログの有効性調査
3)感染モデルによる慢性化機序の解明
4)慢性化に関与する宿主側SNPsの探索
結果と考察
感染症法に基づく届出状況と当班での後ろ向き調査の結果を比較すると、大部分のB型急性肝炎症例が感染症法に基づいて届出がなされていないということが判明した。感染症の実態を把握するという点から発生数調査は重要であると思われる。
 B型急性肝炎の全国での後ろ向き調査に関して、現在のところ慢性化を8.6%に認め、3例すべてがgenotype Aであった。また、遷延化(HBsAg消失まで3カ月以上経過)率に関してもgenotype Aは他のgenotypeと比較して高率であり、genotype Aが慢性化、遷延化する傾向が認められた。

結論
B型急性肝炎において、genotype Aは首都圏ではすでに高頻度に認め、地方部にも拡がりつつある現状が明らかとなった。Genotype Aは慢性化、遷延化する傾向にあり、ウイルス側の特徴が関与している可能性が示唆された。Genotype Aは性行為感染やMSMによる感染が多く、HIVと感染経路が類似しており、共感染率が高い。HIVとHBVの共感染の際には両者の耐性ウイルスを誘導しないように治療に対しては注意が必要と考えられた。 
 たとえGenotype Aであっても慢性化する症例は一部であり、慢性化に宿主側因子が関与する可能性が高く、今後の検討が必要である。また、核酸アナログにより慢性化が阻止できるかどうかの検討も必要であり、今後はいかに慢性化を阻止し、肝硬変や肝癌への移行を阻止するかを検討する必要があると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2011-06-06
更新日
-