文献情報
文献番号
202310034A
報告書区分
総括
研究課題名
早産児ビリルビン脳症のリスク因子に着目した診療指針の改訂と包括的診療体制の確立
研究課題名(英字)
-
課題番号
23FC1005
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
奥村 彰久(愛知医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 森岡 一朗(日本大学 医学部)
- 荒井 洋(大道会ボバース記念病院 診療部小児神経科)
- 丸尾 良浩(国立大学法人滋賀医科大学 医学部)
- 佐藤 義朗(名古屋大学医学部附属病院 総合周産期母子医療センター)
- 日下 隆(香川大学 医学部)
- 國方 徹也(埼玉医科大学 医学部)
- 岩谷 壮太(兵庫県立こども病院 新生児内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
4,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の最終的な目標は、早産児ビリルビン脳症の実態・成人期にわたる長期予後・新生児黄疸管理の実態を明らかにして現行の診療指針を改訂する基盤を作成するとともに、小児・成人を一体的に研究・診療できる体制を構築することである。
研究方法
1)2回の全国調査で収集した早産児ビリルビン脳症の症例データを後方視的に解析し、性差について検討した。症例対象研究としてマッチドペア解析を施行し、統計学的解析によってリスク因子の探索を行った。
2)在胎30週未満のない早産児を対象に、遷延性黄疸の有無で2群に分けUGT1A1 遺伝子バリアントを含む種々の臨床因子との関連を解析した。また、在胎30週未満の早産児のうち森岡の黄疸治療基準で管理した児を対象とし、発達・自動聴性脳幹反応・頭部MRIを調査した。
3)令和4年から令和5年までの間に開催した4回の患者会において、支援に期待することおよび自らが抱える課題とニードについて、テキストマイニングによって解析した。
4)高ビリルビン血症および遷延性黄疸の症例に対し、UGT1A1遺伝子の解析を行った。新たに発見されたバリアントにおいては、培養細胞を用いた発現実験系で酵素活性への影響を検討した。
5)全国のNICUに経皮黄疸計の使用に関するアンケート調査を施行した。調査内容は早産児に対する経皮黄疸計の使用の有無と、使用している機器や測定穂応報などである。
6)血清に青色LED光を照射し、照射前後での直接ビリルビン値、ビリルビン光立体異性体濃度の変化量から回帰分析を行った。
7)アンバウンドビリルビン値が1 μg/dL以上を示した症例を対象とした。光療法の適応基準については、総ビリルビン値は村田の基準、アンバウンドビリルビン値は中村の基準を使用した。
8)旧基準および森岡の治療基準を適用した在胎32週未満の早産児を対象とした。周産期因子、新生児合併症、光療法日数、総ビリルビン値およびアンバウンドビリルビン値の頂値、アンバウンドビリルビン 0.8 μg/dL以上の症例頻度を両群間で比較した
2)在胎30週未満のない早産児を対象に、遷延性黄疸の有無で2群に分けUGT1A1 遺伝子バリアントを含む種々の臨床因子との関連を解析した。また、在胎30週未満の早産児のうち森岡の黄疸治療基準で管理した児を対象とし、発達・自動聴性脳幹反応・頭部MRIを調査した。
3)令和4年から令和5年までの間に開催した4回の患者会において、支援に期待することおよび自らが抱える課題とニードについて、テキストマイニングによって解析した。
4)高ビリルビン血症および遷延性黄疸の症例に対し、UGT1A1遺伝子の解析を行った。新たに発見されたバリアントにおいては、培養細胞を用いた発現実験系で酵素活性への影響を検討した。
5)全国のNICUに経皮黄疸計の使用に関するアンケート調査を施行した。調査内容は早産児に対する経皮黄疸計の使用の有無と、使用している機器や測定穂応報などである。
6)血清に青色LED光を照射し、照射前後での直接ビリルビン値、ビリルビン光立体異性体濃度の変化量から回帰分析を行った。
7)アンバウンドビリルビン値が1 μg/dL以上を示した症例を対象とした。光療法の適応基準については、総ビリルビン値は村田の基準、アンバウンドビリルビン値は中村の基準を使用した。
8)旧基準および森岡の治療基準を適用した在胎32週未満の早産児を対象とした。周産期因子、新生児合併症、光療法日数、総ビリルビン値およびアンバウンドビリルビン値の頂値、アンバウンドビリルビン 0.8 μg/dL以上の症例頻度を両群間で比較した
結果と考察
1)早産児ビリルビン脳症の症例では男女比が2:1であり、男児のリスクが高いことを見出した。症例対照研究をでは、慢性肺疾患・菌血症・総ビリルビン値の高値が早産児ビリルビン脳症のリスク因子であることを明らかにした。
2)Highモードの光療法の必要性とUGT1A1*6 バリアントが、遷延性黄疸と関連することを明らかにした。森岡の黄疸治療基準ではビリルビン脳症を発症した児がいないことを確認した。
3)成人の早産児ビリルビン脳症患者のニードでは、「友人を作る」、「経験を語り合う機会を持つ」、「日常生活動作の方法を知る」ことのニードが高いことが判明し、医療的ニードよりもむしろ社会的ニードが高いことが示された。
4)高ビリルビン血症5例では多くの症例でUGT1A1*6が検出された。過去に発見されたバリアントがビリルビンだけでなく様々な薬物代謝にも影響を及ぼすことを明らかにした。
5)早産児に対し約半数の施設が経皮黄疸計を使用していることが判明した。超早産児では使用率が低く、測定方法や使用基準には施設間で相違が見られた。
6)ビリルビン光立体異性体濃度の10%程度がビリルビンオキシダーゼ法において直接ビリルビンとして測定されることが明らかとなった。
7)アンバウンドビリルビン値1 μg/dL以上を示した14例では、1例で交換輸血を施行された。多くの症例で強力な光療法で速やかにアンバウンドビリルビン値は低下していた。
8)光療法日数は森岡の治療基準群のほうが旧基準群に比べて有意に短かった。総ビリルビンおよびアンバウンドビリルビンの頂値、アンバウンドビリルビン値 0.8 μg/dL以上の症例頻度については有意差がなかった。
2)Highモードの光療法の必要性とUGT1A1*6 バリアントが、遷延性黄疸と関連することを明らかにした。森岡の黄疸治療基準ではビリルビン脳症を発症した児がいないことを確認した。
3)成人の早産児ビリルビン脳症患者のニードでは、「友人を作る」、「経験を語り合う機会を持つ」、「日常生活動作の方法を知る」ことのニードが高いことが判明し、医療的ニードよりもむしろ社会的ニードが高いことが示された。
4)高ビリルビン血症5例では多くの症例でUGT1A1*6が検出された。過去に発見されたバリアントがビリルビンだけでなく様々な薬物代謝にも影響を及ぼすことを明らかにした。
5)早産児に対し約半数の施設が経皮黄疸計を使用していることが判明した。超早産児では使用率が低く、測定方法や使用基準には施設間で相違が見られた。
6)ビリルビン光立体異性体濃度の10%程度がビリルビンオキシダーゼ法において直接ビリルビンとして測定されることが明らかとなった。
7)アンバウンドビリルビン値1 μg/dL以上を示した14例では、1例で交換輸血を施行された。多くの症例で強力な光療法で速やかにアンバウンドビリルビン値は低下していた。
8)光療法日数は森岡の治療基準群のほうが旧基準群に比べて有意に短かった。総ビリルビンおよびアンバウンドビリルビンの頂値、アンバウンドビリルビン値 0.8 μg/dL以上の症例頻度については有意差がなかった。
結論
1)早産児BEの危険因子として、男児・慢性肺疾患・菌血症・総ビリルビン値高値が同定された。この結果は早産児ビリルビン脳症の適切な予防法を解明する上で重要な基礎資料となる。
2)森岡の治療基準の有効性および安全性や実際の黄疸管理に与える影響の検証が進みつつある。森岡の治療基準の有効性や安全性を確立することで、早産児の適切な黄疸管理法を提案することが可能になることが期待される。
3)患者会を設立して当事者からの意見を聞くことで、当事者の目線で見た成人の早産児ビリルビン脳症のニーズなどを把握し、成人症例の適切なケアについて提案することが可能なることが期待される。
4)UGT1A1遺伝子バリアントが早産児ビリルビン脳症の発症に関与することを示す知見が集積しつつあり、UGT1A1遺伝子解析による早産児の黄疸管理の適正化を進める手掛かりとなる。
5)ビリルビン測定法の精緻化や経皮黄疸計の使用に関する基礎的なデータを得ることができた。
2)森岡の治療基準の有効性および安全性や実際の黄疸管理に与える影響の検証が進みつつある。森岡の治療基準の有効性や安全性を確立することで、早産児の適切な黄疸管理法を提案することが可能になることが期待される。
3)患者会を設立して当事者からの意見を聞くことで、当事者の目線で見た成人の早産児ビリルビン脳症のニーズなどを把握し、成人症例の適切なケアについて提案することが可能なることが期待される。
4)UGT1A1遺伝子バリアントが早産児ビリルビン脳症の発症に関与することを示す知見が集積しつつあり、UGT1A1遺伝子解析による早産児の黄疸管理の適正化を進める手掛かりとなる。
5)ビリルビン測定法の精緻化や経皮黄疸計の使用に関する基礎的なデータを得ることができた。
公開日・更新日
公開日
2025-05-26
更新日
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