文献情報
文献番号
202310035A
報告書区分
総括
研究課題名
第II相医師主導治験の実施に向けた特発性全身性毛細血管漏出症候群(Clarkson 病)のガイドライン作成と疾患レジストリ構築
研究課題名(英字)
-
課題番号
23FC1006
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
兼松 孝好(名古屋市立大学 大学院医学研究科地域医療学分野)
研究分担者(所属機関)
- 奥野 友介(名古屋市立大学 大学院医学研究科)
- 濱田 太立(名古屋市立大学 大学院医学研究科ウイルス学分野)
- 赤津 裕康(名古屋市立大学 大学院医学研究科)
- 川出 義浩(名古屋市立大学大学院医学研究科)
- 大谷 隆浩(名古屋市立大学 大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
3,990,000円
研究者交替、所属機関変更
該当なし。
研究報告書(概要版)
研究目的
特発性全身性毛細血管漏出症候群(Clarkson病)は、感染等を契機に(時に識別可能な契機なく)全身の発作的な毛細血管漏出に伴う急激な低血圧、血液濃縮等をきたし、時に致死的な超稀少疾患である(Mayo Clin Proc. 2010;85:905)。漏出発作時には、循環血症量減少性ショックを伴い大量補液が必要となるが、わずか数日間で10Kg以上に及ぶ体重増加と重症浮腫を来すことで、気道狭窄や圧迫症候群などの致死性発作を起こすリスクを有するにもかかわらず、血管内皮細胞のサイトカインへの過剰反応が一因と推定されるものの、病態や発症原因には不明点が多く、治療法も確立されていない。また、漏出発作が停止した後には、過剰な水分が急激に血管内へ再吸収されて、循環動態に負荷がかかるが、その際の心・血管系リスクについても集計されて精査されていない。本疾患は、ウイルス感染などが致命的な発作を誘発し得るため、その予防による患者の生活の質は著しく障害されやすい。疾患の重篤性は明らかであるにもかかわらず、その希少性から、ごく少数の症例報告に留まっており、国内の発症者数の把握もできていない。また、集学的研究が困難であるため、本邦はもちろん、国際的にも本疾患の診療ガイドラインは定められておらず、経験的治療に頼らざるを得ない状況が続いている。そのため、本研究提案では、本邦における本疾患のレジストリ構築と診療ガイドライン作成を主な目的として全国調査を開始するとともに、発症契機や機序について研究開発を行い、治療候補薬の治験開始に向けた体制作りを可能とすることを目的としている。
研究方法
国内症例数の把握を把握するため、全国医療機関のうち、300床以上の病床を有する医療機関に対し、郵送およびWebアンケートの形で、3か月間にわたる1次アンケート調査を行った。2000年以降の症例を目安としたが、それ以前の症例であっても、本疾患の可能性があると考えられる症例について回答を求めた。その後、第2年度(R6)中に詳細な集計を可能とする2次アンケート調査のために、経験症例を有する医療機関とおの多施設共同研究の形で研究倫理審査を準備した。
また、発症に起因する可能性のあるタンパク質等を同定するため、予備的検査として自験例2症例の保存血清を用い、発作期、非発作期それぞれについて、網羅的タンパク質アレイ解析を実施した。
また、発症に起因する可能性のあるタンパク質等を同定するため、予備的検査として自験例2症例の保存血清を用い、発作期、非発作期それぞれについて、網羅的タンパク質アレイ解析を実施した。
結果と考察
第1年度(R5)に全国施設への1次アンケート調査を行い、1312医療機関中、351施設(26.8%)からの回答を得た。本疾患に該当する可能性が高い症例は、計11施設で確認でき、計16例を集計した。(アンケート終了後に、さらに2施設からの情報提供が得られ、2症例を追加登録したため、現在把握できている国内例は、計18例(13施設)に及んでいる。)1次調査の回答には、本疾患を担当する診療科が特定できず、各医療機関内での確認が非常に困難であるとの報告も多く認められた。集計結果からは、全国で多くても100例程度の症例に留まることが予測される結果となったが、レジストリが構築され、診療ガイドラインが作成できた後には、効率良く症例把握できる可能性が示唆された。疾患の特徴を示して集計したものの、疑診例が含まれている可能性もあることから、さらに詳細な2次調査が必要と考えられるため、現在、同意が得られた施設との共同研究を準備し、情報共有が可能になるように準備を始めている。
さらに、予備的検査として自験例2症例の保存血清を用い、発作期、非発作期それぞれについて、網羅的タンパク質アレイ解析を実施した。現在、解析中であるが複数の候補が得られており、第2年度(R6)中にも、さらに他の症例でも検討を重ね、より関与の強い候補については機能解析を追加する予定である。
さらに、予備的検査として自験例2症例の保存血清を用い、発作期、非発作期それぞれについて、網羅的タンパク質アレイ解析を実施した。現在、解析中であるが複数の候補が得られており、第2年度(R6)中にも、さらに他の症例でも検討を重ね、より関与の強い候補については機能解析を追加する予定である。
結論
第2年度(R6)中には、2次アンケート調査を行うとともに、レジストリ構築を行って登録を進めるとともに、全国施設にも症例登録開始を案内し、追加集計できるシステムを構築する予定である。症例経験医師を含めた診療ガイドライン作成班を立ち上げて作成をめざしているが、イタリアおよびUSAの同疾患研究グループと意見交換が進んでおり、国際共同ガイドラインの作成を目標とした論文の作成を計画中である。
また、レジストリを構築すると同時に、発作期に血管漏出阻止可能薬と期待されるFX06を治験投与できるように、発作を繰り返す症例を主に選択して医師主導治験の被験者に登録するとともに、担当医師に治験協力を依頼できる様に準備する予定である。
また、レジストリを構築すると同時に、発作期に血管漏出阻止可能薬と期待されるFX06を治験投与できるように、発作を繰り返す症例を主に選択して医師主導治験の被験者に登録するとともに、担当医師に治験協力を依頼できる様に準備する予定である。
公開日・更新日
公開日
2025-07-02
更新日
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